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甘くて苦いビターチョコのように
#20
しおりを挟むーー処女の私なんかとは違って、こうやってすぐに余裕を取り戻してしまえる要さんのことが怨めしい。
それだけじゃなくて、イキそうになっても、さっきみたく上手くコントロールして、中断できちゃうんだもん。
もしかしたら、処女の私に気を遣って『イキそうだった』って言ってくれただけで、実はそうでもなかったのかもしれない。
ーーやっぱり、処女の私なんかじゃ、満足できないってことなのかもしれない。
きっと、要さんは、美優さんだけじゃなくて、女の人を煩わしく思っちゃうほどモテるだろうから、色んな大人な女の人ともこういうことをしたことがあるんだろうと思う。
だから、こういうことにも当然慣れてるだろうから、お子ちゃまな私じゃ、満足できないんだ。
処女の私がどんなに背伸びして頑張っても、きっとどうにかなるもんじゃないんだろうと思う。
ーー私が要さんを『好きだ』というこの想いと、要さんが私を『好きだ』という想いが違うように。
いくら、要さんが
『大事にしたい』とか、
『契約のことは気にしなくていい』とか、
『煩わしいなんて思ったことない』とか、
『好きだ』、『愛してる』そう言って、どんなに優しくしてくれても……。
その時は、舞い上がっちゃうぐらい嬉しくて、信じたいって思えるんだけれど。
今みたく、ことあるごとに、信じたいという気持ちがミルミル萎んでしまう。
不安材料はどんどん膨れ上がって、尽きることはないし、どんなことでも、結局は、美優さんへと結論が行き着いてしまう。
どうしても、亡くなった美優さんのことが気にかかって仕方ない。
こんな時は決まって、私が入院してた病室で聞いてしまった要さんの『美優』と切なげに呼んでたあの声が鮮明に蘇ってきてしまう。
どんな女性だったかなんて見たこともないし、知らないけど、きっと要さんの中では素敵な想い出が色褪せることなく、今までも、これからもずっと残っていくんだろう。
もしかしなくても、きっと、要さんは、私と美優さんを重ねて、美優さんにしてあげることのできなくなったことを私を通してしているんだろうと思う。
私がどんなに背伸びして頑張っても、入り込めるような隙なんて、ないのかもしれない。
要さんが本当に私のことを好きになってくれているのだとしても。
きっと、ううん、絶対、色褪せることのない美優さんとの想い出には敵わない。
私がどんなに背伸びして頑張っても、きっと要さんの一番にはなれないんだろうと思う。
そんなこと分かっていた筈なのに、傍に居られるだけでいいなんて思っていた筈なのに。
今だけじゃなくて、いつか私のことだけを見て欲しいって思ってしまう。
要さんのことを好きになればなるほどドンドン欲張りになっていく。
そのクセ、どうしても、自分に自信なんか持てない私は、こうやって悪い方にばかり考えて、一人落ち込んでしまうのだった。
♪゜・*:.。. .。.:*・♪
「美菜」
考えても仕方のないことに囚われてしまってた私は、要さんの低くて落ち着いた優しい声によって、漸く我に返ることとなった。
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