92 / 103
第4章 入団までの1年間(3)、グラナダ迷宮と蓋をした私の思い
91:勇者の過去(11)不法侵入
しおりを挟む
オレ、仲河光輝が、隣国の天才児・<フレデリック・フランシス>暗殺を命じられ、考えうる限りの準備を整えてから、ちょうど一ヶ月後。
ルナリア帝国の影である<チェスター>とともに、オレは再びレイ皇国の王都に足を踏み入れていた。
ずっと転移で一瞬で移動していたから分からなかったが、ルナリア帝国の帝都からレイ皇国の王都まで行くのには、それほどの距離があった。
馬車ではなく、二頭の馬を走らせてこれだから、日本で言うと東京から鹿児島程度は距離があるのかもしれない。いや、異世界の馬の脚力を考えると、その倍はありそうだ・・・・・・。
ちなみに馬は<サムド>が馬術を習得していたし、オレ自身も幼少期に乗馬の習い事をしていたので問題なく乗れる。
そんな風に、つらつらと思考を飛ばしていると、チェスターが王都の入場門を通るのが遠目で見えた。
(入ったか・・・)
チェスターはいま、固有魔法で<茶色い髪の平凡な男>の行商人に化けている。影としての任務で様々な身分証を持つ彼は、その中の一つを利用し、問題なくレイ皇国の王都に入っていった。
・・・・・・が、問題はオレだった。
オレ自身、冒険者としての身分証を持っているがそれは秘密にしているし、何よりチェスターはこの任務のためだけに冒険者登録をさせたり、身分証をつくるのを渋ったからだ。
・・・というより、一般人とオレを接触させること自体に消極的なようだった。
ルナリア帝国は勇者を召喚していることを公表していないのだから、言動から万が一にも異世界人だとバレることを避けたかったのかもしれない。
もちろん身分証がなくても一時滞在ならば仮の入門許可証が発行されるから入門自体は可能だが、よほどの田舎者か身分証を紛失した者以外は発行する者がいないため、目立つのだ。
そして、オレには・・・・便利な転移魔法がある。
レイ皇国の知人に会ったときのことを考えると、何かしらの対処が必要だったから、オレ自身もチェスターの命令は都合がよかった。
チェスターが入門してから30分ほど経つのを確認し、地図で指定された場所へと転移する。
「テレポート」
目の前の光景がぐにゃりと歪み、次の瞬間には大きな屋敷が目に入る。
不法侵入した王都の貴族街。
その中でももしかしたら一番大きいのではないだろうか、その目立つ屋敷の近くの裏路地に転移したオレは、気配遮断をしながらわずかに人の気配のある方へと近づく。
「見ろ」
前方から声がかかる。同じく気配遮断をして、この裏路地に潜んでいた<茶色い髪の平凡な男>に化けたままのチェスターだ。
チェスターが、目線だけで示す方向に目線を向けると、屋敷の正門から馬が三頭出ていくところだった。
遠目でよく見えないが、馬上の人物のうち二名はキレイな金色の髪をしているのが分かる。
「?」
「フレデリック・フランシスとその従者だ」
ルナリア帝国の影である<チェスター>とともに、オレは再びレイ皇国の王都に足を踏み入れていた。
ずっと転移で一瞬で移動していたから分からなかったが、ルナリア帝国の帝都からレイ皇国の王都まで行くのには、それほどの距離があった。
馬車ではなく、二頭の馬を走らせてこれだから、日本で言うと東京から鹿児島程度は距離があるのかもしれない。いや、異世界の馬の脚力を考えると、その倍はありそうだ・・・・・・。
ちなみに馬は<サムド>が馬術を習得していたし、オレ自身も幼少期に乗馬の習い事をしていたので問題なく乗れる。
そんな風に、つらつらと思考を飛ばしていると、チェスターが王都の入場門を通るのが遠目で見えた。
(入ったか・・・)
チェスターはいま、固有魔法で<茶色い髪の平凡な男>の行商人に化けている。影としての任務で様々な身分証を持つ彼は、その中の一つを利用し、問題なくレイ皇国の王都に入っていった。
・・・・・・が、問題はオレだった。
オレ自身、冒険者としての身分証を持っているがそれは秘密にしているし、何よりチェスターはこの任務のためだけに冒険者登録をさせたり、身分証をつくるのを渋ったからだ。
・・・というより、一般人とオレを接触させること自体に消極的なようだった。
ルナリア帝国は勇者を召喚していることを公表していないのだから、言動から万が一にも異世界人だとバレることを避けたかったのかもしれない。
もちろん身分証がなくても一時滞在ならば仮の入門許可証が発行されるから入門自体は可能だが、よほどの田舎者か身分証を紛失した者以外は発行する者がいないため、目立つのだ。
そして、オレには・・・・便利な転移魔法がある。
レイ皇国の知人に会ったときのことを考えると、何かしらの対処が必要だったから、オレ自身もチェスターの命令は都合がよかった。
チェスターが入門してから30分ほど経つのを確認し、地図で指定された場所へと転移する。
「テレポート」
目の前の光景がぐにゃりと歪み、次の瞬間には大きな屋敷が目に入る。
不法侵入した王都の貴族街。
その中でももしかしたら一番大きいのではないだろうか、その目立つ屋敷の近くの裏路地に転移したオレは、気配遮断をしながらわずかに人の気配のある方へと近づく。
「見ろ」
前方から声がかかる。同じく気配遮断をして、この裏路地に潜んでいた<茶色い髪の平凡な男>に化けたままのチェスターだ。
チェスターが、目線だけで示す方向に目線を向けると、屋敷の正門から馬が三頭出ていくところだった。
遠目でよく見えないが、馬上の人物のうち二名はキレイな金色の髪をしているのが分かる。
「?」
「フレデリック・フランシスとその従者だ」
16
あなたにおすすめの小説
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
そう名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる