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甘さ控えめ
デート気分
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一年のクラスに有名人である白瀬先輩が現れたということで、周りはざわざわ。
これは……。明日は先輩との関係を聞かれたり、先輩との仲を取り持ってと女の子に頼まれたりとかするんだろうな……。
先輩も視線が気になったのか、おれの机に参考書をぽんと置いて、ひらりと手を振った。
「じゃあな、後輩くん」
「あ、待っ……」
先輩が参考書を渡しに来てくれただけなのは判ってる。今日がクレープ50円引きの日じゃないってことも。
それでもそのまま、ただ帰らせてしまうのは勿体ない。
参考書を返すためとはいえ、わざわざおれの元に訪れてくれたんだから。
先に参考書を口実に使ったのは先輩の方だし、おれもこれを口実に、何か……。
「あの。参考書をわざわざ届けてくれたお礼に、何か奢らせてください」
「そんな気を遣うなよ。返し忘れたのは俺なんだしさ」
「でもおれも言い忘れていましたし、それに……先輩の好きそうなお店、知ってるんですけど」
「……へえ」
その気のない返事に見えて、その実気にしているのが判る。
「ただより高価いものはない」
先輩がぼそっと言った言葉に、下心のあったおれはぎくりとした。
下心と言ってもそんなやましいことを考えていた訳じゃない。ただ、デート気分を味わえればな、とかそれくらい。
昨日もそうだけど、おれにとっては先輩と出かけるというのはデートだ。
「と言っても、俺は甘い物を奢ってもらうのは大好きだ。奢ってくれるって言うなら、素直についてく」
この人、こんな感じで女の人にも奢ってもらってるんじゃないだろうな。年上のお姉さまとか……ありそう。
「可愛い女の子とのデートなら俺が奢るんだが、残念だったな、お前男で」
先輩がそんなことを言って笑う。
「ははは……」
おれも苦笑い。
それはちょっと残念ですね。
でもおれはどっちかというと、奢る方が好きだから、これで良かったと思っておきます。
おれにとっては、好きな可愛い先輩とのデート、なんで。
これは……。明日は先輩との関係を聞かれたり、先輩との仲を取り持ってと女の子に頼まれたりとかするんだろうな……。
先輩も視線が気になったのか、おれの机に参考書をぽんと置いて、ひらりと手を振った。
「じゃあな、後輩くん」
「あ、待っ……」
先輩が参考書を渡しに来てくれただけなのは判ってる。今日がクレープ50円引きの日じゃないってことも。
それでもそのまま、ただ帰らせてしまうのは勿体ない。
参考書を返すためとはいえ、わざわざおれの元に訪れてくれたんだから。
先に参考書を口実に使ったのは先輩の方だし、おれもこれを口実に、何か……。
「あの。参考書をわざわざ届けてくれたお礼に、何か奢らせてください」
「そんな気を遣うなよ。返し忘れたのは俺なんだしさ」
「でもおれも言い忘れていましたし、それに……先輩の好きそうなお店、知ってるんですけど」
「……へえ」
その気のない返事に見えて、その実気にしているのが判る。
「ただより高価いものはない」
先輩がぼそっと言った言葉に、下心のあったおれはぎくりとした。
下心と言ってもそんなやましいことを考えていた訳じゃない。ただ、デート気分を味わえればな、とかそれくらい。
昨日もそうだけど、おれにとっては先輩と出かけるというのはデートだ。
「と言っても、俺は甘い物を奢ってもらうのは大好きだ。奢ってくれるって言うなら、素直についてく」
この人、こんな感じで女の人にも奢ってもらってるんじゃないだろうな。年上のお姉さまとか……ありそう。
「可愛い女の子とのデートなら俺が奢るんだが、残念だったな、お前男で」
先輩がそんなことを言って笑う。
「ははは……」
おれも苦笑い。
それはちょっと残念ですね。
でもおれはどっちかというと、奢る方が好きだから、これで良かったと思っておきます。
おれにとっては、好きな可愛い先輩とのデート、なんで。
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