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第10話「ランナーズハイ」
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空は紫色に濁り、世界を毒々しく包み込む
生命の営みを無視した魔王の開拓は前にも
述べた様に地球の様相を激変させてしまった
現在 世界はたった10億人の魔族に支配されているのだ。
下等な生物ほど数は多く逆に上等な生物ほど数は少ない...力と個体数は反比例するらしい
私たちの世界では人間は70億人アリは2京匹 アリは人間の30000倍いる
だから魔族は人間...つまり最大で70億いた人間と比べると10億人の魔族は
人間の7倍優れていると考えられる
まあ、計算で推し量れるほど生物の力は単純ではないだろうが...魔族の力は人間では及ばない場所にたっている事は確かだった。
その大きな要因はやはり魔力の有無だろう
ならば、魔力を使える人間であるゼルクは
どうなのだろうか?魔族と人間の中間...
もしかしたらゼルクは思った以上に革命への鍵を握っているのかもしれない。
「富士山突入はどうするつもりだ?」
「正面突破でGO!だぜ」
現在2人は富士山近くの廃屋で作戦を立てている真っ最中だ。
なんせ2人とも富士山の地形を知らないので精巧な作戦を立てるには現地でやるしかなかった
相手の陣形はと言うと
富士山麓の樹海はスライムや吸血コウモリなど 魔物に任せ、それを突破した者には1~7合目まで配置された70人の魔族が襲い掛かり、それさえも突破した猛者には
8~10合目で待ち構えている中級兵士 そして
防衛隊のリーダーを勤める1人の上級兵士の
相手をすることになる。
「正面突破...ねぇ...多数相手に対して有効だとは思えないが...」
ゼルクは廃屋の崩れた壁から見える富士山を目を細め、眺めた。
魔族によって切り崩され数百メートル縮んだ山はいつ噴火するかわからない程膨張しているんだそうだ。
「逆だぜ、おっさん...現在十数年間あの富士山は攻撃されてねぇ...ってことで防衛隊の
やつらは暇を持て余している 『なんのために兵士やってんだろ』って思ってる奴もいる
つまり今はあいつらの気持ちが緩んでいる状況だ ならば下手にゆっくり進むより
サッと登った方が早いし効果的だとオレは思うね」
「なるほど、一理ある...」
「だろっ?」
山には100人の魔族、麓の樹海にいたっては魔物の数が測定不能な程うじゃついている
不特定多数 VS 2人
多勢に無勢だが、2人の顔に陰りは無い
ゼルクは自宅から持ってきた刃渡り40センチのククリナイフ (くの字に曲がっていて通常のナイフより殺傷能力に優れている) を手に取り気を引き締めた。
レイヴンはすっくと立ち上がり、背伸びして
ふぅ...とあくびとも深呼吸ともつかない息をつく
「んじゃまあ行きますかぁ~」
非常口へ大股で歩いてドアノブを握ろうとしたが壊れていたので蹴破る
ガシャン!と音を立ててドアが吹っ飛ぶと紫の雲に身を隠した富士山が見えた。
「レイヴン、この世に未練は残ってるか?」
登山道具を手にしたゼルクはレイヴンに妙な質問を投げかける
当然その質問にレイヴンは首をかしげた。
「なんだそりゃ?」
「死神に命を取られないための秘訣」
「ふ~ん?ま、山ほど残ってっけどな!」
「ふはは、それでいい」
あっけらかんとしたレイヴンの返しにゼルクは思わず吹き出した。
感情を失ったはずの男だったが、レイヴンに殺意を向けた瞬間から第二の人生が始まったかのように表情が戻った。
何ならエビルに受けた一撃のせいで死にかけ人生が一度終わったその後さらに感情が戻ったように感じる。
忌み嫌う存在のはずだが案外魔族との合流がゼルクの感情を取り戻すのに手っ取り早い気がしてきた
この苦難の道でこれから何人の魔族に出会うのだろうか?何度闘うのだろうか?
「俺もこの世に未練が残っている、世界半分くらいな!」
「あー!それオレの口癖だぜ、盗んなよ~」
神は人間を人間たらしめる為に短所を与えるその短所は試練だ、頭が悪いだとか背が低いなんて大したことない試練もあれば手足がない、病気など重い試練もある
試練に打ち勝ち、克服した時人間は成長する
そう、これからだ ゼルクの試練は感情を取り戻す事 それを克服することができたならば
どれほど成長するか計り知れないが...
