20 / 29
本編
両親にゴアイサツ
しおりを挟む
東吾さんの家は都心から少し離れた場所。洋館的なお屋敷を想像していたけれど、意外と近代的な家。ただし、でかい。旅行なんかで泊まるホテルみたいな感じ。庭も広い。門からの移動も車。
アパートが崩壊したことがきっかけとはいえ、恋人の家に訪問という一大イベントにかわりはない。緊張する。
「ほんの少し帰っていなかっただけなのに、なんだか懐かしいな」
逆に、東吾さんはリラックスしているみたい。
こんなでっかい家が帰る場所だなんて……僕とは違う世界の人間なんだなあとしみじみ思う。
「浅野。私の部屋はまだそのまま?」
「はい。ですが、旦那様と奥様がお二人を応接間でお待ちです」
「そうか。なら先に顔をあわせておこう」
覚悟はしてたけど、こんなに早く対面が。
「貴仁(たかひと)は?」
「不在です」
弟さんの名前かな? 不在と聞いて少しホッとしてしまった。
玄関へつくと、一緒に車を降りたAが礼をした。
「それでは私はここで……」
これから車を停めに行くんだろう。それでもわざわざ、いったん車を降りるんだなあ。そういうものなのか。
「行こうか、せーた」
「は、はい」
玄関の扉を開けて中へ入る。
……広い。床は大理石かな。照明はシャンデリアだ。く、靴は脱がないのかな。
「緊張してる?」
「まあ……」
「大丈夫だよ。きちんと、恋人だって紹介するから!」
余計に緊張するし、嫌な汗が出てきた。
嬉しそうにしてる東吾さんの案内で応接間へ続く廊下を歩く。
恋人だって紹介してもらえるの、嬉しいことは嬉しいんだけどさ。やっぱり胃は痛くなるな。
遊園地の絶叫マシンに並んでいる時のような感覚とでも言おうか……。
「ここだよ」
ついた。この先はジェットコースターだ。思わず唾を飲み込む。
「失礼します」
東吾さんがノックをして中へ入る。僕もそれに続く。中では割りと普通な感じの夫婦が大きめのソファに座っていた。
王子様の両親ってイメージが先行して、凄いきらびやかなのを想像してたんだけど、どちらかというとおとなしめ。日本人だし。
「ただいま!」
「おかえりなさい、東吾くん!」
そして凄くフランクだった。母も父も東吾さんをくんづけで呼んでる。
かしこまった感じはまったくなくて、少し緊張がほぐれた。
「君が東吾と仲良くしてくれている誠太くんか?」
名前呼ばれた! また身体に緊張が走ったけど、東吾さんの両親にカッコ悪い姿は見せられない。
それにしても……二人とも東吾さんのことをすっごい好きってオーラが出てて、どうしてこれで追い出されたなんて思ったのか、それが不思議だ。
家から出す際には、あえて冷たく突き放しでもしたんだろうか。
「はい。伊尾誠太と言います。東吾さんと仲良くさせてもらってます」
僕から恋人って言わないほうがいいよな?
