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煌めく未来へ

#3

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すると、ハッとした要さんが、何やら思案するような表情になってすぐ、何かを思い出したような、思いついたような、そんな表情を浮かべたかと思った次の瞬間には、

「……譲だな? あいつ余計なことを……」

独り言ちるようにそういって、ふうと大きな溜息を零した要さん。

――本当のことだったんだ。ずっと信じてたのに、バカみたい。

「……やっぱり、そうだったんだ。……私のことなんて、好きじゃなかったんだ……」

ただただショックでしかなかった私は、さっきまでの勢いなんてどこへやら、無意識にそんなつぶやきを零しながら、要さんの襟首から手をだらりと離し、溢れくる涙もそのままに、茫然自失の状態に陥ってしまったのだけれど……。

すぐに、要さんからは、私のことをなんとか納得させようと、次々に言葉がかけられるのだった。

「違う。そんな訳ないだろう? 俺はもう、美菜が居ないと生きていけないくらい、美菜のことを愛してる。その気持ちに断じて嘘はない」

「ウソッ!そんなの口でなんとでも言えるじゃないですかっ。もういいです」

でも、そう思い込んじゃってる私は、要さんに何を言われても、私のことを丸め込もうとしているようにしか聞こえないから、はい、そうですか、なんて、当然納得なんてできない。

それでも、要さんは、なんとかして誤解を解こうとするかのように必死になって、事の詳細を話し始めて。

「だから、そうじゃないって言っているだろう? 分かった。信じられないっていうなら、ちゃんと薬のことも説明する。確かに、美菜が入院してた時に、譲に心配されて診察を受けて薬ももらったが。そんなもの、断じて使っていない。

あの日、美菜に好きだと言ってもらえて、俺のものになりたいって言ってもらえて。けど正直、デキるか不安だったし。美菜にガッカリされるのが怖くて。焦れば焦るほど勃たなくて、一瞬使おうかと思ったのは事実だが……。知ってるだろう? あの後、すぐに美菜のお陰で元気になって。まぁ、結局は、美菜に無理させられないと中断したが、それでもなかなか収まりがつかないほど、あんなに元気に勃っていたじゃないんか。あの後、バスルームで美菜に――」

「すっ、ストーップッ!!」

あろうことか、私が要さんのアレの処理を手伝ったことまで細かく説明しようとしだした要さん。

慌てた私は、泣くのも忘れて、要さんの暴走をなんとかして止めようと、大きな声を出すのが精いっぱいだった。
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