「それじゃ、未練を残して正面突破で」
「異議なし!」
2人は魔物蠢く闇の樹海に向かって行く
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今日は魔物がうるせーなぁ」
富士山3合目にいる魔族の男が崖から樹海を見下ろしている
「いつものことだろぉ?」
そう言いながら仲間の魔族は懐からトランプを取り出す
「そんなことよりポーカーやろうぜ」
「そうだな」
なるほど、レイヴンの言う通り気が緩んでいる これなら対策をとられたり 樹海に偵察を
入れられたりなんかもないだろう。
「魔物があんまりうるさいから敵が来てんじゃねーの?」
「んなわけないって、そんなバカな人間は
絶滅してるだろ」
「だな」
「それに、たとえバカがいたとして そのバカが強かったとしてもオレ達にはリーダーがいるだろ?」
「ああ、1人でミサイル撃ち落とせるバケモンがオレ達にはついてるからな」
そう、いくら兵士をかわしても『永命剣』を手に入れるには防衛隊リーダーには必ず出会う、この山を兵器を使っても攻略できなかった理由はこのリーダーにあるようだ。
ミサイルを撃ち落したという話が本当なら
その魔力の出力は特級魔族クラスに間違いないだろう 下手すれば破壊範囲はレイヴンより上かもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
樹海サイド
ギャーギャー! グワァァァァァ!
ウオオオオン! ワギャアアアアア!
「ついてこれてるかい?おっさん」
「大丈夫だ!前見て走れ!」
2人は魔物の群れに追われ、走っていた
茂みを飛び越え道を切り裂きガンガン前に進んで行く
魔物を大量に引き連れて行く姿はまるで百鬼夜行だ。 襲われていることを除けば...
「予想以上に魔物が多い、このままじゃ足の速いやつに追いつかれる」
後方をチラッと確認する
木をなぎ倒しながら進んでくる大型魔物の中に木をバウンドするような動きで突進してくる小さな影がある
「あれは...スライムか...」
スライムは下級中の下級魔物だが動きが素早い
体の90パーセントが水分のため柔軟な動きを可能にし、物にぶつかるとスーパーボールのように大きく跳ねるのだ
スライムの青い影がぐんぐん迫って来て
ゼルクに狙いを定める
顔面にぶつかりそうになったその瞬間
ゼルクは飛び上がる
カモシカのような脚力でジャンプし、木に掴まり、ククリナイフを突き刺してぶら下がる
勢い余ったスライムは木に激突して後方に
バウンドして行った。
「スライム程度相手にしてちゃキリがないからな」
そこから木の枝の上に立ち、木上を走って行く
レイヴンはゼルクについて行かず地上コースのまま走って行くが2人とも打ち合わせどうり進行方向は一致している。
野を蹴り、枝を蹴り、2人はチーターよりも早く道なき道を走り抜ける
樹海の全長は8キロそこを2人はなんと18分で通過した なんとも恐ろしい数値だ。
「よし!樹海を抜けるぞ!」
ゼルクがレイヴンと合流しようと木から飛び降りた次の瞬間
「グワォォン!!」
黒い影が突然現れゼルクを横切った。
かまいたちのようなスピードの影が通り過ぎた後、ゼルクの胸部から血しぶきが舞う。
「ウゲっ!」
「お、おっさんッ!?」
物凄い衝撃が胸に伝わり骨が折れた音が生々しく鼓膜を振動させた
あまりにも突然の攻撃にゼルクはバランスを崩し、着地に失敗する。
「しっかりしろ、早く体勢を整えろ 今のやつがまた来るかもしれない」
さっきの影の姿は確認できないが傷は本物だ
自分の胸を触るとヌルリと妙な生暖かさと嫌な感触が手に残った
この感じからすると結構な出血量のようだ。
鋭利な刃物で切ったような傷痛みはもちろん大きい
しかし、どちらかと言えばダメージ目的ではなく一撃必殺の致命傷を狙った丁寧かつ精密な傷跡だ。
「あの身のこなし人間...魔族でもない動き...上位クラスの魔物か...」
血を滴らせながらゼルクは立ち上がった
いつの間にか後ろから追って来る魔物供の姿が消えていた。
今ゼルクを襲った魔物のナワバリに足を踏み入れたからだろうか?