なんか東吾さん、固まってるけど……。
「その、せーたには独り暮らしを始めた日から凄くお世話になってて……。今ではこっ……」
一瞬、時間が止まった気がして……。
「これ以上ないくらいの、友人なんだ!」
ゆるやかに動き出した。緊張の糸もほどけて、少し悲しくなって……それから、物凄くホッとした。
「そうかそうか。部屋は用意してあるから、ゆっくりしていってくれ。落ち着かないだろうから、夕飯は東吾くんの部屋に運ばせよう」
お父さんはニコニコしている。お母さんも。歳が離れた夫婦で、父親のほうは60過ぎに見える。母親はまだ40くらいか。
でも、なんで僕、こんなに歓迎されてんだろ。息子の初めてのお友達だからだろうか。真実も告げてないし、ちょっと後ろめたい。
「この度は本当にありがとうございます。お世話になります」
「そう畏まらなくても大丈夫だよ。話は聞いたが大変だったね。二人に怪我がなくて良かった。……で、うちの子は一人で頑張れていたかい?」
「は、はい。アパートみんなの人気者でした」
僕の答えにきゃっきゃと喜ぶ王子様の父母。可愛らしいというか、見た目は普通なのにどこかお花畑な感じがするというか……。ああ、東吾さんの両親なんだなあと納得。
王子様は横で照れくさそうにしてるかと思いきや、気落ちしていた。
「東吾くん、どうしたの? 何か元気がないみたいだけれど」
「少し疲れてるのかもしれない。いきなり住んでるところが壊れたからね」
心配する母親に東吾さんはそう言うけど、多分これ……。僕を恋人だって言えなかったからだよなあ。
「そうだな。名残惜しいが、二人とも部屋でゆっくりするといい」
ほんっとうに名残惜しそうな顔をしてる。東吾さんを連れ去る自分が悪者に思えてきた……。
でも、僕より東吾さんのほうがその場を離れたがってる様子。
早く東吾さんと二人きりになりたいし、ここはお言葉に甘えて退散させてもらうとしよう。
僕は再度お礼を告げて、東吾さんに引っ張られるようにして部屋を出た。
何か言ってくるかと思ったけど東吾さんは無言。二人で長い長い廊下を歩く。
それから初めて口を開いたのが、到着の言葉だった。
「ここが私の部屋だよ」
ここが……東吾さんがずっと、暮らしていた部屋……。
なんだか初めて秘密を暴くみたいで、少し興奮する。
「お邪魔します」
エスコートされながら中に入る。
……住んでたアパート二部屋分あわせたより広い。
この人、よくあのおんぼろアパートで暮らしてたなあ。
「ここが、東吾さんの育った部屋なんですね」
後ろで扉の閉まる音がして、背中からぎゅっと抱き締められた。
うお……。なんだこの少女漫画みたいなシチュエーション。
「と、東吾さん?」
「すまない。恋人だって、言えなくて」
「あー……」
やっぱり気にしてたか。
「別にいいですよ。すんなり言えるほうがおかしいし」
「言えると思ってたんだ。でも、両親の顔を見た途端、急に怖くなって……。君が前に言っていた、男と付き合うことの意味という言葉が、初めてわかった気がした」
実際、できると思っていたのにいざとなるとできないことは多々あると思う。だから本当に、そんなに気にしなくていいんだ、それは。
僕にとってはそれよりも、怖さを自覚してなお王子様が僕と恋人でいてくれるかどうかのほうが重要。
「それで、僕と別れたくなりましたか?」
答えを聞くのも正直怖い。東吾さんは僕にメロメロなんだから、平気。そう思ってはいても、声が震えそうだった。
「まさか! それはありえない」
良かった。即答。
少しは躊躇いの色があるかもと思ったけど、まったくない。
「なら、いいです。真実をすべて話すことが必ずしも美徳じゃない。王子様としては少し似合わないかもですけど」
「私は王子様ではないので、言葉に甘えておくよ」
ちょっと拗ねた声が可愛い。
「あ。僕のほうは心配しないでいいですよ。身内もしがらみもないですから」
「私は……その。いつかきちんと話すから。待っていてほしい」
東吾さんが抱き締める腕に力を込めてくる。痛くない程度にきゅうきゅう抱き締められて、ムラッときた。
こうして部屋に入れてくれて、抱き締めてきて……ここで仕掛けないなんて男がすたるよな?
