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こんなところで会うなんて……
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「散々母親の剛勇ぶりを見て育ったから妻には淑やかな女性がいいそうだ。我が娘は王妃のようにすぐ力で解決をするような乱暴者ではないというのにまったく失礼な……」
「剛勇? 乱暴者? あの……いったい何の話をなさっているので……」
侯爵の言っている意味が分からずレイモンドは戸惑った。
式典や夜会で見た王妃の姿と侯爵の言う王妃の話が結びつかない。
「だから王妃(妹)の話だ。あれは昔から凶暴でな、敵意を向けてくる相手にはすぐ手を出す。家庭教師のおかげで淑女らしくなったものの性根は変わっておらぬ。そんな粗暴な女に比べてシスティーナは敵意を向けてくる相手に手など出さず口でやり込めるというのにいっしょくたにしないでほしいものだ」
「王妃様が凶暴……? あの、スズランの花のようだと謳われた楚々として可憐な王妃様が……?」
レイモンドが見た王妃は儚げで清楚な美人であった。それこそ“凶暴”などという言葉がこの世で一番似合わないのではないかというほどに。
「確かにそう言われておるが、あれはスズランには毒があるからだ。見た目に騙されていると痛い目にあうと言う意味でつけられた皮肉だよ」
「そ、そうなのですか……?」
自分が聞いていい話なのか、これは?
いきなり王妃の性根を暴露されるという展開にレイモンドは酷く困惑した。
ただの世間話程度のつもりだったし、妻の話をしただけなのにどうしてこんなことを聞かされているのか……。
「えーっと……、すみません義父上、少々厠に行って参ります……」
「ん? ああ、分かった」
これ以上こんな場所で王妃の秘密のような情報を聞かされるのは精神的に辛い、とレイモンドは席を外すことにした。彼等が今いる場所は麓にある建物で、元は古びた宿屋として使っていたものをベロア侯爵が買い取って待機所として使いやすいように改修した。
「ものすごい事を聞いてしまったな…………」
厠を出た後、もう少し気分を落ち着かせてから戻るかと建物の外へと向かう。
入り口の扉を開け、外へと出た瞬間突然誰かに名を呼ばれた。
「レイ!」
声のする方へ顔を向けると、そこには幼馴染の一人が立っていた。
「え……メグ? どうしてここに……?」
まさか鉱山というおよそ女性が立ち入らないであろう場所で会うとは思わずレイモンドは唖然とした。たまたまや偶然で会うような場所ではない。
「レイに会いたくて……わざわざここまで来たのよ? だって邸は貴方の怖い奥さんが入れてくれないから……」
同情を誘う様な言い方とシスティーナへの侮辱にレイモンドは腹立たしさを覚えた。
そもそも二度と会わないとわざわざ書状で宣言までしたのに何故顔を見せるのか。
「私の妻を悪く言うのは止めてもらおうか。それより何の用だ?」
もう幼馴染といえども距離感を間違えないと決めている彼の口調は冷たかった。
親しさの欠片も無いレイモンドの反応にメグはショックを受けたように顔を引きつらせる。
「え? え……? な、なんでそんなに冷たいの……レイ……」
「妻の悪口を聞かされていい気などしない。そんな簡単なことも分からないのか?」
記憶にある優しい彼の表情とは全く違った怒りの形相にメグはショックで眩暈がした。
幼い頃からずっと想い続けてきた優しい彼が自分にこんな顔をするなんて……。
「剛勇? 乱暴者? あの……いったい何の話をなさっているので……」
侯爵の言っている意味が分からずレイモンドは戸惑った。
式典や夜会で見た王妃の姿と侯爵の言う王妃の話が結びつかない。
「だから王妃(妹)の話だ。あれは昔から凶暴でな、敵意を向けてくる相手にはすぐ手を出す。家庭教師のおかげで淑女らしくなったものの性根は変わっておらぬ。そんな粗暴な女に比べてシスティーナは敵意を向けてくる相手に手など出さず口でやり込めるというのにいっしょくたにしないでほしいものだ」
「王妃様が凶暴……? あの、スズランの花のようだと謳われた楚々として可憐な王妃様が……?」
レイモンドが見た王妃は儚げで清楚な美人であった。それこそ“凶暴”などという言葉がこの世で一番似合わないのではないかというほどに。
「確かにそう言われておるが、あれはスズランには毒があるからだ。見た目に騙されていると痛い目にあうと言う意味でつけられた皮肉だよ」
「そ、そうなのですか……?」
自分が聞いていい話なのか、これは?
いきなり王妃の性根を暴露されるという展開にレイモンドは酷く困惑した。
ただの世間話程度のつもりだったし、妻の話をしただけなのにどうしてこんなことを聞かされているのか……。
「えーっと……、すみません義父上、少々厠に行って参ります……」
「ん? ああ、分かった」
これ以上こんな場所で王妃の秘密のような情報を聞かされるのは精神的に辛い、とレイモンドは席を外すことにした。彼等が今いる場所は麓にある建物で、元は古びた宿屋として使っていたものをベロア侯爵が買い取って待機所として使いやすいように改修した。
「ものすごい事を聞いてしまったな…………」
厠を出た後、もう少し気分を落ち着かせてから戻るかと建物の外へと向かう。
入り口の扉を開け、外へと出た瞬間突然誰かに名を呼ばれた。
「レイ!」
声のする方へ顔を向けると、そこには幼馴染の一人が立っていた。
「え……メグ? どうしてここに……?」
まさか鉱山というおよそ女性が立ち入らないであろう場所で会うとは思わずレイモンドは唖然とした。たまたまや偶然で会うような場所ではない。
「レイに会いたくて……わざわざここまで来たのよ? だって邸は貴方の怖い奥さんが入れてくれないから……」
同情を誘う様な言い方とシスティーナへの侮辱にレイモンドは腹立たしさを覚えた。
そもそも二度と会わないとわざわざ書状で宣言までしたのに何故顔を見せるのか。
「私の妻を悪く言うのは止めてもらおうか。それより何の用だ?」
もう幼馴染といえども距離感を間違えないと決めている彼の口調は冷たかった。
親しさの欠片も無いレイモンドの反応にメグはショックを受けたように顔を引きつらせる。
「え? え……? な、なんでそんなに冷たいの……レイ……」
「妻の悪口を聞かされていい気などしない。そんな簡単なことも分からないのか?」
記憶にある優しい彼の表情とは全く違った怒りの形相にメグはショックで眩暈がした。
幼い頃からずっと想い続けてきた優しい彼が自分にこんな顔をするなんて……。
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