2人はただならぬ空気を感じて背中合わせに立つ
「レイヴン 俺の背後を見張れ!」
「なら あんたはオレの後ろだ!」
昼なお暗い樹海の中は何も動くものがいなければ音が立つことはない
逆に少しでも動けばその音は静寂の中に響いてどこにいるのかがモロバレになってしまう
「レイヴン...何故俺はさっきの魔物に攻撃を食らったと思う?」
「素早かったから...か?」
2人は蚊がさえずるような小さな声で会話をこなす
小さな声でも2人の鋭い五感をもってすれば十分会話は可能だ。
「いや、違うスピードもすごいがそれだけでは攻撃は当たらない」
「じゃあなんだったんだ?もったいぶらず言えよ」
2人は風が葉を撫でる音や木の実が落下する音に敏感に反応しつつ背を任せ合う
「そいつには気配がなかった...攻撃しようとするその一瞬殺気が漏れてギリギリ致命傷は避けたが...」
「気配のない狩人か...」
狩りの基本であり奥義の気配消し
それをマスターした生物は走り回っても足音は立たず、呼吸音でさえ気を使っている。
「あっちから来るのを待つしかないな...」
ナイフを構えたままゼルクは隅々まで目を配る 木の影、草むらの中
しかし、それらしき姿は見つからない
それもそうだろう、敵は魔物といえど狩りの達人だ
一度隠れればあちらが動くまでこちらから
見つけるのは困難を極める。
緊迫状態の精神的疲労により頰から汗が垂れ皮膚を伝い地面に落ちる
「なぁ、レイヴ...」
「避けろ!おっさんッ!」
魔物を無視して先へ進むか訊ねようとするのとすごい力で服を引っ張られたのはほぼ同時のタイミングだった。
なんのことかわからず頭には疑問符が浮かびまくっている
だが、何故レイヴンがゼルクの服を引っ張ったのか分かった。
「ウオオオオォォォ!」
先ほどゼルクがいた場所に5メートルほどの巨体を持った黒い虎が飛び降り、地面に一撃を喰らわせていた。
2人が注意を払って探していたにもかかわらず攻撃されるまで見つけることができなかった事実が不気味さを煽る
「こ、こいつが!?」
「驚いているヒマはねぇ!オレに続け!」
再び姿を眩まそうと逃げる黒虎にレイヴンは走り近づいて行く
レイヴンは類い稀な感覚の鋭さを有しており
黒虎が気配を消して落ちて来るわずかな
風切り音を聞き分けて回避に至ったのだ。
そして回避の後には鋭い反撃が待っている
「オオオオオオオオオオ!!!」
獣のような咆哮と活火山のような闘志をたぎらせ 黒虎に飛びかかる 逃げようと背中を見せている今がチャンス
「オルルアァァァア!!!!」
レイヴンの拳が黒虎の横っ腹に突き刺さる
だが、黒虎は痛がる様子を見せず体をくねらせその鋭い爪でレイヴンに応戦 胸に大きく
傷を刻み込んだ。
「ぐっはぁっ!」
紙切れのように宙を舞い、大木に激突して頭から地面に落ちる。
「素手で挑む奴があるか!」
そう言いながら刃を突き立てるのはもちろんゼルク ナイフを大きく振り下ろすと黒虎の体に傷をつけそこから出血が見えた。
しかし、勢いに比べてダメージは黒虎の巨体にミミズが這ったような小さな傷を
つけただけで終わった
「クアァァ!」
威嚇する声を上げ黒虎は樹海の奥に逃げ隠れて行った。
「クソ!こっちはデケェ引っ掻き傷を食らったってのに あのどら猫はかすり傷一つかよ!」
レイヴンは地面を殴って悔しがる
それとは対照的にゼルクは冷静だ
「以前どこかの本で読んだことがある、虎はとても柔らかい体を持っていてギチギチの檻の中でも体の向きを変える事ができる 打撃も無力化してしまうほどだ その体まるで巨大なゴム塊、さらにはゴム質の皮膚の下は強靭な筋肉が敷き詰められていて 筋肉はパワーと防御の役割を果たしている だが、あの黒虎は想像以上だ、デカさもさることながら力や技術がしっかりしているし下手な魔族よりよっぽど厄介だぞ」
長々と講釈を垂れる間もどこかで黒虎が2人の息の根を止める最高のタイミングを見計らっているはずだ
気が緩めば即死亡 弱肉強食の世界の片鱗を今2人は味わっている。
「むむむ...樹海抜けまであと300メートルだってのに足止めかよ...」
「慌てるな、お前が離れたら黒虎からの攻撃を探知できなくなる」
