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01 俺は姫プレイがやりたい
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──国民的RPGがVRMMOに参戦!
某月某日、午前0時。
SNSが一色に染まる。
***
「あ~……そろそろ寝るかぁ~」
俺──上月千尋は、少し眠くなった目を擦り、ふぁ~っと欠伸をする。
それまでダラダラとやっていたSNSを閉じようとしたが、その指がピタリと止まった。
とあるゲーム会社の新着告知が目に入ったのだ。
「……は? VRMMぉおおお!?」
突然もたらされた情報に脳みそが追いつかない。
追いつかないが、休息を求めていた脳が覚醒したことだけは分かる。
俺は反射的にリンクをタップし、サイトへ飛んだ。
公式サイトを開くとムービーが流れ出す。
魅力的なキャラクター達がクルクルと動き回っている。
綺麗な背景、音楽、戦闘システム、壮大なストーリーを思わせるキャッチコピーの数々。
どれを取っても面白そうだ。次々と公開される情報に触れる度に、心は踊り期待値も高まっていく。
長年オフラインゲームを作っていた老舗メーカーが、VRオンラインゲーム制作を発表した。
賛否両論。色んな意見が出た。楽しみだという声がある一方で、駄作になるんじゃないかと囁かれたりもした。
期待と失望が入り交じり、SNSでもずっと話題が尽きなかった。
そうして待ちに待った発売日。
ゲームアクセスがあまりにも多すぎて、ログイン制限がかけられた。
日に日に増すアクセス数。SNSでは「ログイン出来ないぞ!」と言う声があちらこちらで見受けられた。
メーカーの予想を遥かに上回る反響だった為か、発売数日でサーバー強化を余儀なくされたのだった。
『ドラディル・ファンタジー・オンライン』
略して『DFO』
制作発表があったあの日以来、ずっと楽しみにしていた俺は、連日のログイン戦争を何とか勝ち取りながら遊びまくった。ハマりにハマった。休日に一日中プレイするのは、もはや当たり前だった。
俺の学生生活はDFOに捧げたと言っても過言ではない。捧げすぎて大学を留年したほどだ。
両親は呆れ、姉からは怒られた。
──あれから五年。
俺のメイン職業<戦士>のレベルはカンストしたし、発売当初にあった情熱も落ち着きを見せつつあった。
発売日からずっと遊んでいる先行攻略組──通称ガチ勢ともなると、ゲームのアップデートが無いと正直やることも少ない。
そんな時にDFOが五周年記念として、一度だけ性別や体格、プレイヤーの名前を変更できる課金アイテ厶を追加したのだ。
(性別変更可能か……へぇ~……あー、ちょうど良いと言えば良いか?)
マンネリを感じていたゲーム生活に変化が欲しいと感じていた。
更に理由を付け足すならば春から新生活も始まるので、ゲームのプレイスタイルも変更せざるを得ない。
そろそろ今までのような空き時間全てをゲームに注ぐ生活はもう出来ないと思っていた所だった。
(……よし!)
俺はその場でガチ勢からエンジョイ勢へと転身することを決める。
善は急げとばかりにゲームへログインし、課金アイテムを購入。
アイテムを使うと目の前に広がっていたゲームフィールドから、キャラクターメイキング空間へと移動する。
ピピピッとウインドウを次々とタップし、メイキングを行っていく。
俺はムキムキの男キャラから女キャラに変えることにした。
髪はピンク色のツインテール。
瞳の色はエメラルドグリーン。
体格は小さめの少女サイズをチョイス。
色んな角度からチェックし、バランスを整える。
「うむ。可愛い!」
──ちなみに女キャラに変えたのは理由がある。
「やってみたかったんだよな~! 姫プレイ!」
姫プレイとは、主にオンラインゲームで女性キャラクターが、周りにチヤホヤともてはやされ、プレゼントを貰ったり、攻略をほぼ人に任せておんぶ抱っこ状態でプレイしていくスタイルのことを指す。
イメージとしてはオタサーの姫に近いもの……と言ったら伝わるだろうか?
キャラ性別が『女』というだけで、中身の性別も『女』と限らないのに、貢ぐ奴なんているのか? と思っていたが身近にいた。
俺のフレンドも女の子に貢いでいたのである。
フレのお気に入りの女の子は、可愛くおねだりするだけで、レアな装備やアイテムを手に入れていた。
フレンドとパーティー組んで、高い回復薬をいくつも買って、何度も倒されながら少しずつ攻略を進め、ボスを倒し、やっと手に入れたアイテムを『おねだり』であっさり貰っていく可愛い女の子。
おねだりしただけでアイテム貰えるとかチョロすぎない?
今までの俺の時間は何だったの?
俺も『おねだり』してアイテム貰いたい。楽がしたい。
レッツスローライフ! ……ん? ちょっと違うか?
「さてと、姫の名前どうしよう? うーん……ゲームは昔からずっとチヒロでやってるし……思いつかねぇ……チロでいっか!」
ピピッと名前を入力して最終チェック。
見た目良し! 名前良し! うん。問題ないな。
俺はウインドウに表示された確認ボタンを連打する。
キャラメイク空間から移動し、俺の目の前にゲームフィールドが広がっていく。
さーて! いっちょ貢がれプレイ始めますか!
