三千世界の鴉なんて殺さなくても、我々は朝を迎えられる

片喰 一歌

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アフター・アフター・レイン・トーク

アフター・アフター・レイン・トーク<CXCIV>

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(お口開けてるとき、閉じてるときと雰囲気変わるなぁ……♡♡ 外国だと縁起悪いみたいに言われちゃうみたいだけど、彼の歯、わたしは好きなんだよね。……向こう行ったら、ついでに治してきちゃったりするのかな。そんな時間ないかな? ……でも、必要だと思ったら、無理矢理時間作ってでも行くひとだよね。頭ではわかってても、好きなひとの好きなパーツが減っちゃうのは、ちょっと寂しいな……)

 確定してもいないことを考えて、気分と一緒に視線が下降していった。

「でも、仮に届かなかったとしても、の話だよね?♡♡」

 わたしが感傷に浸っていることなど知らない彼は、喉の奥から笑いを漏らした。

「……え?」

「あれ?♡♡ 子宮っていつも同じ位置にあるわけじゃなくて、降りてくることもあるんだよね?♡♡ 他の臓器もそうだと思うけど、その中でもかなり動くほうなんじゃなかったっけ?♡」

「えっと…………たぶん? ……よくわからないけど、動きそう……だよね? 動かないと、中で暴れ回られたときに衝撃がそのままきちゃいそうだし……?」

「赤ちゃんが……ってことだよね?♡♡ それ以外におなかのなかで暴れる者なんていないもんね?♡ きみと俺の赤ちゃんはそんな暴れん坊にはならないと思うけど……♡」

「!」

 照れて引っ込めた主語を明らかにされ、顔がぶわっと熱くなった。

(『赤ちゃん』じゃなくて『きみと俺の赤ちゃん』って…………♡♡ 他の人との赤ちゃんなんていらないけど、いまからえっちなことするってときに意識させるようなこと言わないでほしい……♡ ……なるべく考えないようにしてたこと、考えちゃう……♡♡)

 おなかのなかが外側に当てられた彼の手の何倍も熱く感じるだけではなく、他人ひとには言えない考え事と連動して、赤ちゃんの素になるものを求め、蠢動している。

「…………あぁ、ごめんね?♡♡ いまからそういうことされるんじゃないかって思わせちゃったかな。大丈夫、しないから。きみだけ卒業できないなんてことになったら、申し訳ないじゃ済まないし、そのあと離れるのに無責任なことできないから、当分はきっちり避妊するよ。……『当分』じゃ曖昧すぎるかな。『きみが赤ちゃん欲しくなるまで』って言ったほうが安心できそう? 俺は死ぬまできみとふたりっきりでもいいと思ってるけど♡♡ 怖がらせてごめん!」

 おなかをさする手からは性的なニュアンスは失われていたけれど、わたしの脳内にかかった桃色の靄はまだ当分晴れそうになかった。
 
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