同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第二三七話「夢精と後始末と、お兄ちゃんへの審判」

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朝日が差し込む、ホテルの高級スイートルーム。

 

事件は、すでに起きていた。

いや、“すっかり終わっていた”。

 

──俺は、夢精した。

しかも、ヒロインたち6人と密着添い寝していた翌朝という、言い訳不能のタイミングで。

 

「……で、どの子にしたの?」

 

真っ先に言ったのは、白神ルナだった。
その顔にはいつもの笑み。だけど──明らかに“本気のやつ”。

 

「わたし? すみれ先輩? りあ? それとも碧純ちゃん? ひよりん? まさか……イザベラ王女?」

 

「言ってごらんなさいな。夢の中の相手。誰だったのか、正直に」

 

イザベラまで淡く微笑んでいるが、目は笑っていない。

 

「いや……あの、それは……」

 

俺の視線が泳ぐ。
ルナの肩越しに、目が合ってしまった。

 

──碧純。

 

すこし目を赤くして、毛布を抱きしめるようにして座っていた。

何も言わない。ただ、俺を見つめていた。

 

「……で、“そのとき”って……気持ちよかったの?」

 

それは、水無瀬すみれの声だった。

誰より冷静で、知的な彼女が、いちばん素朴に、だけど確信をつくようにそう聞いた。

 

「……」

 

部屋の空気が、ぴたりと止まる。

誰もが息を呑み、俺の返事を待っていた。

 

そして──

 

俺は、小さく。

 

「……うん」

 

とだけ、答えた。

 

「そっかぁ……“気持ちよかった”んだぁ……」

 

ぽつりと、ルナが言う。
その声は笑っていた。でも、どこかさみしくて、悔しそうで。

 

「……じゃあさ」

りあがぽつりと呟く。

 

「“その気持ちよさ”って……わたしたちと一緒に寝てたから、だよね?」

 

俺は──

 

何も言えなかった。

 

言葉を探しても、見つからなかった。

 

だって、本当のことだから。

温もり。香り。肌。声。

たぶん、全部が混ざって──

俺は、夢の中で“それ”に、負けてしまった。

 

 

「そっか……“誰か一人”じゃなくて、“みんな”で、だったんだ」

 

ひよりが記録用のノートを閉じた。

 

「観察終了。……でも、ちゃんと答えて。これから、誰と夢を見たいのかって」

 

 

そのときだった。

 

「お兄ちゃん、シャワーの用意、できたよ……」

 

碧純が、毛布のまま立ち上がって、洗面所を指差した。

 

その姿は、どこか不安げで。

でも、どこか決意に満ちていて。

 

「ひとりじゃ……ちゃんと洗えないでしょ?」

 

「お、おい!?」

 

「“後始末”、してあげる……お兄ちゃんの、その、やつ……」

 

「だから実況すんなあああああっ!!」

 

 

◆ ◆ ◆

 

──そして、その後。

 

俺は、すべてのヒロインに“夢の相手”が誰だったのかを、ひとりずつに話すことになった。

「……たぶん、ひより、だった」

「ちょ、ちょっとまって観察対象なのに!?!?」

 

「……少しだけ、すみれ先輩が……」

「やっぱり、あの時のドライヤー、効いてたのね」

 

「……ごめん、りあの香水で……」

「ふふ、じゃあ次は“現実”でお願いね?」

 

「……ルナの肌が……」

「うわ、やっぱり! これって勝利宣言じゃん?」

 

「……イザベラの、ドレスの隙間が……」

「光栄ですが、次は式服で“直接”お披露目いたしますわ」

 

最後に、俺は碧純にだけ、こう言った。

 

「……でも、“起きて最初に見た”のは、お前だった。お前の腕の中で、目が覚めた」

 

「……ほんと?」

 

「……うん」

 

 

そして碧純は、そっと微笑んで言った。

 

「じゃあ、次は夢じゃなくて──“起きてる時”に、させてね」

 

「なにをだよおおおおおおお!!!??」
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