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だったら私が貰います!婚約破棄からはじめた溺愛婚(その後)
最終話:そして各々の
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「ん⋯」
あれから一眠りした私がふと目を覚ますと。
「シエラ⋯?」
「あら、ごめんなさい。起こしちゃったわね」
「んん、構わないよ。それよりどうかした?」
もぞもぞと動いたからか、バルフまで目を覚ましてしまったらしく。
「⋯私の専属侍女がまたいなくなっちゃったなぁって思って」
そんなバルフの腕の中で、グリグリと頭を擦るようにしながらそう呟くと、私の髪を掬うように撫でてくれる。
“まだ寝惚けてる、目が全然開いてないわ”
そんな姿すらも愛おしいと感じるなんて、と思うとなんだか自然と口元が緩みそうになって――
「だったら、ベラを呼んだらどうかな?確か来たがっていたよね」
「それはそう⋯なんだけど」
“でもベラはまだ子供が生まれたばかりだし、ベラの夫は王都の邸宅の門番で⋯”
幼い子と父親を引き離してしまう事を考え、どうしても頷く事が出来なかったのだが。
「キーファノのルビーは、きっとこれから爆発的に売れるよ」
「? そうね⋯?」
“隣国の王太子レイモンド殿下の婚約式での大々的なお披露目をしたんだもの、むしろこれで売れない方がおかしいわ”
更に平民でも手軽に宝石を手に出来るラインナップも揃え、国内外で既に問い合わせだってかなり来ているのだ。
間違いなくこの事業は成功する、とあまり詳しくない私ですら思えるほどで。
「⋯だから丁度、警備を強化したいなと思ってたんだよね。もちろんビスター公爵家の騎士団を疑ってる訳じゃないけど⋯例えば、王都で実際に業務を担っている経験豊富な門番とか⋯さ」
「!!!」
どう思う?なんて私に質問をしながらうっすらと目を開けたバルフ。
そんな彼の穏やかなオリーブ色の瞳と目が合った私は――
「さいっこうよ!!!」
「ぅぐっ」
ドシンと彼の胸元に突撃する勢いで抱き付いた。
“それならベラもベラの赤ちゃんも父親と離れ離れにならないわ!”
「まだ子供が小さいから、⋯そうだな、クラリスとカトリーヌに補佐を頼むのもいいかもね。この2人は特にシエラと近い侍女だし、3人で回せばフォローもしやすいんじゃないかな」
「えぇ!えぇ!!」
「ま、こっちに来たくないって言われちゃったら終わりなんだけどね」
「ふふっ、それもそうね、早速打診の手紙を書かなくちゃ!」
「起きたらね?まだ夜明け前だし」
ふわぁ、とやはりまだ眠そうに再び目を閉じたバルフを見て私はくすりと笑みが溢れる。
「ベラが来てくれるなら安心だわ、私にもいつ宿ったっておかしくないものね?」
「――ッ!」
少しだけからかうような、でももちろん本気の本音を呟くように伝えると、目を閉じたままのバルフの耳がじわりと赤く染まって――⋯
「⋯それ、煽ってる?」
「あ、煽って⋯は⋯、⋯⋯⋯どっちの答えがいい?」
「あー、もう、本当に敵わない」
はぁ、と思い切りため息を吐きながらそっと降ってきた口付けがとても甘く優しくて――
“私、本当に幸せだわ”
彼からの愛が私の心に染み込むように、私の気持ちが彼の中を満たすようにー⋯
いらないなら私が貰うわ、と逆プロポーズではじまった私たち。
築き上げた全てを捨てて、唯一を手に入れた私の友。
誰よりも助けを望み、しかし誰も頼れず無理やり一夜からはじめた娘。
各々の幸せの形はきっと別物で、けれどだからこそたったひとつの幸せを求めていて。
“どうかこの夜が、皆にとっても温かなものでありますように”
ー⋯そう祈りながら、私は彼からの口付けに溺れるように委ねるのだった。
あれから一眠りした私がふと目を覚ますと。
「シエラ⋯?」
「あら、ごめんなさい。起こしちゃったわね」
「んん、構わないよ。それよりどうかした?」
もぞもぞと動いたからか、バルフまで目を覚ましてしまったらしく。
「⋯私の専属侍女がまたいなくなっちゃったなぁって思って」
そんなバルフの腕の中で、グリグリと頭を擦るようにしながらそう呟くと、私の髪を掬うように撫でてくれる。
“まだ寝惚けてる、目が全然開いてないわ”
そんな姿すらも愛おしいと感じるなんて、と思うとなんだか自然と口元が緩みそうになって――
「だったら、ベラを呼んだらどうかな?確か来たがっていたよね」
「それはそう⋯なんだけど」
“でもベラはまだ子供が生まれたばかりだし、ベラの夫は王都の邸宅の門番で⋯”
幼い子と父親を引き離してしまう事を考え、どうしても頷く事が出来なかったのだが。
「キーファノのルビーは、きっとこれから爆発的に売れるよ」
「? そうね⋯?」
“隣国の王太子レイモンド殿下の婚約式での大々的なお披露目をしたんだもの、むしろこれで売れない方がおかしいわ”
更に平民でも手軽に宝石を手に出来るラインナップも揃え、国内外で既に問い合わせだってかなり来ているのだ。
間違いなくこの事業は成功する、とあまり詳しくない私ですら思えるほどで。
「⋯だから丁度、警備を強化したいなと思ってたんだよね。もちろんビスター公爵家の騎士団を疑ってる訳じゃないけど⋯例えば、王都で実際に業務を担っている経験豊富な門番とか⋯さ」
「!!!」
どう思う?なんて私に質問をしながらうっすらと目を開けたバルフ。
そんな彼の穏やかなオリーブ色の瞳と目が合った私は――
「さいっこうよ!!!」
「ぅぐっ」
ドシンと彼の胸元に突撃する勢いで抱き付いた。
“それならベラもベラの赤ちゃんも父親と離れ離れにならないわ!”
「まだ子供が小さいから、⋯そうだな、クラリスとカトリーヌに補佐を頼むのもいいかもね。この2人は特にシエラと近い侍女だし、3人で回せばフォローもしやすいんじゃないかな」
「えぇ!えぇ!!」
「ま、こっちに来たくないって言われちゃったら終わりなんだけどね」
「ふふっ、それもそうね、早速打診の手紙を書かなくちゃ!」
「起きたらね?まだ夜明け前だし」
ふわぁ、とやはりまだ眠そうに再び目を閉じたバルフを見て私はくすりと笑みが溢れる。
「ベラが来てくれるなら安心だわ、私にもいつ宿ったっておかしくないものね?」
「――ッ!」
少しだけからかうような、でももちろん本気の本音を呟くように伝えると、目を閉じたままのバルフの耳がじわりと赤く染まって――⋯
「⋯それ、煽ってる?」
「あ、煽って⋯は⋯、⋯⋯⋯どっちの答えがいい?」
「あー、もう、本当に敵わない」
はぁ、と思い切りため息を吐きながらそっと降ってきた口付けがとても甘く優しくて――
“私、本当に幸せだわ”
彼からの愛が私の心に染み込むように、私の気持ちが彼の中を満たすようにー⋯
いらないなら私が貰うわ、と逆プロポーズではじまった私たち。
築き上げた全てを捨てて、唯一を手に入れた私の友。
誰よりも助けを望み、しかし誰も頼れず無理やり一夜からはじめた娘。
各々の幸せの形はきっと別物で、けれどだからこそたったひとつの幸せを求めていて。
“どうかこの夜が、皆にとっても温かなものでありますように”
ー⋯そう祈りながら、私は彼からの口付けに溺れるように委ねるのだった。
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