「わかりました。でも言えなかったのは事実ですからね。お仕置きですよ」
「えっ、ど、どうしたらいいんだい?」
思わずブホッと噴き出しそうになった。
どう考えてもエロイ意味に決まってるのに、本気で狼狽えてる。
こういうところも含めて、本当に大好きだ。
「東吾さんの部屋って、鍵かかります?」
「あ、ああ」
「じゃあ、鍵をかけて。その大きいベッドに寝転がってください」
「……それは、つまり」
あ。お仕置きの意味に気づいたかな。顔が真っ赤になった。
東吾さんは僕の身体を離し後ろ手に鍵をかけると、俯きながらベッドまでしずしずと歩き、素直にころんと横たわった。
金色のサラサラした髪の毛がシーツに映える。欲情を煽られるには充分な姿。
「僕より背が高くてカッコいいのに、そうやって期待と怯えに頬を染めてると、しどけないって言葉がよくあうなあ」
シャツの前を開けてそっと手のひらをすべらせる。
「っ……」
東吾さんが息を飲んだ。薄い色の睫毛が綺麗にまばたきする。
「処女みたい」
「しょ……っ! わ、私は男だし、初めてでないことは君が一番よく知ってるだろう」
「そうですね。ふふ……」
二人であれこれしてもびくともしなさそうなベッドは、乗り上げると僅か甘く軋んだ。
さて。お仕置きだなんて言ってみたけど、何しようかな。
僕が身体をまさぐるたびに、何をされるのかとビクビクする東吾さんを見るだけで、割りと満足しちゃってるんだけど。
「……自分で脱いで、足を開いてみてくれませんか?」
「む、無理……」
「無理じゃないですよー。せーたのが欲しいって、誘ってください」
「うう……」
東吾さんは今にも泣き出しそうな顔で、ゆっくりと服を脱いでいく。
勢いよく脱ぐよりよっぽどクるんだけど、わかってやってるわけじゃないんだろうな。
あー……。やらしすぎて、もうギンギンだ。
「下着も?」
「当然ですよ」
東吾さんの手は上半身をはだけただけで終わってしまっている。
いくらなんでも、もうちょっと頑張ってみませんか。
「ほら、早く」
「……次は絶対に、恋人だって、言うから……。だから許してもらえないだろうか」
あれ。もしかして、これ本気で懇願してる?
「そ、そんなにつらかったんですか!? ウソウソ! 全然怒ってないから! お仕置きなんて口実でちょっとえっちなイタズラしたかっただけなんです」
「ほ、本当かい?」
ぶんぶんと首を縦に振ると、ようやく東吾さんの強張った表情がゆるんだ。
び、ビックリした。シャレにならない。虐めてしまった。
「なら、脱ぐよ」
「お仕置きはもういいんですよ?」
「だって君が……見たいんだろう?」
なんて挑発的なことを言ってみたくせに、結局もたもたと脱いでいる。
よっぽど、もういいですよと言ってあげたかったけど、欲望が勝って無遠慮にじっとりと見つめてしまった。
最後の一枚を脱いで、手のひらで前を隠しながら東吾さんが僕に手を伸ばす。
「せーたが、欲しいよ。私の未来は君としか描けない」
「東吾さん……」
いい雰囲気なんだけど、それ以上にやらしくて、今ならルパンダイブもできそうだと台無しなことを考えていた。
アパートが崩壊したことがきっかけとはいえ、恋人の家に訪問という一大イベントにかわりはない。緊張する。
「ほんの少し帰っていなかっただけなのに、なんだか懐かしいな」
逆に、東吾さんはリラックスしているみたい。
こんなでっかい家が帰る場所だなんて……僕とは違う世界の人間なんだなあとしみじみ思う。
「浅野。私の部屋はまだそのまま?」
「はい。ですが、旦那様と奥様がお二人を応接間でお待ちです」
「そうか。なら先に顔をあわせておこう」
覚悟はしてたけど、こんなに早く対面が。
「貴仁(たかひと)は?」
「不在です」
弟さんの名前かな? 不在と聞いて少しホッとしてしまった。
玄関へつくと、一緒に車を降りたAが礼をした。
「それでは私はここで……」
これから車を停めに行くんだろう。それでもわざわざ、いったん車を降りるんだなあ。そういうものなのか。
「行こうか、せーた」
「は、はい」
玄関の扉を開けて中へ入る。
……広い。床は大理石かな。照明はシャンデリアだ。く、靴は脱がないのかな。
「緊張してる?」
「まあ……」
「大丈夫だよ。きちんと、恋人だって紹介するから!」
余計に緊張するし、嫌な汗が出てきた。
嬉しそうにしてる東吾さんの案内で応接間へ続く廊下を歩く。
恋人だって紹介してもらえるの、嬉しいことは嬉しいんだけどさ。やっぱり胃は痛くなるな。
遊園地の絶叫マシンに並んでいる時のような感覚とでも言おうか……。
「ここだよ」
ついた。この先はジェットコースターだ。思わず唾を飲み込む。
「失礼します」
東吾さんがノックをして中へ入る。僕もそれに続く。中では割りと普通な感じの夫婦が大きめのソファに座っていた。
王子様の両親ってイメージが先行して、凄いきらびやかなのを想像してたんだけど、どちらかというとおとなしめ。日本人だし。
「ただいま!」
「おかえりなさい、東吾くん!」
そして凄くフランクだった。母も父も東吾さんをくんづけで呼んでる。
かしこまった感じはまったくなくて、少し緊張がほぐれた。
「君が東吾と仲良くしてくれている誠太くんか?」
名前呼ばれた! また身体に緊張が走ったけど、東吾さんの両親にカッコ悪い姿は見せられない。
それにしても……二人とも東吾さんのことをすっごい好きってオーラが出てて、どうしてこれで追い出されたなんて思ったのか、それが不思議だ。
家から出す際には、あえて冷たく突き放しでもしたんだろうか。
「はい。伊尾誠太と言います。東吾さんと仲良くさせてもらってます」
僕から恋人って言わないほうがいいよな?
