5 / 6
5.言葉の意味は擦り合わせるべき
しおりを挟む「えーっと、もう気がついたし、カロルも自室に戻っていいわよ?」
とは言ってみたが、カロルはベッド脇にある椅子から立つ様子はなく···
これはもしかして側にいたいということ、よね?と考え少し照れる。
自身の気持ちを自覚したからこそ、こうしてここにいてくれることがくすぐったくて···
言うならここだと思った。
「あの、ありがとね、カロル。その、実は私···カロルのこと、好き···みたいなの」
少し気恥ずかしく思いながらカロルの返事を待ち、しかし動かないカロルの顔を覗き込み驚愕した。
「は?寝てんの?嘘よね、このタイミングで?!」
座ったまま寝ているカロルに気付き思わず掴みかかった。
く、安静に、というローザの言いつけは守れそうにない。
肩をガクガク揺すりカロルを起こす。
「ちょっと!このタイミングでそれはないでしょ?!」
無理やり起こされたカロルは気を悪くした様子はなく、やべ、寝てたかと座ったまま伸びをした。
「あんた、いつから寝てたのよ」
「え?いつだろ、目が覚めたのってローザが飛び込んで来たのは覚えてる」
めっちゃ序盤じゃないか!
思わず頭を抱え、そうだ、カロルはデリカシーを含めたそういう繊細な全てを持っていないんだったとため息を吐く。
そんな私の様子など気にする事なく、カロルがおもむろにベッドに入ってきて。
「ち、ちょっと?!」
「もうちょいつめて。俺この4日ほぼ寝てなくてすごい眠い」
左腕を私の首の下に入れ抱き締めるようにし横になる。
「···あったかい」
「そ、そう?それは良かったわね···」
ぎゅうぎゅうと抱き締めながら引っ付くカロルにどうすればいいかわからずされるがまま抱き枕になっていると、「····このまま目を覚まさなかったらどうしようかと思った」と小さく呟く声が聞こえた。
「それは、もう発散する相手がいなくなるのが嫌だから?」
なんて聞いてしまったのは、呟きが嬉しくて、でも必死に伝えた告白をわざとではないもののスルーされたからこその小さな意地悪のつもりだったのだが。
「アーシャが大事だからに決まってるだろ」
と、当たり前のことを伝えるように言われ、アーシャの顔が一瞬で赤く染まった。
「最初なんて金貨渡してきたくせに···」
断ったその後も頑なに奢るカロルに、その都度割りきった関係だと線引かれたように感じていた。
そんなアーシャの気持ちを知ってか知らずか、いや確実に知らない、気付けないだろうカロルは抱き締めた腕を緩める事なく平然と言い切った。
「だってここは買い物とか出来るような場所ないし、せめて王都に戻ったときにいっぱい買い物出来るような金額でアーシャの横にいる時間買わなくちゃって思ったんだよ」
「····は?」
体ではなく、横にいる時間を買う?
「デートってのは男が金を払うものだからな」
あはは、と大きく口を開けて笑いながら平然と続けられた言葉に思わずあんぐりとアーシャも口を開いてしまう。
「え、まさか頑なにご飯代奢ってくれたのって···」
「?デートのつもりだったからだけど」
デートのつもりだったから奢ってたの···?!
奢るが合図でそういう行為がある訳じゃなく、デートの先にその行為があった···?
「で、でも!私のこと最高の友達だって言ったじゃない!」
「おぉ、アーシャは大事な友達だし、仲間だな!」
「友達同士でデートって···まぁしなくも、ない、か···?」
「俺はしないけどな」
混乱する頭を無理やり納得させたのにすぐにまたカロルの一言でもっと混乱する。
もうなんだか訳がわからなくて。
「もぉっ!つまりどーいうことなのよ?!」
「ええ、何に怒ってんだ?」
「だから!私のこと友達って言うくせにデートはして、でもデートは友達とはしないなら私はカロルの何なのよっ」
「何って····俺の好きな人?」
そうあまりにも平然と言われまたさっきよりも更に大きく口を開けてぽかんとする。
「友達って言ったくせに···」
「俺は、俺じゃダメかとも聞いたぞ?その返事貰ってないんだからまだ友達だろ」
確かに俺じゃダメかと聞かれた。
聞かれたけどあれは欲求不満を解消する相手としてダメか、という意味だと思っていたのに。
はぁぁっと大きくため息を吐く。
そして抱き締められている腕の中でくるりとカロルの方に向き、力一杯カロルを抱き締めた。
「アーシャ?」
「私も好きよ、バカ」
きっと耳まで真っ赤になったであろうアーシャの言葉はしっかりカロルに伝わったようで。
そうか、と一言だけ耳に届き、その日は二人してそのまま夢の中へ旅立った。
24
あなたにおすすめの小説
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―
喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。
そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。
二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。
最初は手紙も返ってきていたのに、
いつからか音信不通に。
あんなにうっとうしいほど構ってきた男が――
なぜ突然、私を無視するの?
不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、
突然ルイスが帰還した。
ボロボロの身体。
そして隣には――見知らぬ女。
勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、
私の中で何かが壊れた。
混乱、絶望、そして……再起。
すがりつく女は、みっともないだけ。
私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。
「私を簡単に捨てられるとでも?
――君が望んでも、離さない」
呪いを自ら解き放ち、
彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。
すれ違い、誤解、呪い、執着、
そして狂おしいほどの愛――
二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。
過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜
涙乃(るの)
恋愛
これは王命です……抱いてください
「アベル様……これは王命です。触れるのも嫌かもしれませんが、最後の願いなのです……私を、抱いてください」
呪いの力を宿した瞳を持って生まれたサラは、王家管轄の施設で閉じ込められるように暮らしていた。
その瞳を見たものは、命を落とす。サラの乳母も母も、命を落としていた。
希望のもてない人生を送っていたサラに、唯一普通に接してくれる騎士アベル。
アベルに恋したサラは、死ぬ前の最期の願いとして、アベルと一夜を共にしたいと陛下に願いでる。
自分勝手な願いに罪悪感を抱くサラ。
そんなサラのことを複雑な心境で見つめるアベル。
アベルはサラの願いを聞き届けるが、サラには死刑宣告が……
切ない→ハッピーエンドです
※大人版はムーンライトノベルズ様にも投稿しています
後日談追加しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる