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episodo:6
#6
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甘ったるい声が耳に流れ込んでくるんだけれど。
「芽依ちゃん…って呼んでもいい?」
さっきから充満してる甘ったるい香りのせいで、
クラクラしっぱなしの頭では、なんにも考えられなくて。
ただただ…
女の人のしなやかな腕に抱きしめられたまんまで、
ポカン…としてしまっていた。
「おい、もう…やめろって!
芽依、大丈夫か?」
そしたら、
海翔さんが女の人の腕を掴むと、
ゆっくり私から剥がすようにして
自分の胸へ抱き寄せてくれた。
「ちょっと、海翔、ズルいわよ!独り占めして!」
「母さんが芽依を困らせてんだろっ。触んな!バカがうつる!」
……ええ!?
今、
母さん……って言った!?
こんなに若くて…綺麗で……。
どう見ても三十代……四十代にしか見えないんだけど……。
話の内容云々よりも、
そっちに驚いてしまった私が、
海翔さんの胸にくっつけてた顔をガバッ…と上げてみると。
「ん?どうした?」
時折…向けてくれる…
優しい眼差しと落ち着いた低くて優しい甘い声で、
やんわりと言葉を促してくれる海翔さん。
とても嘘を言ってるようには見えない。
途端に…
ホッと安心して、
泣くつもりなんてないのに。
涙腺が緩んでしまって声が震えてしまう。
「………お母…さん…なの?」
「あぁ。
芽依?なんで、泣くんだ?」
『なんで、泣くんだ?』
って、
言った後に、
とても心配そうにして私の顔を覗き込んでくる海翔さん。
海翔さんの胸に抱き寄せられたまんまでポロリ…と涙を零す私。
そこへ
「あらあら、私が若くて綺麗だから、海翔が浮気してたと思ったんでしょ?
海翔、良かったわねぇ、そんなに想ってもらえて!」
この状況に似つかわしくないような、
クスクス……と笑いながら、楽しそうに喋る海翔さんのお母さんの呑気な声が、診察室に響き渡っていく。
「母さんは、煩いんだよ。ったくっ……。
芽依、そうなのか?」
お母さんへは、
凄く、不機嫌そうに。
冷たくピシャリ…と言い放つ海翔さん。
私には、
優しく声をかけてくれる海翔さん。
「海翔は、ダメねぇ?
そんなことも解んないなんてぇ。
誰に似ちゃたのかしらねぇ」
「母さんじゃないことだけは確かだけどな」
でも、そんなことに構うこともなく。
どこまでも冷たい塩対応の海翔さんとは対照的に。
あっけらかんとした様子で、
マイペースに喋り続けるお母さん。
本当に、親子なの?
って、思ってしまう二人の姿を目の当たりにして、
いつのまにか涙も引っ込んでしまっていた。
「芽依ちゃん…って呼んでもいい?」
さっきから充満してる甘ったるい香りのせいで、
クラクラしっぱなしの頭では、なんにも考えられなくて。
ただただ…
女の人のしなやかな腕に抱きしめられたまんまで、
ポカン…としてしまっていた。
「おい、もう…やめろって!
芽依、大丈夫か?」
そしたら、
海翔さんが女の人の腕を掴むと、
ゆっくり私から剥がすようにして
自分の胸へ抱き寄せてくれた。
「ちょっと、海翔、ズルいわよ!独り占めして!」
「母さんが芽依を困らせてんだろっ。触んな!バカがうつる!」
……ええ!?
今、
母さん……って言った!?
こんなに若くて…綺麗で……。
どう見ても三十代……四十代にしか見えないんだけど……。
話の内容云々よりも、
そっちに驚いてしまった私が、
海翔さんの胸にくっつけてた顔をガバッ…と上げてみると。
「ん?どうした?」
時折…向けてくれる…
優しい眼差しと落ち着いた低くて優しい甘い声で、
やんわりと言葉を促してくれる海翔さん。
とても嘘を言ってるようには見えない。
途端に…
ホッと安心して、
泣くつもりなんてないのに。
涙腺が緩んでしまって声が震えてしまう。
「………お母…さん…なの?」
「あぁ。
芽依?なんで、泣くんだ?」
『なんで、泣くんだ?』
って、
言った後に、
とても心配そうにして私の顔を覗き込んでくる海翔さん。
海翔さんの胸に抱き寄せられたまんまでポロリ…と涙を零す私。
そこへ
「あらあら、私が若くて綺麗だから、海翔が浮気してたと思ったんでしょ?
海翔、良かったわねぇ、そんなに想ってもらえて!」
この状況に似つかわしくないような、
クスクス……と笑いながら、楽しそうに喋る海翔さんのお母さんの呑気な声が、診察室に響き渡っていく。
「母さんは、煩いんだよ。ったくっ……。
芽依、そうなのか?」
お母さんへは、
凄く、不機嫌そうに。
冷たくピシャリ…と言い放つ海翔さん。
私には、
優しく声をかけてくれる海翔さん。
「海翔は、ダメねぇ?
そんなことも解んないなんてぇ。
誰に似ちゃたのかしらねぇ」
「母さんじゃないことだけは確かだけどな」
でも、そんなことに構うこともなく。
どこまでも冷たい塩対応の海翔さんとは対照的に。
あっけらかんとした様子で、
マイペースに喋り続けるお母さん。
本当に、親子なの?
って、思ってしまう二人の姿を目の当たりにして、
いつのまにか涙も引っ込んでしまっていた。
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