現在2人が持っている中で黒虎に対抗できそうな道具は先日『魔力武装』によってエビルから受け継いだ『硫炎』くらいしかない
だが、ここで『硫炎』を使ってしまっては
間違いなく樹海は燃え盛る そんなことをしては100人の魔族の包囲網が作られてしまう
言ってしまえば数で圧倒するのが今の2人には一番効果的だ
つまり、対抗手段は無いに等しい
だが、ゼルクに諦めの雰囲気は無い
「気を悪くするな、攻略の糸口はもうすでにできている」
そう言ってククリナイフを再度構えた
「あの一撃...浅かったが、感覚を奪っておいた あいつの足は今完全麻痺ってわけじゃないが自由には動かせない状態にある」
ゼルクの感覚を奪う能力は攻撃によるダメージによりどれだけ奪えるかが決まるのだ。
さっきのは3cm程の小さな傷だったので足を痺れさせるだけ...となんとも地味な結果に終わっている
だが、ゼルクの言う通り十分だ
足が不自由ということは、もう木登りはできないはず これで戦闘に3次元的な広がりはなくなった。
「これなら逃げ切れる、走るぞレイヴン」
「おう」
だが、その程度で逃してもらえるほどあの
狩人は甘くない
「なんか、聞こえないか?」
レイヴンは木に登る途中で樹海の奥の方に
視線を向けた
それにはゼルクは返事をしないが振り返り
レイヴンと同じ方向を向く
見開いた目の中にとらえたのは なんと、赤く光る黒虎の姿であった。
「ウォォォォォォォォォォォ!!」
またもや突然現れた黒虎 2人との距離は20mなぜこんなにも接近するまで視認できなかったのか...だが、やはり黒虎は足を引きずっている、ゼルクの能力はちゃんと効いているのだ
虎の黒い毛皮の模様部分は赤く光り輝き
頭には角が確認できた
魔物でも魔力を使える個体がいるのは聞いた事はあったがこの2人がその個体を見るのは初めてのことだった。
「また来るか!クソ猫!」
怒った叫び声を森中に撒き散らしながら、その痺れた後ろ足を引きずりながらでも2人を追跡するのはやめない
本能的にこのどちらかを殺せば痺れは治ると勘付いているのだろう。
すると追って来る途中で虎は何もない空間を引っ掻いた、その丸太のような腕の一振りの迫力はすごかったが何か起こるわけではないその奇行に疑問を感じているとレイヴンが足をかけていた大木が突然輪切りになった。
「おおっ!?」
崩れる寸前その破片を蹴り宙に体を浮かせ、
隣の木に着地して難を逃れる。
「あいつ、能力を使いやがった!」
「足を止めるな!なるべく動き回るんだ!」
虎はなおも2人を追い回す、2人は木の上を猿のごとく飛び回って逃げるがどうしても黒虎の方が早い、だんだんと追い詰められていく
「クソッ!クソッ!クソッ!」
「落ち着け、焦ってちゃできるものもできなくなる!」
虎と2人の距離はついに5m以内に迫っているが ゼルクはまだ落ち着いている。
虎がまたもや空間を引っ掻いた
「よっと!」
それを見計らいゼルクはレイヴンの襟首を掴んで次の枝に飛び移る。
「どうやら奴の能力はカマイタチみたいな
モノを爪の先から飛ばす能力のようだな
しかも、透明 動きをよく見て軌道を読むしか回避法はない、単純かつ強力...羨ましい能力だ...」
「感心してる場合じゃねーよ!なんか弱点
とかないのか?」
「そうだな...」
ゼルクが虎を指差す
「あるとすればそれは眼球だ...身体に傷を
つけるにはかなりのパワーが必要だがあの目は柔らかく、更にはダメージがデカイはずだ」
「おぉっ!」
「だがな」
期待を寄せるレイヴンを遮りゼルクは追加
情報を入れる
「眼球を狙うとするなら、その前についているのが あの爪と牙だどちらかでもくらえば
身体は真っ二つになっちまって
死神と仲良くあの世ツアーってことになる」
「それでもやるさ」
即答だった
「策はあるのか?」
その質問にレイヴンはニヤリと笑う
「正面突破でGO!ってのはどうだ?」
「気に入った!」
ゼルクもつられて笑うと息を合わせて
荒ぶる黒虎に突撃して行く
「ガアアアアアアアアア!!!!」
「「うおおおおおおおおおおおおお!!」」
吠える双方
ゼルクはナイフを振り下ろし、レイヴンは
魔力を拳に集め、黒虎はその2人に牙を剥く真の捕食者は人間か?魔族か?獣か?