なんか東吾さん、固まってるけど……。
「その、せーたには独り暮らしを始めた日から凄くお世話になってて……。今ではこっ……」
一瞬、時間が止まった気がして……。
「これ以上ないくらいの、友人なんだ!」
ゆるやかに動き出した。緊張の糸もほどけて、少し悲しくなって……それから、物凄くホッとした。
「そうかそうか。部屋は用意してあるから、ゆっくりしていってくれ。落ち着かないだろうから、夕飯は東吾くんの部屋に運ばせよう」
お父さんはニコニコしている。お母さんも。歳が離れた夫婦で、父親のほうは60過ぎに見える。母親はまだ40くらいか。
でも、なんで僕、こんなに歓迎されてんだろ。息子の初めてのお友達だからだろうか。真実も告げてないし、ちょっと後ろめたい。
「この度は本当にありがとうございます。お世話になります」
「そう畏まらなくても大丈夫だよ。話は聞いたが大変だったね。二人に怪我がなくて良かった。……で、うちの子は一人で頑張れていたかい?」
「は、はい。アパートみんなの人気者でした」
僕の答えにきゃっきゃと喜ぶ王子様の父母。可愛らしいというか、見た目は普通なのにどこかお花畑な感じがするというか……。ああ、東吾さんの両親なんだなあと納得。
王子様は横で照れくさそうにしてるかと思いきや、気落ちしていた。
「東吾くん、どうしたの? 何か元気がないみたいだけれど」
「少し疲れてるのかもしれない。いきなり住んでるところが壊れたからね」
心配する母親に東吾さんはそう言うけど、多分これ……。僕を恋人だって言えなかったからだよなあ。
「そうだな。名残惜しいが、二人とも部屋でゆっくりするといい」
ほんっとうに名残惜しそうな顔をしてる。東吾さんを連れ去る自分が悪者に思えてきた……。
でも、僕より東吾さんのほうがその場を離れたがってる様子。
早く東吾さんと二人きりになりたいし、ここはお言葉に甘えて退散させてもらうとしよう。
僕は再度お礼を告げて、東吾さんに引っ張られるようにして部屋を出た。
何か言ってくるかと思ったけど東吾さんは無言。二人で長い長い廊下を歩く。
それから初めて口を開いたのが、到着の言葉だった。
「ここが私の部屋だよ」
ここが……東吾さんがずっと、暮らしていた部屋……。
なんだか初めて秘密を暴くみたいで、少し興奮する。
「お邪魔します」
エスコートされながら中に入る。
……住んでたアパート二部屋分あわせたより広い。
この人、よくあのおんぼろアパートで暮らしてたなあ。
「ここが、東吾さんの育った部屋なんですね」
後ろで扉の閉まる音がして、背中からぎゅっと抱き締められた。
うお……。なんだこの少女漫画みたいなシチュエーション。
「と、東吾さん?」
「すまない。恋人だって、言えなくて」
「あー……」
やっぱり気にしてたか。
「別にいいですよ。すんなり言えるほうがおかしいし」
「言えると思ってたんだ。でも、両親の顔を見た途端、急に怖くなって……。君が前に言っていた、男と付き合うことの意味という言葉が、初めてわかった気がした」
実際、できると思っていたのにいざとなるとできないことは多々あると思う。だから本当に、そんなに気にしなくていいんだ、それは。
僕にとってはそれよりも、怖さを自覚してなお王子様が僕と恋人でいてくれるかどうかのほうが重要。
「それで、僕と別れたくなりましたか?」
答えを聞くのも正直怖い。東吾さんは僕にメロメロなんだから、平気。そう思ってはいても、声が震えそうだった。
「まさか! それはありえない」
良かった。即答。
少しは躊躇いの色があるかもと思ったけど、まったくない。
「なら、いいです。真実をすべて話すことが必ずしも美徳じゃない。王子様としては少し似合わないかもですけど」
「私は王子様ではないので、言葉に甘えておくよ」
ちょっと拗ねた声が可愛い。
「あ。僕のほうは心配しないでいいですよ。身内もしがらみもないですから」
「私は……その。いつかきちんと話すから。待っていてほしい」
東吾さんが抱き締める腕に力を込めてくる。痛くない程度にきゅうきゅう抱き締められて、ムラッときた。
こうして部屋に入れてくれて、抱き締めてきて……ここで仕掛けないなんて男がすたるよな?
「わかりました。でも言えなかったのは事実ですからね。お仕置きですよ」
「えっ、ど、どうしたらいいんだい?」
思わずブホッと噴き出しそうになった。
どう考えてもエロイ意味に決まってるのに、本気で狼狽えてる。
こういうところも含めて、本当に大好きだ。
「東吾さんの部屋って、鍵かかります?」
「あ、ああ」
「じゃあ、鍵をかけて。その大きいベッドに寝転がってください」
「……それは、つまり」
あ。お仕置きの意味に気づいたかな。顔が真っ赤になった。
東吾さんは僕の身体を離し後ろ手に鍵をかけると、俯きながらベッドまでしずしずと歩き、素直にころんと横たわった。
金色のサラサラした髪の毛がシーツに映える。欲情を煽られるには充分な姿。
「僕より背が高くてカッコいいのに、そうやって期待と怯えに頬を染めてると、しどけないって言葉がよくあうなあ」
シャツの前を開けてそっと手のひらをすべらせる。
「っ……」
東吾さんが息を飲んだ。薄い色の睫毛が綺麗にまばたきする。
「処女みたい」
「しょ……っ! わ、私は男だし、初めてでないことは君が一番よく知ってるだろう」
「そうですね。ふふ……」
二人であれこれしてもびくともしなさそうなベッドは、乗り上げると僅か甘く軋んだ。
さて。お仕置きだなんて言ってみたけど、何しようかな。
僕が身体をまさぐるたびに、何をされるのかとビクビクする東吾さんを見るだけで、割りと満足しちゃってるんだけど。
「……自分で脱いで、足を開いてみてくれませんか?」
「む、無理……」
「無理じゃないですよー。せーたのが欲しいって、誘ってください」
「うう……」
東吾さんは今にも泣き出しそうな顔で、ゆっくりと服を脱いでいく。
勢いよく脱ぐよりよっぽどクるんだけど、わかってやってるわけじゃないんだろうな。
あー……。やらしすぎて、もうギンギンだ。
「下着も?」
「当然ですよ」
東吾さんの手は上半身をはだけただけで終わってしまっている。
いくらなんでも、もうちょっと頑張ってみませんか。
「ほら、早く」
「……次は絶対に、恋人だって、言うから……。だから許してもらえないだろうか」
あれ。もしかして、これ本気で懇願してる?
「そ、そんなにつらかったんですか!? ウソウソ! 全然怒ってないから! お仕置きなんて口実でちょっとえっちなイタズラしたかっただけなんです」
「ほ、本当かい?」
ぶんぶんと首を縦に振ると、ようやく東吾さんの強張った表情がゆるんだ。
び、ビックリした。シャレにならない。虐めてしまった。
「なら、脱ぐよ」
「お仕置きはもういいんですよ?」
「だって君が……見たいんだろう?」
なんて挑発的なことを言ってみたくせに、結局もたもたと脱いでいる。
よっぽど、もういいですよと言ってあげたかったけど、欲望が勝って無遠慮にじっとりと見つめてしまった。
最後の一枚を脱いで、手のひらで前を隠しながら東吾さんが僕に手を伸ばす。
「せーたが、欲しいよ。私の未来は君としか描けない」
「東吾さん……」
いい雰囲気なんだけど、それ以上にやらしくて、今ならルパンダイブもできそうだと台無しなことを考えていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
120
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる