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episoudo:5
#9 *松岡直樹side*
チャラ男の衝撃的な言葉によって、今までの黒木とのことを色々と思い返してみても。
黒木が俺のことを好きだ、なんて臭わせるようなことなんて一つも思い浮かばなくて。
チャラ男に対して『疑心暗鬼』の文字がチラチラと見え隠れしかけていた。
そんな俺の耳に、腹が立つくらいの呑気なチャラ男の声が流れこんできて。
「あれ? アイツ、どうかしちゃったのかな?」
その声にまるで弾かれるようにして、さっき偶然見つけてしまった相川と黒木らしきカップルの方へとの視線を彷徨わせれば。
映画が始まる頃には、あんなにたくさんだった観客も鳴りを潜めていて、相川と黒木の二人の姿や様子までもがハッキリと見て取れた。
俺から見る限りでは、映画が終わって結構時間が経ってるというのに、未だ黒木はシートに座ったままで、何故か両手で顔を覆い隠すようにして俯いていて。
その傍では、相川が心配そうに黒木の様子をうかがいつつ、必死で何かを話しかけているように見える。
その光景が視界に入ってきた途端。俺の腕の中で、酔っ払い黒木が怖いと言って泣いてた時のことが鮮明に思い出された。
今すぐにでも、黒木の元へと駆け寄って、何とかしてやりたい。
あの時みたいに、泣き止むまで優しく包み込んで傍にいてやりたい。
けど、あの時とは状況が違う。
今、黒木の傍には相川が居るっていうのに、そんなことを思ってしまった俺は、とっさに拳をグッと強く握りこんで、その衝動を何とか無理やり心の奥底に押さえ込んだ。
けど、それは、例によってチャラ男の言葉によって、まるでタガが外れるようにして、あっけなく崩れ去ることになる。
「相川さん、黒木のことスッゲー気に入ってたから、強引に迫っちゃったのかな? 黒木ってあぁ見えて、男と付き合ったのって、高校の時以来ないらしいし……。詳しくは知らねぇけど、その時の男がまた酷いヤツで、トラウマになってるとかって言ってたからなぁ」
チャラ男が言い終わったと同時、俺はチャラ男のシャツの襟首を両手でひっつかんでいた。
そして、そんな行動にでた俺に驚き、両目をパチクリと大きく見開いて固まっているチャラ男の顔の間近まで迫り、
「もっと早く言えよっ!? だからお前はチャラ男なんだよっ!」
黒木と相川のいるここまで俺をわざわざ連れてきておいて。
黒木の友人の舞ちゃんから色々聞いて知ってただろう肝心なことを、今の今まで言わずにいたチャラ男に対してどうしようもなく腹が立った俺は捨てゼリフを吐きながら、チャラ男を軽く突き飛ばすようにして襟首から手を離すと。
俺の意識も身体も、何もかも全てが黒木の元へと駆け出していた。
「……び、ビックリした……。あんな怖い表情《かお》の直ちゃん初めて見た。けど、チャラ男って酷くねぇ? 俺、そんなチャラくねぇし…」
チャラ男がブツクサと不服そうな声で悪態を付くのを背中で感じながら……。
二人に近づくにつれ、黒木が両手で顔を覆い隠すようにして泣いてる姿が、俺の視界一杯に、これでもかってくらいに大きく映しだされた。
それと同時に、黒木の傍で突っ立ってオロオロとしている相川への怒りが、ムクムクと腹の底から沸き上がってきて。
気づいた時には、チャラ男についさっきしたように、相川のコジャレたシャツの襟首をひっつかんでいた。
そして、
「相川っ! 黒木が男慣れしてないってことくらい、接してたら解んだろうがっ!? 初デートでガッツいてんじゃねぇよっ!」
地を這うような低音で怒りをそのまま吐き捨ててから、
「イヤイヤ、お前がもっと早く来ると思って…」
相川がボソリと零した可笑しな言葉にも気づくことなく。
やっぱり、チャラ男にしたのと同じように、相川を軽く突き放すようにして襟首を離して。
相変わらず俯いたまんまで泣き続けている黒木のことを、正面からスッポリと優しくフワリと包み込むようにして抱きしめていた。
「黒木、もう大丈夫だからな?」
これ以上の優しい声なんて出せないってくらいの精一杯の優しい声で囁きながら……。
黒木が俺のことを好きだ、なんて臭わせるようなことなんて一つも思い浮かばなくて。
チャラ男に対して『疑心暗鬼』の文字がチラチラと見え隠れしかけていた。
そんな俺の耳に、腹が立つくらいの呑気なチャラ男の声が流れこんできて。
「あれ? アイツ、どうかしちゃったのかな?」
その声にまるで弾かれるようにして、さっき偶然見つけてしまった相川と黒木らしきカップルの方へとの視線を彷徨わせれば。
映画が始まる頃には、あんなにたくさんだった観客も鳴りを潜めていて、相川と黒木の二人の姿や様子までもがハッキリと見て取れた。
俺から見る限りでは、映画が終わって結構時間が経ってるというのに、未だ黒木はシートに座ったままで、何故か両手で顔を覆い隠すようにして俯いていて。
その傍では、相川が心配そうに黒木の様子をうかがいつつ、必死で何かを話しかけているように見える。
その光景が視界に入ってきた途端。俺の腕の中で、酔っ払い黒木が怖いと言って泣いてた時のことが鮮明に思い出された。
今すぐにでも、黒木の元へと駆け寄って、何とかしてやりたい。
あの時みたいに、泣き止むまで優しく包み込んで傍にいてやりたい。
けど、あの時とは状況が違う。
今、黒木の傍には相川が居るっていうのに、そんなことを思ってしまった俺は、とっさに拳をグッと強く握りこんで、その衝動を何とか無理やり心の奥底に押さえ込んだ。
けど、それは、例によってチャラ男の言葉によって、まるでタガが外れるようにして、あっけなく崩れ去ることになる。
「相川さん、黒木のことスッゲー気に入ってたから、強引に迫っちゃったのかな? 黒木ってあぁ見えて、男と付き合ったのって、高校の時以来ないらしいし……。詳しくは知らねぇけど、その時の男がまた酷いヤツで、トラウマになってるとかって言ってたからなぁ」
チャラ男が言い終わったと同時、俺はチャラ男のシャツの襟首を両手でひっつかんでいた。
そして、そんな行動にでた俺に驚き、両目をパチクリと大きく見開いて固まっているチャラ男の顔の間近まで迫り、
「もっと早く言えよっ!? だからお前はチャラ男なんだよっ!」
黒木と相川のいるここまで俺をわざわざ連れてきておいて。
黒木の友人の舞ちゃんから色々聞いて知ってただろう肝心なことを、今の今まで言わずにいたチャラ男に対してどうしようもなく腹が立った俺は捨てゼリフを吐きながら、チャラ男を軽く突き飛ばすようにして襟首から手を離すと。
俺の意識も身体も、何もかも全てが黒木の元へと駆け出していた。
「……び、ビックリした……。あんな怖い表情《かお》の直ちゃん初めて見た。けど、チャラ男って酷くねぇ? 俺、そんなチャラくねぇし…」
チャラ男がブツクサと不服そうな声で悪態を付くのを背中で感じながら……。
二人に近づくにつれ、黒木が両手で顔を覆い隠すようにして泣いてる姿が、俺の視界一杯に、これでもかってくらいに大きく映しだされた。
それと同時に、黒木の傍で突っ立ってオロオロとしている相川への怒りが、ムクムクと腹の底から沸き上がってきて。
気づいた時には、チャラ男についさっきしたように、相川のコジャレたシャツの襟首をひっつかんでいた。
そして、
「相川っ! 黒木が男慣れしてないってことくらい、接してたら解んだろうがっ!? 初デートでガッツいてんじゃねぇよっ!」
地を這うような低音で怒りをそのまま吐き捨ててから、
「イヤイヤ、お前がもっと早く来ると思って…」
相川がボソリと零した可笑しな言葉にも気づくことなく。
やっぱり、チャラ男にしたのと同じように、相川を軽く突き放すようにして襟首を離して。
相変わらず俯いたまんまで泣き続けている黒木のことを、正面からスッポリと優しくフワリと包み込むようにして抱きしめていた。
「黒木、もう大丈夫だからな?」
これ以上の優しい声なんて出せないってくらいの精一杯の優しい声で囁きながら……。
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