196 / 489
HONEYDEW RAIN
HONEYDEW RAIN<LXVII>
しおりを挟む(君は弱音なんて吐く人じゃないのに……。わたしにだっていつもは言ってくれない君が『泣き言言っちゃうかも』なんてわざわざ伝えてくるってことは絶対平気じゃないでしょ? いつも『頼って』って言うくせに、君のほうは頼ってくれないね……。わたしが頼りないせいだってことはわかるけど)
「『絶対平気じゃないくせに』って思った?」
苦笑いを浮かべた彼は、わたしのもやもやした気持ちを言い当てた。
「ごめん、思った…………。あと、『こっちはこっちでスルーできないかも』って」
「……大当たり。全然大丈夫じゃないよ、俺。いまだって衝撃すぎて、ぶっ倒れてないのが不思議って感じ。……でも、きみの意見を尊重するなんて言っておいて、最初からこっちに付き合わせる気満々だったって早い段階で気付けてよかったんだ、って思うべきかもね」
「…………わたしがそばにいなくて本当に平気?」
「平気じゃないよ、少しも。……でも、平気にしないと。数年間そばにいないくらいでダメになるような男は、きみにふさわしくないよ」
大きな瞳をぎゅっと瞑り、再び開いた彼は躊躇うことなく言い切った。
(それを言うなら、数年離れるだけでだめになる女だって君の相手にはふさわしくない……)
胸が不吉にざわめいたのは、なんだかんだ言って平気でないのは彼でなくわたしのほうだという確信に似た予感をおぼえていたから。
(素敵な人もきみに合う人もわたしの他にいる。……たくさんいる。距離の分だけ心も離れちゃうなんて思ってるわけじゃない。君を疑いたいわけでもない。だけど……)
「もしきみがこっちに残ったとしても、きみとのラブラブ生活が数年後に延びるだけでしょ♡ だから、そのときのために頑張ればいいの♡♡ ……俺がそういうふうに考えたらいいだけ。だから、きみが本当に望むほうを選んでほしいな。望むほう……というか、あとになって振り返ったときに少しでも後悔の少なそうなほうを。納得の行く答えを」
視線に紛れ込んだ不安を感じ取ったのか、彼はもう一度手を握ってくれた。
「…………君みたいな人になれたらなぁ」
「きみが俺みたいになる必要はないよ。……というか、ならないでほしい。俺は俺でいいし、きみはきみでいいんだって。『一緒にいすぎてそっくりになっちゃった』とかは全然ありえると思うけど♡♡」
「何年か離れることになるかもしれないけど、そのあとはずっと一緒にいてくれる……?」
「もちろん♡♡ 悪いけど、きみの未来はぜーんぶ俺がもらうから♡♡」
やはり彼は気が早すぎる。笑いを堪えて頷いたけれど、顔のにやつきは抑えられなかった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる