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10.決意
しおりを挟む翌朝目覚めると、リーゼは外出するので支度を手伝って欲しいと、侍女のペリを呼んだ。久しぶりの大仕事に、ペリは嬉しそうだった。
「とっておきの髪飾りを付けましょうね」
ペリには昨夜のことも、パーティーでのことも話していない。だが、このところ塞ぎがちだったリーゼをずっと心配してくれていた。だから、起きてすぐに"支度を手伝って"と言うと、張り切って準備してくれた。
「これからお出掛けですか?」
「ええ、少しね。今日は仕事ではないから、少しお洒落したくなったの」
そうですか。と、ペリは小さく笑った。何かを察したのだろう、余計な質問をしないところが信頼できる所以だ。
ペリはクリーム色のドレスを用意していた。嫁いでくる際、母に何度も言いつけられていたことといえば、領主の妻として"派手すぎないこと"だった。その為、持ってきたドレスはどれも落ち着いた雰囲気のものばかりだった。その中でも華やかに見えるのがこのクリーム色のドレスだった。色味は抑えているが、ふんわりとした袖口とピッタリとしたウェストのデザインが気に入っている。
「せっかくのお出掛けですから、口紅も」
葡萄色の口紅を乗せて、鏡の前でにっこりと笑ってみる。つられてペリも嬉しそうに笑った。
久しぶりに丁寧に化粧を施すと、ますます気分も上がってくるものだ。
「よくお似合いですよ、リーゼ様」
「ありがとう、ペリ。それじゃあ行ってくるわね」
リーゼはこっそりと屋敷を抜け出すつもりだった。昼までに同じようにこっそり帰ってくれば気付かれることはないと踏んでいた。
「リーゼ、どこへ行く?」
しまった。予想外の人物に遭遇し、思わず舌打ちしそうになるのを堪えて振り向くと、エリオットが仁王立ちで立っていた。
目が合った瞬間、彼の表情が強張ったのが分かった。
「随分とめかし込んでいるな。どこへ行くつもりなんだと聞いているのだが?」
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「……どこでもいいでしょう」
リーゼは一刻も早くこの場を去りたかった。自然と突き放すように答えてしまう。
「気を付けろよ、みんなゴシップに飢えてる」
もちろん、私は気にしない。そう言ってエリオットは肩を竦めた。そう言いながら、リーゼを上から下まで値踏みでもするようにじっくりと見ているのがわかる。
「ご忠告、ありがとうございます」
決意が揺らいでしまう前に、リーゼは屋敷を出発したかった。彼の目を見ないように、すっと頭を下げる。
足早にその場を離れる妻の背中を、エリオットは悔しそうに見ていた。
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