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家に戻った私は早速行動に移すことにした。
有能な部下であるロロを自室に呼び出し相談をする。
「いかがなさいましたか、お嬢様?」
ロロは銀色の髪を後ろでくくり、少し冷たい印象を受ける瞳をしている。
だが私に真摯に仕えてくれており、頼りになるいい男。
いつだって私の言うことを聞いてくれるし、いつだって私のために駆けつけてくれる。
歳は二十五歳で私より六つ上。
色んなことに精通している人で、勉学も彼に教示してもらった。
できないことを探す方が難しいほどによくできる男だ。
「実はミゲイル様が浮気をしているようなの」
「ほう……暗殺のご命令ですか?」
「そこまで大袈裟にするつもりはないわ」
笑顔で暗殺なんて言っちゃって……冗談に見えないのがまた怖い。
私のことになると、昔から度が過ぎることをしてしまうからな、ロロは。
「しかし浮気ですか……もちろん、とことんまで地獄に落とすのですよね?」
「地獄までとは考えていないけれど……」
「いいえ。地獄に落とすべきです。ルーティ様という素晴らしい女性がいながら、浮気とは……よし。奴の皮をはぐのは私におまかせください」
「ちょっと物騒過ぎるわよ。せめて五体満足で生きていけないぐらいで勘弁してあげてちょうだい」
それでもやり過ぎかも知れないが……だがしかし、私もロロと同じく怒りを覚えている。
ただで済ますつもりは毛頭ない。
「で、私を呼び出したのはどういったご用件で?」
「あなたにお願いが二つほどあるの」
「二つと言わず、貴方様のご命令ならいくらでも喜んでお引き受けさせていただきます」
「ありがとう。でも今回は二つだけで構わないわ」
ニッコリ笑うロロに、私は真剣に話す。
「まず一つ目……ミゲイル様の浮気相手を調査してほしいの。どこの誰かは知らないけれど、とにかくその女性のことを知りたいのよ」
「かしこまりました。迅速に探し当てましょう」
ロロはどこで身に着けたのか、諜報員としての技能と人脈を持っている。
彼に調査を頼んで欲しかった情報が手に入らなかったことはない。
これは誰も知らないことなのだけれど、国を左右させるほどの問題をも解決したこともある。
匿名で事件を解決したから、ロロのことを知らない人は多いけれど。
まぁそれぐらいロロは優秀というわけだ。
とにかく彼に任せておけば、浮気相手の調査など朝飯前であろう。
「で、もう一つの頼みというのはなんでしょう? その女を密かに暗殺すればよろしいので?」
「もう少しその危険な思考を押さえてくれたら言うことないのだけれど……暗殺とか、そこまでするつもりはないわ。その女性は私という存在を知っているのかどうか。まずはそこを知らなければ。彼女の対処はそれを確認してからにしましょう」
「確かに、浮気と知っていたら問題ですが、ミゲイルに騙されていたのならその女性も被害者ですからね」
「ええ。だからその女性のことは後で決めましょう」
私は短く息を吐き、そして本題に移る。
「貴方に頼みたいもう一つのこと……それは、私に戦い方を教えてほしいの」
「戦い方をですか?」
「ええ。腹が煮えたぎるほどにムカついているの。だから最後はミゲイル様をぶっ飛ばしたいじゃない」
「なんと勇ましい……ルーティ様のそういうところ、好きですよ」
「ありがとう、ロロ」
ロロは顎に手を当て、思案顔をし出した。
私にどういう技術を教えるべきか、少し悩んでいるようだ。
「殺す技術は必要無いのですか?」
「ええ。全く必要ないわ」
私を暗殺者にでも仕立てるつもりか。
私はミゲイル様をぶっ飛ばせたらそれでいいのだから。
「……では、難易度の低い技術を伝授いたしましょう。ですが、それなりの訓練は必要ですので、ある程度時間はかかりますが……」
「その点は問題ないわ。あの人にそれなりの負傷を負わせられるのなら、それなりに努力はするつもりよ」
ロロは目を細め、妙に嬉しそうな表情をする。