某月某日、午前0時。
SNSが一色に染まる。
***
「あ~……そろそろ寝るかぁ~」
俺──上月千尋は、少し眠くなった目を擦り、ふぁ~っと欠伸をする。
それまでダラダラとやっていたSNSを閉じようとしたが、その指がピタリと止まった。
とあるゲーム会社の新着告知が目に入ったのだ。
「……は? VRMMぉおおお!?」
突然もたらされた情報に脳みそが追いつかない。
追いつかないが、休息を求めていた脳が覚醒したことだけは分かる。
俺は反射的にリンクをタップし、サイトへ飛んだ。
公式サイトを開くとムービーが流れ出す。
魅力的なキャラクター達がクルクルと動き回っている。
綺麗な背景、音楽、戦闘システム、壮大なストーリーを思わせるキャッチコピーの数々。
どれを取っても面白そうだ。次々と公開される情報に触れる度に、心は踊り期待値も高まっていく。
長年オフラインゲームを作っていた老舗メーカーが、VRオンラインゲーム制作を発表した。
賛否両論。色んな意見が出た。楽しみだという声がある一方で、駄作になるんじゃないかと囁かれたりもした。
期待と失望が入り交じり、SNSでもずっと話題が尽きなかった。
そうして待ちに待った発売日。
ゲームアクセスがあまりにも多すぎて、ログイン制限がかけられた。
日に日に増すアクセス数。SNSでは「ログイン出来ないぞ!」と言う声があちらこちらで見受けられた。
メーカーの予想を遥かに上回る反響だった為か、発売数日でサーバー強化を余儀なくされたのだった。
『ドラディル・ファンタジー・オンライン』
略して『DFO』
制作発表があったあの日以来、ずっと楽しみにしていた俺は、連日のログイン戦争を何とか勝ち取りながら遊びまくった。ハマりにハマった。休日に一日中プレイするのは、もはや当たり前だった。
俺の学生生活はDFOに捧げたと言っても過言ではない。捧げすぎて大学を留年したほどだ。
両親は呆れ、姉からは怒られた。
──あれから五年。
俺のメイン職業<戦士>のレベルはカンストしたし、発売当初にあった情熱も落ち着きを見せつつあった。
発売日からずっと遊んでいる先行攻略組──通称ガチ勢ともなると、ゲームのアップデートが無いと正直やることも少ない。
そんな時にDFOが五周年記念として、一度だけ性別や体格、プレイヤーの名前を変更できる課金アイテ厶を追加したのだ。
(性別変更可能か……へぇ~……あー、ちょうど良いと言えば良いか?)
マンネリを感じていたゲーム生活に変化が欲しいと感じていた。
更に理由を付け足すならば春から新生活も始まるので、ゲームのプレイスタイルも変更せざるを得ない。
そろそろ今までのような空き時間全てをゲームに注ぐ生活はもう出来ないと思っていた所だった。
(……よし!)
俺はその場でガチ勢からエンジョイ勢へと転身することを決める。
善は急げとばかりにゲームへログインし、課金アイテムを購入。
アイテムを使うと目の前に広がっていたゲームフィールドから、キャラクターメイキング空間へと移動する。
ピピピッとウインドウを次々とタップし、メイキングを行っていく。
俺はムキムキの男キャラから女キャラに変えることにした。
髪はピンク色のツインテール。
瞳の色はエメラルドグリーン。
体格は小さめの少女サイズをチョイス。
色んな角度からチェックし、バランスを整える。
「うむ。可愛い!」
──ちなみに女キャラに変えたのは理由がある。
「やってみたかったんだよな~! 姫プレイ!」
姫プレイとは、主にオンラインゲームで女性キャラクターが、周りにチヤホヤともてはやされ、プレゼントを貰ったり、攻略をほぼ人に任せておんぶ抱っこ状態でプレイしていくスタイルのことを指す。
イメージとしてはオタサーの姫に近いもの……と言ったら伝わるだろうか?
キャラ性別が『女』というだけで、中身の性別も『女』と限らないのに、貢ぐ奴なんているのか? と思っていたが身近にいた。
俺のフレンドも女の子に貢いでいたのである。
フレのお気に入りの女の子は、可愛くおねだりするだけで、レアな装備やアイテムを手に入れていた。
フレンドとパーティー組んで、高い回復薬をいくつも買って、何度も倒されながら少しずつ攻略を進め、ボスを倒し、やっと手に入れたアイテムを『おねだり』であっさり貰っていく可愛い女の子。
おねだりしただけでアイテム貰えるとかチョロすぎない?
今までの俺の時間は何だったの?
俺も『おねだり』してアイテム貰いたい。楽がしたい。
レッツスローライフ! ……ん? ちょっと違うか?
「さてと、姫の名前どうしよう? うーん……ゲームは昔からずっとチヒロでやってるし……思いつかねぇ……チロでいっか!」
ピピッと名前を入力して最終チェック。
見た目良し! 名前良し! うん。問題ないな。
俺はウインドウに表示された確認ボタンを連打する。
キャラメイク空間から移動し、俺の目の前にゲームフィールドが広がっていく。
さーて! いっちょ貢がれプレイ始めますか!
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