この樹海の中で今結果が出されようとしていた。
To Be Continued→
生命の営みを無視した魔王の開拓は前にも
述べた様に地球の様相を激変させてしまった
現在 世界はたった10億人の魔族に支配されているのだ。
下等な生物ほど数は多く逆に上等な生物ほど数は少ない...力と個体数は反比例するらしい
私たちの世界では人間は70億人アリは2京匹 アリは人間の30000倍いる
だから魔族は人間...つまり最大で70億いた人間と比べると10億人の魔族は
人間の7倍優れていると考えられる
まあ、計算で推し量れるほど生物の力は単純ではないだろうが...魔族の力は人間では及ばない場所にたっている事は確かだった。
その大きな要因はやはり魔力の有無だろう
ならば、魔力を使える人間であるゼルクは
どうなのだろうか?魔族と人間の中間...
もしかしたらゼルクは思った以上に革命への鍵を握っているのかもしれない。
「富士山突入はどうするつもりだ?」
「正面突破でGO!だぜ」
現在2人は富士山近くの廃屋で作戦を立てている真っ最中だ。
なんせ2人とも富士山の地形を知らないので精巧な作戦を立てるには現地でやるしかなかった
相手の陣形はと言うと
富士山麓の樹海はスライムや吸血コウモリなど 魔物に任せ、それを突破した者には1~7合目まで配置された70人の魔族が襲い掛かり、それさえも突破した猛者には
8~10合目で待ち構えている中級兵士 そして
防衛隊のリーダーを勤める1人の上級兵士の
相手をすることになる。
「正面突破...ねぇ...多数相手に対して有効だとは思えないが...」
ゼルクは廃屋の崩れた壁から見える富士山を目を細め、眺めた。
魔族によって切り崩され数百メートル縮んだ山はいつ噴火するかわからない程膨張しているんだそうだ。
「逆だぜ、おっさん...現在十数年間あの富士山は攻撃されてねぇ...ってことで防衛隊の
やつらは暇を持て余している 『なんのために兵士やってんだろ』って思ってる奴もいる
つまり今はあいつらの気持ちが緩んでいる状況だ ならば下手にゆっくり進むより
サッと登った方が早いし効果的だとオレは思うね」
「なるほど、一理ある...」
「だろっ?」
山には100人の魔族、麓の樹海にいたっては魔物の数が測定不能な程うじゃついている
不特定多数 VS 2人
多勢に無勢だが、2人の顔に陰りは無い
ゼルクは自宅から持ってきた刃渡り40センチのククリナイフ (くの字に曲がっていて通常のナイフより殺傷能力に優れている) を手に取り気を引き締めた。
レイヴンはすっくと立ち上がり、背伸びして
ふぅ...とあくびとも深呼吸ともつかない息をつく
「んじゃまあ行きますかぁ~」
非常口へ大股で歩いてドアノブを握ろうとしたが壊れていたので蹴破る
ガシャン!と音を立ててドアが吹っ飛ぶと紫の雲に身を隠した富士山が見えた。
「レイヴン、この世に未練は残ってるか?」
登山道具を手にしたゼルクはレイヴンに妙な質問を投げかける
当然その質問にレイヴンは首をかしげた。
「なんだそりゃ?」
「死神に命を取られないための秘訣」
「ふ~ん?ま、山ほど残ってっけどな!」
「ふはは、それでいい」
あっけらかんとしたレイヴンの返しにゼルクは思わず吹き出した。
感情を失ったはずの男だったが、レイヴンに殺意を向けた瞬間から第二の人生が始まったかのように表情が戻った。
何ならエビルに受けた一撃のせいで死にかけ人生が一度終わったその後さらに感情が戻ったように感じる。
忌み嫌う存在のはずだが案外魔族との合流がゼルクの感情を取り戻すのに手っ取り早い気がしてきた
この苦難の道でこれから何人の魔族に出会うのだろうか?何度闘うのだろうか?
「俺もこの世に未練が残っている、世界半分くらいな!」
「あー!それオレの口癖だぜ、盗んなよ~」
神は人間を人間たらしめる為に短所を与えるその短所は試練だ、頭が悪いだとか背が低いなんて大したことない試練もあれば手足がない、病気など重い試練もある
試練に打ち勝ち、克服した時人間は成長する
そう、これからだ ゼルクの試練は感情を取り戻す事 それを克服することができたならば
どれほど成長するか計り知れないが...
