追放された元勇者パーティーの最強魔術師、魔族の少女を拾って無双する

はる

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第1章 出会い

決戦! レッドドラゴン!

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「グルアアアアアアァァァァァァ――――ッ!」

 ロザリアの〈獄炎インフェルノ〉を受けたレッドドラゴンは、敵がいると察知して、戦闘態勢に入った。
 見たところ、ダメージが通ったようには見えなかった。鱗が少し焦げたくらいか。
 そうですよね! もしかしたら、一撃で終わるかもと思ってたけど、そんなことはありませんでした!

 くそ! あの馬鹿ロザリアが余計なことをしなければ、俺の一撃で倒せていたのかもしれないのに! 
 隣にいるアセロラは……ほれ見ろ! 思いっきりびっくりして固まってんじゃねぇか! 俺も思考停止してぇよ! どうしてくれるんだ!

「あれ? 死んでないな? おっかしいなぁ」

「お前の頭がおかしいんじゃ!」

「いだぁ――ッ!」

 むかついた俺は思いきりロザリアの頭を引っぱ叩いた。俺にぶたれたロザリアは目に涙を浮かばせながら、頭を手で押さえる。

「痛いわねッ!? 何するのよ――ッ!?」

「こっちが何するのよだわ! なんで〈獄炎インフェルノ〉を撃ったんだよ! 散々レッドドラゴンには火属性は効かないと言っただろ!」

「だって倒せると思ったんだもん!」

「思ったもんじゃねぇ! 火に火をぶつけたところで何も変わらないのくらいわかるだろッ!」

「もっとよく燃えるじゃない!」
 
 誰もそんなことを訊いてねぇよ! いや、確かにそうだけどさぁ。俺の例えが悪かったか? ――って、そんなことは、どうでもいいんだよッ!
 レッドドラゴンに視線を向けると、今まさにブレスを放とうとしているところだった。

「ちぃ――ッ! めんどくせぇッ!」

「ふぇ――ッ!?」

「ちょ――ッ! どこ触ってるのよッ!」

 俺は速攻で〈身体強化フィジカルアビリティ〉をかけ、アセロラとロザリアを脇に抱えて、その場から離脱する。
 それとほぼ同時に、俺たちがいた場所に向かってブレスが放たれ、着弾した地面はドロドロと溶け出していた。

 ヤバいな。この個体は以前、俺が戦った個体よりもはるかに強い。俺が戦ったレッドドラゴンは、強いことには強かったが、ブレスもただの火炎放射みたいなもので、一度当たったくらいでは、致命傷には成り得なかった。
 だが、今回のブレスは地面を一瞬でマグマに変えるほど高温なものだ。致命傷どころの話ではない。一発でも食らえば、痛みを感じる前に溶けてしまうだろう。折角、金を払ってまで買ったエリクサーも、これでは意味がない。
 ちっ、使いたくなかったが、仕方ないか。

「……念のため、防御魔法を張っておく。気休め程度にはなるだろ」

 俺はロザリアたちに手をかざして魔法を唱える。かざした俺の手から淡白い光が漏れ出し、ゆっくりと二人を包んでいく。そして、一瞬だけ眩しい光に包まれる。防御魔法が張られた合図だ。
 これで、危険な攻撃でない限り、数回くらいは耐えれるだろう。一応、火属性に対する耐性を上げているのだが、あのブレスを見た限り、意味がないかもしれない。だが、ないよりかはマシなはずだ。
 
「ロザリアッ! お前は正面から魔法を撃って、奴の気を逸らしてくれ! 俺たちはその隙に背後に回り込む!」

「わかったわ! 止まれッ! 〈闇夜の吐息ダークネスブリンガー〉――ッ!」

 ロザリアは俺と軽く目配せをした後、レッドドラゴンに向かって、闇属性の魔法を放った。当然、最高火力の最上級魔法だ。
 火属性の魔法では怯みさえしなかったレッドドラゴンだったが、今度の攻撃はしっかりと効いており、巨大な翼で体全体を覆い、防御の姿勢に入っていた。
 その隙に、俺はアセロラを担ぎ上げ、全力でレッドドラゴンの背後に走り込んだ。

 だが、レッドドラゴンはロザリアだけではなく、俺たちの動きまで、視野に入れていた。
 レッドドラゴンは走っている俺に向かって、体は動かさず、器用に尻尾だけを動かして、俺の進行を止めようとしていた。だが、それでは俺を止めることはできない。

「甘いんだよ! 〈障壁プロテクト〉――ッ!」

 俺は自身の盾となる〈障壁プロテクト〉を少し斜め――面が空に向くようにして、地面に当たるスレスレの位置に展開させる。同時に、自分の姿勢も、できる限り低くする。
 あれほどの巨体となれば、流石の俺でも正面から物理攻撃を受けれるとは限らない。だから、俺は奴の攻撃を逸らすことにした。
 レッドドラゴンの尻尾が当たるまで刹那。そして、ぶつかるときが来た。

 賭けは俺の勝ちのようだった。奴の尻尾が〈障壁プロテクト〉と当たると同時、なぎ払いの軌道は地面スレスレの位置だったものが、少し上――つまり、〈障壁プロテクト〉の上部と同じくらいの高さのものに変わった。
 もの凄い風が俺たちに襲いかかり仰け反りそうになったが、尻尾が当たることを考えたら楽なものだ。俺は〈身体強化フィジカルアビリティ〉で強化された足で踏ん張り、吹っ飛ばされないようにした。

 不意にレッドドラゴンと視線が合う。心なしか、どこか驚いているように見える。まさか、避けられると思ってもいなかったのだろう。ざまあみろ。
 そして、俺は気づいた。今こそレッドドラゴンに隙ができたということに。よし、やるなら今だな。
 俺は空いている左手をレッドドラゴンの頭部に向け、撃つべきだった〈紫電の槍ライトニング・スピア〉を展開する。
 この魔法は本来、雷属性だけで速度が速いものだったが、いざというとき、相手に致命傷を与えることができなかった。だから、俺はこの魔法に光属性の特徴も織り交ぜ、貫通力も付与し、高速で高威力――一撃必殺と言える魔法に仕上げた。

「この位置なら外さない。食らえッ! トカゲ野郎ッ! 〈紫電の槍ライトニング・スピア〉――ッ!」

 俺の左手から一瞬だけ眩く光る。魔法が起動した証拠だ。〈紫電の槍ライトニング・スピア〉は〈身体強化フィジカルアビリティ〉をしていない限り、目視で追えるものではない。アセロラから見れば、ただ光ったかのようにしか見えなかっただろう。
 だが、俺が持てる最高ともいえる魔法でも、レッドドラゴンの鱗を一撃で貫けるとは思っていない。多少、何発かは撃つ必要があると考えていた。

 とりあえず、一撃は入れられたな。残りの魔力を考えても、あと十発程度で仕留められたら――

「ガ――ッ!?」

 俺が魔法を放ったと同時――そろそろ着弾した時間――、レッドドラゴンは短い悲鳴を上げた。そして――

「「「え――?」」」

 そのまま倒れ込んだ。え? 何が起こった?

「アベル……コイツ、死んでるよ……?」

 え? マジで? だってコイツ、レッドドラゴンだぞ? 最強のドラゴンに近い奴だぞ? 流石の俺でも一撃では――

「あっ――」

 あっ、そういえば。俺がレッドドラゴンを倒したのって……





――の時だったわ――
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