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嫉妬が止まらない。

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七海の感情の爆発は、よくある事で、それは、甘やかされて育ったお嬢様に良くある事なんだけど、今回は、違った。少し、大人になった姿に、僕は、ハッとしてしまった。いつも、妹のように見ていた。その彼女が、莉子に対して、敵意をむき出しにする姿は、初めて見た。だからこそ、彼女を止めなければ、とんでもない行動に出ると思ったし、今、止めなければ、彼女が僕や彼女の両親に、話を歪曲して伝えると思った。莉子をその場に置いて、行くのは、忍びなかったけど、きっと、藤井先生がカバーしてくれる。僕は、そう思って、七海を追いかけた。
「七海。落ち着いて」
「無理」
「七海。らしくない」
「どこが、私らしい時なんて、見てくれていない」
「見てるさ」
「見ていない。いつも、妹を見る目だった。」
「七海。無理があるんだよ。こんな僕と一緒にいても、幸せになんて、なれない。僕ではないんだ」
「私は、新がいいの」
「ダメだ」
「あんなお人形みたいな人のどこがいいの?何もできない。新の負担が増えるだけでしょ」
「七海。誤解している。彼女は、僕のリハビリを信じているだけで、僕自身を見ている訳ではない。」
僕が莉子を思っているだけで、莉子は、僕を思ってはいない。その時、僕は、そう思っていた。
「彼女を、元の位置に戻すまでだ・・・。もう少し、時間をくれないか?七海。」
七海は、顔をくちゃくちゃにして、泣いていた。
「そしたら、考えてくれるの?」
少しでも、莉子とのリハビリの時間が欲しい。僕は、頷く。その為には、七海の協力が必要だろう。
「僕にも、時間が必要なんだ」
僕は、なんとか、七海を宥めて帰す事にした。莉子の友人と言った心陽に、いい印象を持つ事ができなかった。病院にも、ああいうタイプは、いたけど、身近な存在ではなかった。派手で、目立ちたいタイプ。繊細すぎて、紙一重のタイプ。その繊細さは、ピアニストとしては、最高なんだろうけど、彼女にとっては、それが、毒になる。感情の良さが、彼女の精神を消耗させる。~危険なタイプ~が、莉子の側にいる。その証拠に、見事、七海を修羅場に陥れた。彼女の側に、置くのは、危険だ。その時の僕は、この後、莉子が最悪な立場に陥れられるとは、思っていなかった。誰も、莉子を救えない深い穴に、彼女は、落とされていた。
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