同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第一七六話 誘惑と決断──プロデューサー来訪と危うい出演承諾

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月曜の午後。
 外では春の風が静かに木々を揺らしていた。

 俺は、自室で執筆もせずに悩んでいた。
 テレビ出演。
 官能小説家として、全国ネットに出る。

 もし出演すれば、顔バレの可能性もある。
 そして——ヒロインたちの“モデル疑惑”が現実味を帯びる。

 断るべきか。
 それとも、名を世に広めるべきか。

 そのときだった。

 ピンポーン。

 玄関のチャイムが鳴った。

 碧純が対応に出て、数秒後。

「お兄ちゃん……すっごい美人が来たんだけど……」

 目を見開いたまま戻ってきた碧純の背後から、
 一人の女が現れた。

 黒のスーツジャケット。
 インナーはレースのキャミソールが覗き、胸元は挑発的な谷間を主張している。
 腰まで流れる黒髪。
 濃いルージュと切れ長の瞳。

 そのすべてが“誘惑”の二文字で形作られたような、
 ——超絶エロ美人。

「真壁弘弥さん。突然の訪問、申し訳ありません。テレビ局『日曜の読書室』のプロデューサー、白崎麗香と申します」

 名刺を差し出す指先が、すでに色っぽい。
 俺は条件反射で受け取り、深くうなずいた。

「お話は……メールで拝見してます……」

「ええ。でも、メールじゃ伝わらないこともありますでしょう?」

 白崎プロデューサーは微笑み、ゆっくりと俺の部屋を見渡した。

「……想像以上ですね。作家の部屋って、もっと……こう、静謐かと思ってましたけど」

 彼女の目は、俺の本棚に並ぶネグリジェ資料や、ヒロインたちの写真立て、そして抱き枕カバーに一瞬だけ止まった。

「でも、いい。リアルで。熱量がある。書きたいものがあって、それを止められない人の部屋」

 そう言って、彼女は俺のすぐ横に腰を下ろした。

 ——距離が近い。

 香水の香りが鼻腔をくすぐる。
 視界の隅で揺れる谷間。
 脚を組み替えた拍子にスカートの裾が少し浮き、太ももが露わになる。

「……実は、私。あの作品、大ファンなんです」

 囁くような声。
 視線は、まっすぐに俺を貫いてくる。

「だから、お願い。テレビに出て……あなたの言葉で、あの世界を語ってほしいの」

 その瞳には、媚びや嘘はなかった。
 ただ純粋な“期待”と“賭け”が宿っていた。

 俺の口は、自然と動いていた。

「……わかりました。出演……受けます」

 その瞬間。

「お兄ちゃん!?」「いま、何て……!?」「あの人……胸でかっ……!」

 ドアの外で盗み聞きしていたヒロインたちが、勢いよく乱入してきた。

 波乱の火種は、すでに燃え広がっていた。

(つづく)

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