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4.騎士としての彼と私
しおりを挟む見回りには半数しか出ておらず、最近は強盗のようなものしか出ていなかった。
見回りに出た奴らはみんな装備をちゃんと整えていたのか?
既に戦闘に入ってるって、まさか奇襲でもくらったのでは、と気が急いた。
剣と剣がぶつかり合う音が聞こえ、思わずカロルを探してしまう。
ーーーその一瞬が全てだった。
熱い、と感じた。
何度も戦場で感じたその熱は、時には腕に、時には足に経験した。
そして今は腹に感じた。
後ろから刺されたとすぐに気付いた。
脇腹よりやや後ろ側から貫通した剣。剣先から垂れる血と腹部の傷を視界に入れたせいか腹ばかりが熱かった。
「アーシャ!」
遠くで名を呼ばれた、その声がカロルと気付きホッとしたと同時に気を引き締める。
何故なら私達は、騎士なのだ。
騎士の命は陛下に、民に、そして国に捧げるものだから。
「ーーはぁっ!」
剣先を即座に自身の後ろに突き立てる。
まずは1人···!
刺されたせいで足に力が入らない。
馬力が足りないなら、とそのまま体を回転させるようにして勢いをつけそのまま近くにいた二人の敵兵を切り伏せる。
切り伏せた奥にカロルがいた。
目があったのは一瞬で、すぐにカロルは目線を外し別の敵に斬りかかった。
出血で足がふらつくことを悟られてはいけない。
なんとか踏み込んだ右足を止めずにすぐに周りを確認する。
勢いをつけなくては次の左足が出ないかもしれないからだ。
1人、また1人と斬り倒す。
もちろんお互い万全の状態だったならここまでの戦力差は出なかっただろうが、人数も、装備も、そして体力だって毎日駐屯基地で休める我々第8騎士団の方が優れていた。
結果は圧勝だった。
立ち、動いている残党兵がいないことを確認しその場に倒れこんだアーシャの元へカロルが駆け付けた。
「うっそ、泣いてんの?」
「喋るな、でも意識はしっかりさせろ!」
泣いてるカロルとかはじめて見た。
そう思うとつい思わず小さく笑ってしまう。
ありがとう、あの時駆け付けないでいてくれて。
もしアーシャが怪我をした時にカロルが駆け付け庇っていたら。
その隙をつかれカロルも致命傷をおった可能性もあるし、もし無事であっても今こんなに穏やかな気持ちにはならなかっただろう。
私の力を信じてくれたからこそ、騎士として認めてくれているからこそ任務を遂行することを優先する。
それはカロルが騎士としてアーシャを信じてくれたからこその行動だ。
ーー私は騎士としてここにいる。
騎士として立ち、最後まで騎士としてここにいられるのは、ちゃんと最後まで騎士として対峙出来たからだ。
「カロル、私はお前が誇らしい」
「喋るなって言ってるだろ!すぐに医師のもとに連れてってやるから···!」
「カロルは最高の友達で、信頼できる仲間で、立派な騎士だよ」
命は国に捧げた。でもこの気持ちは私のものなんだ。
叶うなら恋人のように、ではなく、本当の恋人としてそばにいられたらよかったのかもしれないけど···それでも、きっと私は幸せだった。
「············はぁっ!」
「あ、おいいきなり動くなよ!」
目を開くと慌てたカロルの顔が目の前にあった。
「え、え?なに?」
「おい、大丈夫か?とりあえず白湯でも飲め」
白湯というにはあまりにもぬるく、どちらかといえば汲んだ水がぬるくなったという温度に近かったものの、喉が渇いていたのは本当なので渡されるがまま飲んだ。
「えーっと、で、これは何?」
一瞬何もかも夢だったのかと思ったが、腹が物凄く痛んだので現実だったと理解する。
運良く生き残ったらしいことに感謝した。が。
「なんでここにカロルがいるの?」
思わずオブラートなんて忘れて本音を口にする。
「はぁ?心配して来た相手にその言い種はねぇよ!」
そんな私達の言い合いに気付いたのか、すぐ部屋にローザと医師が駆け付けてくれた。
「アーシャ!目が覚めたの?あなた4日も寝てたのよ!」
そう言われ驚く。
傷自体は酷いものの奇跡的に内臓が無事だったおかげで一命は取り留めたらしかった。
簡単に診察を終え、そのまま安静を言いつけられる。
安静よ!とローザが念を押してきた事に苦笑し、この怪我で訓練とかは行かないわよと答えたのだが。
「そこのカロルに言ってるの!この4日間ずっとアーシャから離れないんだから」
と、とんでもない爆弾を落とし医師と共に部屋を出ていった。
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