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アフター・アフター・レイン・トーク
アフター・アフター・レイン・トーク<CXXVI>
しおりを挟む「ん……っ♡」
「ごめん! わざとじゃなかったんだけど……」
ぽよん、とトランポリンのように弾んだ手をどけ、彼は迅速に謝罪を行った。ものすごい勢いだ。
「気にしないで? いまからそういうことするんだし、ここは前も触ってもらったことあるし…………。……あ、でも、わたしもわざとじゃないからね!! いまのはほんとに違うから!!」
「わかってるって♡♡ きみはそんなまどろっこしいことしないで、もっとわかりやすくアピールしてくれる子だってこと、俺はちゃーんとわかってるから♡♡ ……って、話してないで脱がさないと……♡ ボタン、外すよ」
わたしと話すときは句点の代わりにハートマークが付いているのではないかと思うほどに柔らかく甘い口調になる彼だけれど、最後の最後の短い予告からは甘さが取り除かれていた。例えるなら、彼の愛飲しているブラックコーヒーのように。
「…………そう固くならないで?♡ きみのこと取って食べたりなんてしない…………いや、取って食べようとしてるんだっけね♡♡ じゃあ、ちょっとだけ言い方を変えて……♡」
羨ましいくらい綺麗な顔が近付いて、ブラックコーヒーの香りが鼻を掠めた。同い年なのに大人の男の人みたいな落ち着きと色気を漂わせる彼にくらくらした。
「俺がきみのことおいしく食べられるように、リラックスしててくれたら嬉しいなぁ♡♡」
「……食べちゃうのは決定なの……?♡」
「食べちゃうよ♡♡ きみの想像よりはソフトな感じかもしれないけど、いまからね♡♡」
「そっか。…………えっと、どこからでも召し上がれ?♡」
「急かさないで♡ ……というか、『焦らなくていいよ』って言うべきかな?♡ 俺はね、ティータイムに出すようなとっておきの焼き菓子とか、きみがバレンタインにくれるようなお洒落なチョコとかは、ラッピング開けるところも楽しみなの♡♡ 『いただきます』ってする前から始まってるの♡ 食事が♡」
彼が胸の前で両手を合わせたものだから、なんだか画面がごちゃごちゃして、元々密度の高かったスペースの密度がより高くなった。
ぎゅっと抱き合ってぴたっとくっついているより照れくさいのは、これから始まる行為を想像させるような台詞のわりに、彼自身の感情がいまいち見えてこないからだろうか。
「え…………?」
だって、突然なんの話を始めたのかと思うだろう。
「『急になんの話?』って思ってる? ……ごめんね。でも、無関係なことじゃないから、少し付き合ってほしいな♡♡」
こくりと頷くのと唾液を飲み込んだのと、どちらが先だっただろう。
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