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HONEYDEW RAIN
HONEYDEW RAIN<LXXI>
しおりを挟む「OK、わかった。謝らない。その代わり、きみも謝っちゃダメ。すごく…………本当に嬉しかったから。きみがもし俺の気を引きたくて、『いま以上の関係になりたい』って意味に聞こえることを言ってたんだとしても構わない。……けど、たぶんそれはない。たぶんというか絶対ないな。おめめもほっぺも真っ赤にして震えてるんだもん♡♡ そんなになってまで伝えてくれた気持ちが嘘なんてはずないよね♡♡」
彼もまたわたしの行動を予測していたようで、先回りされてしまった。
「『君の気を引きたい』みたいなずるい気持ちもあるけど、思ってなかったら言わないし言えない。君は……? 君はわたしとえっちしたくないの?」
それまであえて口にしていなかった単語を出してみた。ずっともじもじしていたけれど、この前咄嗟に取ってしまった行動に比べたら、なんてことはなかった。
「したくないように見える? したいよ。この前きみの身体に触ってからなんてすごくて、勉強が手につかないときとかあるもん。……いまだってそんなうるうるしたおめめで見られてさ、理性吹っ飛ぶ寸前なの。まずいんだって、本当に。襲い掛かってないことを褒めてほしいくらいだよ……」
少しずつ低くなっていく声が、掻き上げた長めの前髪をぐしゃっと握るその仕草が、手の甲に浮き上がった骨と血管が、最後の警告を発している。
「きみになら襲われたいのに……」
それなのに、満たされない思いが口を割り、そして気付く。口を覆っていたはずの手はいつのまにかいなくなっていた。視界を遮るものはなにもない。
「…………ここがきみと俺の愛の巣で、俺が経済力と包容力のある大人の男だったら、このままベッドに直行してたんだけどなぁ♡♡」
ほんの少しだけ余裕を取り戻した様子の彼は、平行気味の眉をわずかに下げて言う。
「自分でなんて歩かせてあげない。ふわふわのタオルで全身ささっと拭いて水気だけ取ったら、素っ裸のきみをお部屋に抱えていって……。たぶん優しく下ろしてあげるとかもできない。ベッドに着いたら投げると思う。そしたら、投げ出されたきみが起き上がる前に上に乗って…………。そのまま突っ込まれちゃうかもしれないんだよ? それでもまだ『襲われたい』って言える?」
「言えるよ。……君はたぶんそんな強引なことできないと思うし、いま言ったとおりのことされてもいい……。じゃなくて、されたい♡」
整った唇から紡がれる妄想はあまりに具体的で、わたしの脳内にも彼の語ったとおりの映像がばっちり出力されてしまった。
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