私も俄然やる気が出てきて、心を燃やしてロロを見つめ返していた。
有能な部下であるロロを自室に呼び出し相談をする。
「いかがなさいましたか、お嬢様?」
ロロは銀色の髪を後ろでくくり、少し冷たい印象を受ける瞳をしている。
だが私に真摯に仕えてくれており、頼りになるいい男。
いつだって私の言うことを聞いてくれるし、いつだって私のために駆けつけてくれる。
歳は二十五歳で私より六つ上。
色んなことに精通している人で、勉学も彼に教示してもらった。
できないことを探す方が難しいほどによくできる男だ。
「実はミゲイル様が浮気をしているようなの」
「ほう……暗殺のご命令ですか?」
「そこまで大袈裟にするつもりはないわ」
笑顔で暗殺なんて言っちゃって……冗談に見えないのがまた怖い。
私のことになると、昔から度が過ぎることをしてしまうからな、ロロは。
「しかし浮気ですか……もちろん、とことんまで地獄に落とすのですよね?」
「地獄までとは考えていないけれど……」
「いいえ。地獄に落とすべきです。ルーティ様という素晴らしい女性がいながら、浮気とは……よし。奴の皮をはぐのは私におまかせください」
「ちょっと物騒過ぎるわよ。せめて五体満足で生きていけないぐらいで勘弁してあげてちょうだい」
それでもやり過ぎかも知れないが……だがしかし、私もロロと同じく怒りを覚えている。
ただで済ますつもりは毛頭ない。
「で、私を呼び出したのはどういったご用件で?」
「あなたにお願いが二つほどあるの」
「二つと言わず、貴方様のご命令ならいくらでも喜んでお引き受けさせていただきます」
「ありがとう。でも今回は二つだけで構わないわ」
ニッコリ笑うロロに、私は真剣に話す。
「まず一つ目……ミゲイル様の浮気相手を調査してほしいの。どこの誰かは知らないけれど、とにかくその女性のことを知りたいのよ」
「かしこまりました。迅速に探し当てましょう」
ロロはどこで身に着けたのか、諜報員としての技能と人脈を持っている。
彼に調査を頼んで欲しかった情報が手に入らなかったことはない。
これは誰も知らないことなのだけれど、国を左右させるほどの問題をも解決したこともある。
匿名で事件を解決したから、ロロのことを知らない人は多いけれど。
まぁそれぐらいロロは優秀というわけだ。
とにかく彼に任せておけば、浮気相手の調査など朝飯前であろう。
「で、もう一つの頼みというのはなんでしょう? その女を密かに暗殺すればよろしいので?」
「もう少しその危険な思考を押さえてくれたら言うことないのだけれど……暗殺とか、そこまでするつもりはないわ。その女性は私という存在を知っているのかどうか。まずはそこを知らなければ。彼女の対処はそれを確認してからにしましょう」
「確かに、浮気と知っていたら問題ですが、ミゲイルに騙されていたのならその女性も被害者ですからね」
「ええ。だからその女性のことは後で決めましょう」
私は短く息を吐き、そして本題に移る。
「貴方に頼みたいもう一つのこと……それは、私に戦い方を教えてほしいの」
「戦い方をですか?」
「ええ。腹が煮えたぎるほどにムカついているの。だから最後はミゲイル様をぶっ飛ばしたいじゃない」
「なんと勇ましい……ルーティ様のそういうところ、好きですよ」
「ありがとう、ロロ」
ロロは顎に手を当て、思案顔をし出した。
私にどういう技術を教えるべきか、少し悩んでいるようだ。
「殺す技術は必要無いのですか?」
「ええ。全く必要ないわ」
私を暗殺者にでも仕立てるつもりか。
私はミゲイル様をぶっ飛ばせたらそれでいいのだから。
「……では、難易度の低い技術を伝授いたしましょう。ですが、それなりの訓練は必要ですので、ある程度時間はかかりますが……」
「その点は問題ないわ。あの人にそれなりの負傷を負わせられるのなら、それなりに努力はするつもりよ」
ロロは目を細め、妙に嬉しそうな表情をする。
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