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また来たの?
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「あら? 乞食がまた物乞いに来たのね?」
案の定門番に捕縛されて地面に転がされるエーリックをディアナが一瞥する。
その目は相も変わらず路傍の石を眺めるような温度のないものだった。
「ディアナ……まだ怒ってるんだね? 分かるよ、夫が別の女性と愛の逃避行をしたんだもの。君の怒りは正当なものだ……」
やたら自分に酔った口調で語るエーリックに門番は侮蔑の表情を浮かべる。
こいつは何を言っているんだと。
「昨日恵んであげたお金はもう使ってしまったのかしら?」
だがディアナはエーリックの気持ち悪い発言に反応することはなかった。
それはまるで『お前には喜怒哀楽の感情を使う価値もない』と態度で表しているかのよう。
その温度のない表情に流石のエーリックも背筋が寒くなり、慌てて謝罪し始めた。
「ご、ごめんねディアナ! あの、僕が君よりドリスを選んだから怒ってるよね? でもそれには理由があって……」
「ドリス……? ああ! 貴方の恋人様ですか? 今日は一緒じゃないんですね?」
「え? あ、うん……やっぱり彼女がいたら君も気分が悪いだろうし……」
「いえ、別にそんなことはありませんよ? それよりまたお金が欲しいのですか?」
「い、いや僕は……君と夫婦としてやり直そうと……」
「わたくし達は夫婦ではありませんよ? それはそうとして、こうお金を強請りに来られても困るんですよね……。物乞いすればお金が貰えると噂にでもなったら、当家の周りに乞食が増えてしまうではないですか?」
「はっ……? いや……え、え……?」
何を話してもディアナに会話の主導権を奪われてしまうことにエーリックは困惑した。
婚約していた頃、ディアナはこちらの話をただ聞くだけの物静かな令嬢だったはず。
こんな、歯に衣着せぬ物言いなんて決してなかったはずだ。
案の定門番に捕縛されて地面に転がされるエーリックをディアナが一瞥する。
その目は相も変わらず路傍の石を眺めるような温度のないものだった。
「ディアナ……まだ怒ってるんだね? 分かるよ、夫が別の女性と愛の逃避行をしたんだもの。君の怒りは正当なものだ……」
やたら自分に酔った口調で語るエーリックに門番は侮蔑の表情を浮かべる。
こいつは何を言っているんだと。
「昨日恵んであげたお金はもう使ってしまったのかしら?」
だがディアナはエーリックの気持ち悪い発言に反応することはなかった。
それはまるで『お前には喜怒哀楽の感情を使う価値もない』と態度で表しているかのよう。
その温度のない表情に流石のエーリックも背筋が寒くなり、慌てて謝罪し始めた。
「ご、ごめんねディアナ! あの、僕が君よりドリスを選んだから怒ってるよね? でもそれには理由があって……」
「ドリス……? ああ! 貴方の恋人様ですか? 今日は一緒じゃないんですね?」
「え? あ、うん……やっぱり彼女がいたら君も気分が悪いだろうし……」
「いえ、別にそんなことはありませんよ? それよりまたお金が欲しいのですか?」
「い、いや僕は……君と夫婦としてやり直そうと……」
「わたくし達は夫婦ではありませんよ? それはそうとして、こうお金を強請りに来られても困るんですよね……。物乞いすればお金が貰えると噂にでもなったら、当家の周りに乞食が増えてしまうではないですか?」
「はっ……? いや……え、え……?」
何を話してもディアナに会話の主導権を奪われてしまうことにエーリックは困惑した。
婚約していた頃、ディアナはこちらの話をただ聞くだけの物静かな令嬢だったはず。
こんな、歯に衣着せぬ物言いなんて決してなかったはずだ。
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