「それじゃ、未練を残して正面突破で」
「異議なし!」
2人は魔物蠢く闇の樹海に向かって行く
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「今日は魔物がうるせーなぁ」
富士山3合目にいる魔族の男が崖から樹海を見下ろしている
「いつものことだろぉ?」
そう言いながら仲間の魔族は懐からトランプを取り出す
「そんなことよりポーカーやろうぜ」
「そうだな」
なるほど、レイヴンの言う通り気が緩んでいる これなら対策をとられたり 樹海に偵察を
入れられたりなんかもないだろう。
「魔物があんまりうるさいから敵が来てんじゃねーの?」
「んなわけないって、そんなバカな人間は
絶滅してるだろ」
「だな」
「それに、たとえバカがいたとして そのバカが強かったとしてもオレ達にはリーダーがいるだろ?」
「ああ、1人でミサイル撃ち落とせるバケモンがオレ達にはついてるからな」
そう、いくら兵士をかわしても『永命剣』を手に入れるには防衛隊リーダーには必ず出会う、この山を兵器を使っても攻略できなかった理由はこのリーダーにあるようだ。
ミサイルを撃ち落したという話が本当なら
その魔力の出力は特級魔族クラスに間違いないだろう 下手すれば破壊範囲はレイヴンより上かもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
樹海サイド
ギャーギャー! グワァァァァァ!
ウオオオオン! ワギャアアアアア!
「ついてこれてるかい?おっさん」
「大丈夫だ!前見て走れ!」
2人は魔物の群れに追われ、走っていた
茂みを飛び越え道を切り裂きガンガン前に進んで行く
魔物を大量に引き連れて行く姿はまるで百鬼夜行だ。 襲われていることを除けば...
「予想以上に魔物が多い、このままじゃ足の速いやつに追いつかれる」
後方をチラッと確認する
木をなぎ倒しながら進んでくる大型魔物の中に木をバウンドするような動きで突進してくる小さな影がある
「あれは...スライムか...」
スライムは下級中の下級魔物だが動きが素早い
体の90パーセントが水分のため柔軟な動きを可能にし、物にぶつかるとスーパーボールのように大きく跳ねるのだ
スライムの青い影がぐんぐん迫って来て
ゼルクに狙いを定める
顔面にぶつかりそうになったその瞬間
ゼルクは飛び上がる
カモシカのような脚力でジャンプし、木に掴まり、ククリナイフを突き刺してぶら下がる
勢い余ったスライムは木に激突して後方に
バウンドして行った。
「スライム程度相手にしてちゃキリがないからな」
そこから木の枝の上に立ち、木上を走って行く
レイヴンはゼルクについて行かず地上コースのまま走って行くが2人とも打ち合わせどうり進行方向は一致している。
野を蹴り、枝を蹴り、2人はチーターよりも早く道なき道を走り抜ける
樹海の全長は8キロそこを2人はなんと18分で通過した なんとも恐ろしい数値だ。
「よし!樹海を抜けるぞ!」
ゼルクがレイヴンと合流しようと木から飛び降りた次の瞬間
「グワォォン!!」
黒い影が突然現れゼルクを横切った。
かまいたちのようなスピードの影が通り過ぎた後、ゼルクの胸部から血しぶきが舞う。
「ウゲっ!」
「お、おっさんッ!?」
物凄い衝撃が胸に伝わり骨が折れた音が生々しく鼓膜を振動させた
あまりにも突然の攻撃にゼルクはバランスを崩し、着地に失敗する。
「しっかりしろ、早く体勢を整えろ 今のやつがまた来るかもしれない」
さっきの影の姿は確認できないが傷は本物だ
自分の胸を触るとヌルリと妙な生暖かさと嫌な感触が手に残った
この感じからすると結構な出血量のようだ。
鋭利な刃物で切ったような傷痛みはもちろん大きい
しかし、どちらかと言えばダメージ目的ではなく一撃必殺の致命傷を狙った丁寧かつ精密な傷跡だ。
「あの身のこなし人間...魔族でもない動き...上位クラスの魔物か...」
血を滴らせながらゼルクは立ち上がった
いつの間にか後ろから追って来る魔物供の姿が消えていた。
今ゼルクを襲った魔物のナワバリに足を踏み入れたからだろうか?
