同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第二四八話「退院、そして隣に初恋──王子の隣室、再び揺れる」

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六月最後の朝。

梅雨明けの眩しい陽射しの中、俺は病院を出た。

文化祭で倒れてから一週間。
ベッドの上で点滴を打ち、毎日ヒロインたちに見舞われ、
「正妻誰?」と問い詰められ、夢精の件をいじられながら──

ようやく退院である。

 

「お兄、おかえり」

 

迎えに来てくれたのは、俺の従妹であり、妹的存在であり、
現在は同居中の──真壁碧純。

白Tシャツとショートパンツにエプロンをかけ、
涼しげな笑顔とせっけんの香りを漂わせている。

 

「ただいま、碧純……オムライスの香りする」

 

「今日の分と、明日のお弁当の分と、……すみれさんの分もあるよ」

 

「うわ、気を遣わせてごめん……」

 

「“気を遣ってる”と思ってるの? ……バカ」

 

甘えと怒りが1:1で混ざった声。
この家に戻ってきたって実感がわいてきた。

 

──ちなみに今の家は、俺の持ち家である。

正確には親から譲り受けた名義だが、
広くて快適で、ヒロインたちの“闇部活活動拠点”と化している。

帰ってきた直後なのに、すでに物音が奥の和室から聞こえるのは気のせいではない。

 

「……帰ってきたなあ」

 

俺は深く息を吐いて、
郵便受けを覗いた瞬間──

 

「すみませんっ! それリビング側の段ボールです! あっ、それは三階へ!」

 

──聞こえた。

声が。

聞き覚えのある、やさしくて、落ち着いた──だけど心をかき乱す声が。

 

玄関を出てみると、
隣のアパート前に引っ越しトラック。
荷物を指示している、涼しげなブラウス姿の女性。

栗色の髪、細身の体、品のある所作。

 

「……あれ」

 

「ひろやくん?」

 

 

──一瞬で、過去に引き戻された。

 

「……みつき、お姉ちゃん……?」

 

 

◆ ◆ ◆

 

篠宮みつき。

俺の初恋の人。
6歳年上の幼馴染であり、現在は看護師。

小さいころ、夏休みに毎日遊んでくれて、
「ひろやくんは、将来わたしと結婚してくれるんだよね♡」
と無邪気に笑ってた──あの人。

 

「ふふ、まさか本当に“隣”だなんてね。ちょっと運命感じちゃった?」

 

笑いながら段ボールの隙間から手を振る彼女。

たぶん、悪気ゼロ。だが──

その瞬間、家の中から──

 

「お兄、荷物置き──……っっっ!?」

 

碧純、登場。

 

「……え、だれ?」

 

「篠宮みつきです。弘弥くんの幼馴染で、今日からお隣さん」

 

「……ッッ!?」

 

「それと、弘弥くんの“初恋”だった人、でもあります♡」

 

\碧純:硬直/

 

 

◆ ◆ ◆

 

その夜。

俺がソファでうなだれていると、
持ち家に次々と現れるヒロインたち──

 

「退院おめでとうっ! ひろや! さあ正妻再選挙開始だよ!」

ルナ(ハイテンション)

 

「はい、おかゆ。冷ましながら食べてね?」

すみれ(穏やかだけど目が笑ってない)

 

「観察記録更新:初恋個体・看護師属性・隣人距離。最強格」

ひより(無慈悲)

 

「やっぱり、私の中学の闇って、こういう“現実”のせいだと思う」

りあ(闇再燃)

 

「誰ですか? あの貫禄のある人……正妻ですか?」

イザベラ(静かに嫉妬)

 

──そして、みつきが手作りのケーキを持って現れた。

 

「夜分にすみません。お隣にご挨拶に……って、すごい女の子の数ね♡」

 

\\全員硬直!!//

 

 

その夜。

ヒロイン会議、開幕。

 

議題:
① 篠宮みつきという女について
② 隣人トラップをどう回避するか
③ 弘弥の部屋に立ち入り禁止エリアを設けるべきか

 

そして宣言される──

 

「正妻防衛戦線、発動します!!」
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