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Interlude
Interlude<Ⅸ>
しおりを挟む「…………でもさ、当日も大事だけど、プレゼントも同じくらい大事だよね。……あ、これあげる。自信作♡」
彼は大学いもをわたしのお弁当に乗せた。ひとつではなくカップごと。空いたスペースに埋め込むようにして。
「ありがと。いちばん最後に食べるね」
はじめてもらったとき、あまりのおいしさに感激して大絶賛したのがよほど嬉しかったのか、たまに作ってきてくれるそれは、だんだん増量している気がしないでもない。
「大事だけど、プレゼントも当日に渡すものじゃないの?」
通勤ラッシュの満員電車よろしく密度の高い黄金の輝きから視線を前に戻し、会話に復帰する。
「渡すのは当日だけど、前もって準備しとかないと当日には渡せないでしょ? 一日二日で用意……できる人もいるのかもしれないけど、俺にはちょっと難しいかな。『いいな』って思うもの見つけても、『もっといいものがあるんじゃないかな?』って考えて、なかなか決まらなかったりして」
贈った相手に心から喜んでもらえるものを選ぶことを最重要視しているのだろう。思いやりに溢れた彼らしい言葉だ。
「……あ、そっか! 点じゃなくて線なんだね? 特別なのは当日だけじゃない……みたいな?」
なるほど、と膝を打つ。
「そう。そんな感じ。クリスマスって期間全体でクリスマスというか……。アドベントカレンダーとかシュトレンとかさ、最近だとこっちでも浸透してきた文化で考えるとわかりやすいんじゃないかと思うけど、その日一日…………いや、イブと合わせて二日かな?」
彼がこちらに同意を求めてきたので、うんうんと頷いた。
「その二日間だけが特別ってわけじゃなくて、当日を迎えるまで『まだかなまだかな』って待ち遠しく思ってる期間とか気持ちとかも含めて、クリスマスなんじゃないかなと俺は思うんだよね。渡したときのこと考えてわくわくしながらプレゼント選んで……っていうのも、それに似てる気がして」
続く質問に身構えてしまったのは、わたし自身もわかっていないせいだ。――――わたしの欲しいものを。
雑誌を見れば、どれもこれも気になって、『いいなぁ』、『これ欲しい』と思えるのに、その気持ちは持続しない。一過性のものだ。
店頭で現物を見てがっかりするとかではなく、ひと目見れば満足してしまう。
(やっぱり物とかじゃなくて、一緒にいる時間のほうが欲しいし嬉しいなぁ。物じゃないし、忙しいひとだから、面と向かってお願いできないけど。……この調子で、プレゼントの希望とか訊かれたら困っちゃうなぁ。もらう前提でいるのも図々しいけど、あの話しぶりだと、たぶん…………)
ちらりと窺った彼の瞳には、あたたかい光が灯っていた。
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