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番外編~海翔の呟き~
#3
しおりを挟む……へ!?
そんなことで、あんなにシュンとしてたのかよ?
俺、きっと、今、スッゲー間抜けなツラしてんだろうな……。
それに、俺、優しく答えたりしたっけか?
「……俺、別に、優しく答えたつもりねぇんだけど…」
そう返せば、
「私に初めて逢ったときはスッゴく素っ気なかったのに……。さっきは愛想笑いしてたもん。だから、店員さんがポーって赤い顔して海翔に見とれてたんだもん」
バツ悪そうだった表情が一変、ガバッと俺の方に向き直って来たかと思えば、ムッとした表情で訴えかけて来た芽依。
イヤイヤイヤ、 俺、愛想笑いなんてした覚えもねぇんだけど……。
まぁ、良いけどな?
「なぁ、芽依。それって、ヤキモチだよな?」
そんなことでヤキモチ妬いて、こんなにムキになって怒った芽依なんて、滅多にお目にかかれないんだからさぁ。
それに、
「ち、違うもん! ちょっと面白くなかっただけだもん。海翔が愛想笑いなんてすると思わなかったから…」
芽依が怒っても全然怖くなんかねぇし、怒ってムキになればなるほどスッゲー可愛いとしか思えねぇし……。
「……へぇ」
芽依の言葉を聞いてると、なんとかしてグッと頬に力入れて引き締めようとしてんのに、 どうしようもないくらい頬が緩んでいくのが自分でもよ~く解る。
「ヤダ。どうして笑うの?」
当然、 芽依に指摘されちまったけど、そんなこともどうでもいい……。
だってさぁ……
「芽依がメチャクチャ可愛いこと言って来るからだろ?」
信号が赤になっても、渋滞して車を動かせないのを良いことに、そう言って抱きしめると、
「え、呆れたんじゃないの?」
俺が閉じ込めた腕の中から、今度は不安げにそんなことを聞いてくる。
なぁ、芽依、知ってたか?
俺にとったら、芽依の無邪気な笑顔だけじゃなくて、ムキになって怒った表情でさえも、 愛おしくて可愛いとしか思えないってこと……。
「呆れたりするかよ……。 ヤキモチ妬いてくれたら、スッゲー嬉しいに決まってんだろ? 今すぐ、押し倒したいくらいだ」
「////」
まぁ、照れ隠しの意地悪は、どうしても外せねぇんだけどな……。
俺の腕の中で耳まで真っ赤にさせた芽依は、 恥ずかしくて顔なんて上げられないのに、
「……そ、そんなこと言っても、誤魔化されないんだから! あの店員さん、スッゴく可愛かったもんね。 ……そりゃ、愛想笑いだってしちゃうよね?」
カフェでのことでも思い浮かべているのか、俺の服の胸元をギュッと掴んで、まだブツブツと文句を言ってくる。
あ~あ、なんでこんな可愛いこと言うかなぁ?
さっきは、照れ隠しで意地悪なこと言ったけど、 ホントに今すぐにでも押し倒してしまいたくなってきたじゃねーかよ?
そうは思っても午後からの診察もある訳だし んなことホントにできる筈もなく……。
芽依を抱きしめたままで 『夜までお預けかよ?』 って心ん中で毒づきながら溜め息を吐き出した。
ハァ……。
そしたら、
「あっ! ヤッパリ、海翔スッゴく呆れてるじゃない!」
どうやら俺が呆れて溜め息をついたと勘違いした芽依が、俺の顔をキッと睨んできたかと思えば、 ムキーッてな感じで本格的に怒りだしてしまった。
端《はた》から見れば、俺が浮気でもしたんじゃねぇの? ってくらいの勢いで怒ってしまった芽依をなんとか宥めようと、
「イヤイヤ、呆れたんじゃねぇんだって……」
俺の目の前まで迫ってきてる芽依の両肩を掴んで声を掛けてみれば、尖ってる唇を尚もムムッと尖らせて、
「じゃぁ、なんで笑うの!?
今だって、笑ってるじゃない! 私のことがそんなに可笑しいの?」
なんて、 今度は、未だに緩みきってる俺の顔のことで詰めよってくる芽依。
スッゲー、 カッコ悪ぃから言うのは嫌だったんだけど……。
「だから、さっきも言ったろ? 芽依がヤキモチ妬いてくれたのが嬉しくてニヤケてたんだって。
それに、溜め息吐いたのは、本当に押し倒してしまいたくなったけど、そーもいかねーし? 夜までお預けかよって思って溜め息吐いただけなんだって……。
それから、店でも、芽依の笑顔に見とれてたから、ニヤケてたんだと思う……」
俺は、馬鹿正直に、 何もかもを暴露するハメになってしまった。
ただ、芽依の機嫌を直したいがために……。
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