2人はただならぬ空気を感じて背中合わせに立つ
「レイヴン 俺の背後を見張れ!」
「なら あんたはオレの後ろだ!」
昼なお暗い樹海の中は何も動くものがいなければ音が立つことはない
逆に少しでも動けばその音は静寂の中に響いてどこにいるのかがモロバレになってしまう
「レイヴン...何故俺はさっきの魔物に攻撃を食らったと思う?」
「素早かったから...か?」
2人は蚊がさえずるような小さな声で会話をこなす
小さな声でも2人の鋭い五感をもってすれば十分会話は可能だ。
「いや、違うスピードもすごいがそれだけでは攻撃は当たらない」
「じゃあなんだったんだ?もったいぶらず言えよ」
2人は風が葉を撫でる音や木の実が落下する音に敏感に反応しつつ背を任せ合う
「そいつには気配がなかった...攻撃しようとするその一瞬殺気が漏れてギリギリ致命傷は避けたが...」
「気配のない狩人か...」
狩りの基本であり奥義の気配消し
それをマスターした生物は走り回っても足音は立たず、呼吸音でさえ気を使っている。
「あっちから来るのを待つしかないな...」
ナイフを構えたままゼルクは隅々まで目を配る 木の影、草むらの中
しかし、それらしき姿は見つからない
それもそうだろう、敵は魔物といえど狩りの達人だ
一度隠れればあちらが動くまでこちらから
見つけるのは困難を極める。
緊迫状態の精神的疲労により頰から汗が垂れ皮膚を伝い地面に落ちる
「なぁ、レイヴ...」
「避けろ!おっさんッ!」
魔物を無視して先へ進むか訊ねようとするのとすごい力で服を引っ張られたのはほぼ同時のタイミングだった。
なんのことかわからず頭には疑問符が浮かびまくっている
だが、何故レイヴンがゼルクの服を引っ張ったのか分かった。
「ウオオオオォォォ!」
先ほどゼルクがいた場所に5メートルほどの巨体を持った黒い虎が飛び降り、地面に一撃を喰らわせていた。
2人が注意を払って探していたにもかかわらず攻撃されるまで見つけることができなかった事実が不気味さを煽る
「こ、こいつが!?」
「驚いているヒマはねぇ!オレに続け!」
再び姿を眩まそうと逃げる黒虎にレイヴンは走り近づいて行く
レイヴンは類い稀な感覚の鋭さを有しており
黒虎が気配を消して落ちて来るわずかな
風切り音を聞き分けて回避に至ったのだ。
そして回避の後には鋭い反撃が待っている
「オオオオオオオオオオ!!!」
獣のような咆哮と活火山のような闘志をたぎらせ 黒虎に飛びかかる 逃げようと背中を見せている今がチャンス
「オルルアァァァア!!!!」
レイヴンの拳が黒虎の横っ腹に突き刺さる
だが、黒虎は痛がる様子を見せず体をくねらせその鋭い爪でレイヴンに応戦 胸に大きく
傷を刻み込んだ。
「ぐっはぁっ!」
紙切れのように宙を舞い、大木に激突して頭から地面に落ちる。
「素手で挑む奴があるか!」
そう言いながら刃を突き立てるのはもちろんゼルク ナイフを大きく振り下ろすと黒虎の体に傷をつけそこから出血が見えた。
しかし、勢いに比べてダメージは黒虎の巨体にミミズが這ったような小さな傷を
つけただけで終わった
「クアァァ!」
威嚇する声を上げ黒虎は樹海の奥に逃げ隠れて行った。
「クソ!こっちはデケェ引っ掻き傷を食らったってのに あのどら猫はかすり傷一つかよ!」
レイヴンは地面を殴って悔しがる
それとは対照的にゼルクは冷静だ
「以前どこかの本で読んだことがある、虎はとても柔らかい体を持っていてギチギチの檻の中でも体の向きを変える事ができる 打撃も無力化してしまうほどだ その体まるで巨大なゴム塊、さらにはゴム質の皮膚の下は強靭な筋肉が敷き詰められていて 筋肉はパワーと防御の役割を果たしている だが、あの黒虎は想像以上だ、デカさもさることながら力や技術がしっかりしているし下手な魔族よりよっぽど厄介だぞ」
長々と講釈を垂れる間もどこかで黒虎が2人の息の根を止める最高のタイミングを見計らっているはずだ
気が緩めば即死亡 弱肉強食の世界の片鱗を今2人は味わっている。
「むむむ...樹海抜けまであと300メートルだってのに足止めかよ...」
「慌てるな、お前が離れたら黒虎からの攻撃を探知できなくなる」
現在2人が持っている中で黒虎に対抗できそうな道具は先日『魔力武装』によってエビルから受け継いだ『硫炎』くらいしかない
だが、ここで『硫炎』を使ってしまっては
間違いなく樹海は燃え盛る そんなことをしては100人の魔族の包囲網が作られてしまう
言ってしまえば数で圧倒するのが今の2人には一番効果的だ
つまり、対抗手段は無いに等しい
だが、ゼルクに諦めの雰囲気は無い
「気を悪くするな、攻略の糸口はもうすでにできている」
そう言ってククリナイフを再度構えた
「あの一撃...浅かったが、感覚を奪っておいた あいつの足は今完全麻痺ってわけじゃないが自由には動かせない状態にある」
ゼルクの感覚を奪う能力は攻撃によるダメージによりどれだけ奪えるかが決まるのだ。
さっきのは3cm程の小さな傷だったので足を痺れさせるだけ...となんとも地味な結果に終わっている
だが、ゼルクの言う通り十分だ
足が不自由ということは、もう木登りはできないはず これで戦闘に3次元的な広がりはなくなった。
「これなら逃げ切れる、走るぞレイヴン」
「おう」
だが、その程度で逃してもらえるほどあの
狩人は甘くない
「なんか、聞こえないか?」
レイヴンは木に登る途中で樹海の奥の方に
視線を向けた
それにはゼルクは返事をしないが振り返り
レイヴンと同じ方向を向く
見開いた目の中にとらえたのは なんと、赤く光る黒虎の姿であった。
「ウォォォォォォォォォォォ!!」
またもや突然現れた黒虎 2人との距離は20mなぜこんなにも接近するまで視認できなかったのか...だが、やはり黒虎は足を引きずっている、ゼルクの能力はちゃんと効いているのだ
虎の黒い毛皮の模様部分は赤く光り輝き
頭には角が確認できた
魔物でも魔力を使える個体がいるのは聞いた事はあったがこの2人がその個体を見るのは初めてのことだった。
「また来るか!クソ猫!」
怒った叫び声を森中に撒き散らしながら、その痺れた後ろ足を引きずりながらでも2人を追跡するのはやめない
本能的にこのどちらかを殺せば痺れは治ると勘付いているのだろう。
すると追って来る途中で虎は何もない空間を引っ掻いた、その丸太のような腕の一振りの迫力はすごかったが何か起こるわけではないその奇行に疑問を感じているとレイヴンが足をかけていた大木が突然輪切りになった。
「おおっ!?」
崩れる寸前その破片を蹴り宙に体を浮かせ、
隣の木に着地して難を逃れる。
「あいつ、能力を使いやがった!」
「足を止めるな!なるべく動き回るんだ!」
虎はなおも2人を追い回す、2人は木の上を猿のごとく飛び回って逃げるがどうしても黒虎の方が早い、だんだんと追い詰められていく
「クソッ!クソッ!クソッ!」
「落ち着け、焦ってちゃできるものもできなくなる!」
虎と2人の距離はついに5m以内に迫っているが ゼルクはまだ落ち着いている。
虎がまたもや空間を引っ掻いた
「よっと!」
それを見計らいゼルクはレイヴンの襟首を掴んで次の枝に飛び移る。
「どうやら奴の能力はカマイタチみたいな
モノを爪の先から飛ばす能力のようだな
しかも、透明 動きをよく見て軌道を読むしか回避法はない、単純かつ強力...羨ましい能力だ...」
「感心してる場合じゃねーよ!なんか弱点
とかないのか?」
「そうだな...」
ゼルクが虎を指差す
「あるとすればそれは眼球だ...身体に傷を
つけるにはかなりのパワーが必要だがあの目は柔らかく、更にはダメージがデカイはずだ」
「おぉっ!」
「だがな」
期待を寄せるレイヴンを遮りゼルクは追加
情報を入れる
「眼球を狙うとするなら、その前についているのが あの爪と牙だどちらかでもくらえば
身体は真っ二つになっちまって
死神と仲良くあの世ツアーってことになる」
「それでもやるさ」
即答だった
「策はあるのか?」
その質問にレイヴンはニヤリと笑う
「正面突破でGO!ってのはどうだ?」
「気に入った!」
ゼルクもつられて笑うと息を合わせて
荒ぶる黒虎に突撃して行く
「ガアアアアアアアアア!!!!」
「「うおおおおおおおおおおおおお!!」」
吠える双方
ゼルクはナイフを振り下ろし、レイヴンは
魔力を拳に集め、黒虎はその2人に牙を剥く真の捕食者は人間か?魔族か?獣か?
この樹海の中で今結果が出されようとしていた。
To Be Continued→
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