王子は私のモノなんです!

春瀬湖子

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2.歪んだ王子とカテリーナ

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力を隠し、ハズレとして迎えた婚姻日。
当たり前のように遅れてくる彼女を見て胸が高鳴った。

ーーあぁ、俺の全て。
貴女はそうでなくてはならない。


跪いて彼女の手にキスをすると、彼女の顔に愉悦が見えた。
その表情に堪らなく欲情した。

「初夜ですわ、私ハジメテで怖いんですの。ですので旦那様には全て許可を取っていただきたいんですわ」
「許可、ですか?」

それは願ってもない申し出で。
これから彼女の望む事だけが出来る、これから先の人生全てを彼女の願いに捧げられる。

思わず笑みが溢れ、すぐにキスの許可を求めた。
体に触れる許可を貰い、彼女の体に“俺”を刻む。
心も体も、一生俺を手放そうなんて思わないくらいの快楽を刻んで。


俺から与えられる快感に肌を染めたカテリーナは大輪の薔薇が咲いたように見えたからそう伝えた。

しかし彼女は、“俺の色”だと答えをくれた。

俺の唯一は、俺も唯一にしてくれるのだと理解した。

「カテリーナ、全部受け止めてくれますか」
「全部、私の、ですから···っ」

そう答えてくれる彼女に熱を放つ。
彼女のナカに全て行き渡るように、放った後も腰を揺すり快感を植え付ける。
これからもずっと彼女が俺を望み続けるように、深く深く植え付けた。


出会ってからずっとわがままを叶え、堕落させ、そして婚姻が成立した今は快楽にも堕とし、自分の色に名実共に染め上げて。

隣で眠る彼女の髪を一房掬い口付けを落とす。

「次は···そうだな、何を捧げようかな」


自分がハズレでいるのは構わなかったが、そのせいで彼女まで馬鹿にされるのは不愉快だった。
それでも今まで見逃してきたのはハズレでなければ彼女のモノになれなかったから。

「まずは地位からあげようか」

くく、と笑う自分の顔が酷く歪んでいる事に気付いたが構わない。
カテリーナにだけ見られなければいいんだから。


自分の地位を上げるのは簡単だった。
空気のようにそこに存在していただけのセルジオを気にする者なんておらず、敵視されないのならばその視線をかわすことも容易だったからだ。
情報以上に強い武器はない。
情報を流し、噂を操った。
噂は正しくなくてもいい、生まれた亀裂が侵食するのをただ待つだけでー···

「呆気ないな」

それは相手のいないチェスをするように容易くて。
面白いくらい簡単に潰しあった第一王子と第四王子はセルジオの上から消えた。

面白いくらい簡単な展開に笑いすら起きないのは、セルジオの心にいるのがカテリーナだけだからで。
そしてそんな心臓とも言えるカテリーナが部屋に飛び込んできた。


「どっ、どういうことですかセルジオ!」
「どうしましたか、カテリーナ?」

自然と頬が弛む事を不思議に感じる。
彼女の前ではこんなに簡単に笑えるのだと実感した。

「どうしましたかではありませんわ!貴方の継承順位が上がり現在第二位です、貴方の派閥まで出来たとの事ではありませんかっ」
「あれ、そうでしたか?」

なんて白々しく答えると、小さく悲鳴を上げるカテリーナが可愛くて。

“あぁ、カテリーナのナカに入りたいな”
なんてぼんやり考えながら慌てる彼女を眺めていると、侍従がドアの外から声をかけてきた。


何も返事をしない俺に怪訝な顔を向けたカテリーナが、仕方なく侍従に入るように指示を出す。
部屋の主である俺からの許可ではないことに戸惑ってはいたが入室してきた侍従が手紙を渡しそのまま出ていった。

「何の手紙なんですの?」
「母からの手紙ですね」

継承順位が上がった事で母からよく手紙が届くようになった。
それはわかりやすく媚びる内容で、王太子に手が届くようになった事で欲を出したのだろう。


「カテリーナ、第三王子である弟のユリウスはどう思われますか?」
「ユリウス様ですか?そうですね、評判も良く民衆からの支持も厚いですね。本人も軍人気質と申しますか···騎士団に所属しているだけあって自身を律する事も出来るかと」

その評価はセルジオの情報とも一致しており、やはり彼女が聡明だと言うことを証明したように感じた。

「そうですね、彼ならば良い王になるでしょう」

それは本心だ。
こんな歪んだ自分より絶対にいい王になる。

「そしてカテリーナならば、きっと素晴らしい王妃になれますね」

チラリと母からの手紙を視界に入れる。
単に王という存在だけならば弟の方がいい王になるだろう。
しかし、カテリーナという王妃がいるならば。

彼女は家の為に道具になることを理解し、道具であってもその輝きを失うことなく存在し続けた。
そして冷静に周りを見て評価することも出来る。
トータルで見れば、俺が王になってカテリーナが王妃として君臨すれば国はもっと良くなるのではないだろうか。


母が権力に目が眩んでいる今、第三王子に毒でも盛れば。
そして、母であろうと民からも信頼厚かった弟を手にかけた事を許すわけにはいかないとそう涙ながらに息子の俺が断罪すれば、民衆からの支持も手に入るだろう。

そうすれば彼女に国も捧げられるな。


クスクスと笑いがこみ上げる。


「手をかける必要はありません、私は国を望んでおりませんわ」

そうキッパリ告げられドキッとした。

「私はわがままですが、欲張りではありませんの。手にするのは1つだけ、貴方だけで構いません」
「カ、テリーナ···?」

どうしてそれを、と思わず呟いたセルジオに、平然とカテリーナが答えをくれる。

「私なら素晴らしい王妃になれる、と仰られたからですわ」

だが、確かに言ったその言葉の前には、弟がいい王になるという話もしていたはずだ。
だったら会話的には王になる弟にカテリーナが似合うという話に繋がってもおかしくはないはずで、そしてあえてそう思うように会話を動かしたはずだったのに。
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