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第1章 出会い
魔術師アベル、過去を振り返る
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……うん、まぁ……あれだ。うん、あれだ。うん……←(何言っているんだ? 自分でもよくわからない)
いや、確かにレッドドラゴンを倒したのは十二歳の時だったけどさぁ……まさか、魔法一発で沈むとは思うわけないじゃん!
流石に五年だけでレッドドラゴンを倒せる実力はつかないだろ。流石の俺でも。自分でも最強と自負するほどだけど。
うーん、何が原因なんだ? 俺をここまで強くしたのは? まさか、勇者パーティーにいたおかげか?
いや、それはないな。だって、あのクソパーティーは結成した当初から、俺のことを疎ましく思っていたからな。結成されて旅に出たその瞬間から、俺とクソ勇者どもに分けられていた。勇者パーティーだというのに。パーティーって、みんなで協力するものだろ? だが、こいつらは違ったんだ。
俺たちは勇者パーティーとして活動していたが当然、魔王軍の魔族だけを倒しているだけでは、生きていくための収入が足りない。だから、必然として、ギルドに張り出されている一般的に依頼も受けなければならなかったのだ。
その時からだ。俺とクソどもに分けられた勇者パーティーの特徴が謙虚に表れたのは。
俺たちは強大な敵……今日受けたレッドドラゴンや魔族などは一つのパーティーとして機能していた。俺のサポートがなければ勝てないからな。まぁ、クソどもが、そのことに気付いていたとは思えないが。
どうせ、勇者パーティーの面目を保つだけだったと思う。パーティー全員がそろってないのは、どうしてだと、誰もが疑問に思うからでだろう。だって、勇者パーティーだもの。
一応、貴族の端くれとして、そのことは考えていたのだろう。クソ野郎だが、そういうところだけは、よく頭が回る。そのおかげで、俺がパーティーを抜けるまで、生き抜くことができたのだから。
で、だ。その強大な敵以外……まぁ、普通の任務だな。生活費を稼ぐためだけの依頼だ。その依頼の時は二つのパーティーに分かれて、任務が行われた。どう分けられたかはわかるよな?
まぁ、そのパーティーで任務をこなしていくわけだが、この雑魚勇者はほとんど任務を受けない。汚れるからだって。ふざけんな。女どもと遊んでいるくせに。
そこからは想像できるだろう。そんなクソども四人を養うために、俺は普通の依頼だけでは食っていけないと悟ったのだ。あっ、正確には三人か。一応、エリスは働いていたか。一応、真面目だったからな。クソだけど。
だが、それでは収入は足りない。だから俺は文字通り命をかけて、魔物の討伐にかかったのだ。低ランクではない、正真正銘の化け物を相手に。
レジェンドウルフ、キマイラ、ヒュドラ……様々な魔物を相手にした。
当然、一度では倒すことはできなかった。だから、俺は相手の特徴を少しでも読み取ろうと努力した。
敵の基本的な動き。攻撃方法。絶対に受けないようにしている自身の弱点などを、ひとつ残らず観察した。そして、何度も繰り返し、己を磨いていた。その年、約五年。
そのおかげで、俺は自分でも最強と名乗っても恥ずかしくないくらいの実力をつけたのだ! ……あれ? レッドドラゴンを倒せたのって、これが原因じゃね? 解決してるじゃん。
「……ベル! アベルッ!」
はい、現実逃避のお時間は終わりです。現実に目を向けましょう。
俺の肩を揺すって声をかけているのは、俺の今のパーティーメンバーであるアホの子ロザリアだ。彼女はびっくりした表情のまま、レッドドラゴンを指さしている。
「なんだよ。人がせっかく、いい夢を見ていたのに……」
「いや、寝てないでしょ……じゃない! 何よあれッ! どうしてレッドドラゴンが倒れてるのッ!?」
「どうしてって、俺が倒したからだろ?」
「そんなのわかってるよッ! 私が聞きたいのはそれじゃないッ!」
いや、どうして倒れてるのって言ってるじゃん。それで怒られるって理不尽じゃね?
「どうして、あなたがあんな魔法を撃てるのよッ! 竜の鱗を貫通できる魔法って……下手したら、おと――じゃない、魔王でもできないよ――ッ!?」
ロザリアは手を激しく振って、文句を言ってくる。
ロザリアさん。あなた、口調が乱れて余計に子供っぽく聞こえますよ? もしかして、そっちが本来の口調ですか? どっちでもいいけど。
てか、俺って魔王でもできないことをやってのけたの? じゃあ、もしかしたら、俺一人で魔王を倒せちゃったり?
でも、もう魔王を倒す必要はないしなぁ。ロザリアも送り届けるつもりだし。それで魔王を倒したら、それこそ不味いことになりそうだ。
「まぁ、あえて言うなら…………努力のおかげかな?」
「……はぁん? アベル、ふざけてるの?」
眉を寄せて、ガチギレした返事を漏らすロザリア。えぇ、ホントのこと言ったのに……。理不尽だ。
そこから俺はなんとかロザリアに納得してもらい、レッドドラゴン討伐の報告をするため、レッドドラゴンの鱗を一枚はがして、ギルドに引き返すのであった。
……未だに目を見開いて固まっているアセロラを引っ張って。
いや、確かにレッドドラゴンを倒したのは十二歳の時だったけどさぁ……まさか、魔法一発で沈むとは思うわけないじゃん!
流石に五年だけでレッドドラゴンを倒せる実力はつかないだろ。流石の俺でも。自分でも最強と自負するほどだけど。
うーん、何が原因なんだ? 俺をここまで強くしたのは? まさか、勇者パーティーにいたおかげか?
いや、それはないな。だって、あのクソパーティーは結成した当初から、俺のことを疎ましく思っていたからな。結成されて旅に出たその瞬間から、俺とクソ勇者どもに分けられていた。勇者パーティーだというのに。パーティーって、みんなで協力するものだろ? だが、こいつらは違ったんだ。
俺たちは勇者パーティーとして活動していたが当然、魔王軍の魔族だけを倒しているだけでは、生きていくための収入が足りない。だから、必然として、ギルドに張り出されている一般的に依頼も受けなければならなかったのだ。
その時からだ。俺とクソどもに分けられた勇者パーティーの特徴が謙虚に表れたのは。
俺たちは強大な敵……今日受けたレッドドラゴンや魔族などは一つのパーティーとして機能していた。俺のサポートがなければ勝てないからな。まぁ、クソどもが、そのことに気付いていたとは思えないが。
どうせ、勇者パーティーの面目を保つだけだったと思う。パーティー全員がそろってないのは、どうしてだと、誰もが疑問に思うからでだろう。だって、勇者パーティーだもの。
一応、貴族の端くれとして、そのことは考えていたのだろう。クソ野郎だが、そういうところだけは、よく頭が回る。そのおかげで、俺がパーティーを抜けるまで、生き抜くことができたのだから。
で、だ。その強大な敵以外……まぁ、普通の任務だな。生活費を稼ぐためだけの依頼だ。その依頼の時は二つのパーティーに分かれて、任務が行われた。どう分けられたかはわかるよな?
まぁ、そのパーティーで任務をこなしていくわけだが、この雑魚勇者はほとんど任務を受けない。汚れるからだって。ふざけんな。女どもと遊んでいるくせに。
そこからは想像できるだろう。そんなクソども四人を養うために、俺は普通の依頼だけでは食っていけないと悟ったのだ。あっ、正確には三人か。一応、エリスは働いていたか。一応、真面目だったからな。クソだけど。
だが、それでは収入は足りない。だから俺は文字通り命をかけて、魔物の討伐にかかったのだ。低ランクではない、正真正銘の化け物を相手に。
レジェンドウルフ、キマイラ、ヒュドラ……様々な魔物を相手にした。
当然、一度では倒すことはできなかった。だから、俺は相手の特徴を少しでも読み取ろうと努力した。
敵の基本的な動き。攻撃方法。絶対に受けないようにしている自身の弱点などを、ひとつ残らず観察した。そして、何度も繰り返し、己を磨いていた。その年、約五年。
そのおかげで、俺は自分でも最強と名乗っても恥ずかしくないくらいの実力をつけたのだ! ……あれ? レッドドラゴンを倒せたのって、これが原因じゃね? 解決してるじゃん。
「……ベル! アベルッ!」
はい、現実逃避のお時間は終わりです。現実に目を向けましょう。
俺の肩を揺すって声をかけているのは、俺の今のパーティーメンバーであるアホの子ロザリアだ。彼女はびっくりした表情のまま、レッドドラゴンを指さしている。
「なんだよ。人がせっかく、いい夢を見ていたのに……」
「いや、寝てないでしょ……じゃない! 何よあれッ! どうしてレッドドラゴンが倒れてるのッ!?」
「どうしてって、俺が倒したからだろ?」
「そんなのわかってるよッ! 私が聞きたいのはそれじゃないッ!」
いや、どうして倒れてるのって言ってるじゃん。それで怒られるって理不尽じゃね?
「どうして、あなたがあんな魔法を撃てるのよッ! 竜の鱗を貫通できる魔法って……下手したら、おと――じゃない、魔王でもできないよ――ッ!?」
ロザリアは手を激しく振って、文句を言ってくる。
ロザリアさん。あなた、口調が乱れて余計に子供っぽく聞こえますよ? もしかして、そっちが本来の口調ですか? どっちでもいいけど。
てか、俺って魔王でもできないことをやってのけたの? じゃあ、もしかしたら、俺一人で魔王を倒せちゃったり?
でも、もう魔王を倒す必要はないしなぁ。ロザリアも送り届けるつもりだし。それで魔王を倒したら、それこそ不味いことになりそうだ。
「まぁ、あえて言うなら…………努力のおかげかな?」
「……はぁん? アベル、ふざけてるの?」
眉を寄せて、ガチギレした返事を漏らすロザリア。えぇ、ホントのこと言ったのに……。理不尽だ。
そこから俺はなんとかロザリアに納得してもらい、レッドドラゴン討伐の報告をするため、レッドドラゴンの鱗を一枚はがして、ギルドに引き返すのであった。
……未だに目を見開いて固まっているアセロラを引っ張って。
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