同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

文字の大きさ
266 / 630

第二五〇話 「ベッド、買いに行きます──夢と現実と“お姉ちゃん”に挟まれて」

しおりを挟む
 ──毎夜、誰かが隣に寝にくる。

 

 最初は碧純。
 次にすみれ。
 りあ、ルナ、ひより、イザベラ──
 時には二人セットで、時には全員集合で。

 

 そして俺は、何度も叫んだ。

 

「寝ろォォォォォオオ!!!」

 

 ──だが、無駄だった。

 

「お兄が“選ばない”から、誰が横に寝るかくらい自由でしょ?」

「心拍数的に、あなたの精神安定には“同衾”が最適なの」

「布団、あったかいし」

「いやもう、いるのが当然ってことでしょ?」

 

 結果。

 俺のシングルベッドは毎晩、ヒロイン満載の戦場になっていた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 ──だから、俺は決めた。

 

「ベッド、買おう。でっっっっっかいのを!!」

 

 ヒロインたちを止められないなら、
 いっそ受け入れて、快適な睡眠を取り戻すしかない。

 

「というわけで、キングサイズベッドを買いに来ました……高校二年生です」

 

 場違いな高級家具店の入り口に立つ俺。

 Tシャツにジーンズという庶民の服装が、ゴージャスな店内で浮いている。

 

 だが、俺の決意は固い。
 このままじゃ精神も肉体も持たない。

 

「サイズは……キング。いや、クイーンじゃ足りない。帝王の寝床だ。王の器だ……!」

 

 そして──

 

「金はある。なぜなら俺は──ラノベ作家だからだ」

 

 誰に向けてでもなく、誇らしげに呟いた。

 

 数千万単位の印税。アニメ化による契約料。関連グッズ収益。
 高校生にしては明らかにバグってる口座残高。

 

 だが、それは俺にとって戦いの“資金”にすぎない。

 ──睡眠を取り戻すための戦費だ。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 案内されたのは高級ベッドコーナー。

 ふかふかのシーツ。滑らかなマットレス。
 天蓋付き、リクライニング機能付き、枕が6つ付いてる謎モデルまで。

 

「これで……今日から、ちゃんと寝られる……!」

 

 そう、思った瞬間だった。

 

「──あら? ひろやくん?」

 

 聞こえた、その声。

 

 振り返ると、そこにいたのは──
 白いブラウスとロングスカート姿の篠宮みつきだった。

 初恋のお姉ちゃん、隣人、看護師、現在独身、
 そして今、ベッドコーナーに立ってる。

 

「……へ?」

 

「奇遇だねぇ。まさか弘弥くんが、こんなとこで……。
 あれ? あれあれ? その札、“キングサイズ”って書いてない?」

 

 

 \\状況説明不可能ィィィィィィ!!!//

 

 

「いやっ、ちがっ、これはそのっ、俺一人で使う用というか!!」

 

「ふーん……“一人用”で、キングサイズ、ねぇ……♡」

 

「ちがっちがっちがっっ!!! これは、その、最近布団がせま……いや、それも違……!」

 

「もしかして、“毎晩誰かと一緒に寝てる”とか?」

 

「ナゼ知ッテルノデスカ……!?」

 

 

 ──隣で、にひにひ笑うみつきお姉ちゃん。

 店員が近づいてきて、
「ご夫婦でのご来店ありがとうございます。お試し寝できますよ」と笑顔で案内してきた。

 

 俺:「ちがいます!!!」

 みつき:「まぁまぁ、せっかくだから“寝心地”だけでも♡」

 

 

 ──気づけば、
 “キングサイズベッドの上で、元初恋のお姉ちゃんと並んで寝転んでる高校生”という地獄構図。

 

 みつき:「うん、ふかふか♡ 弘弥くんが横にいると、安心するなぁ……」

 

「死ぬゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 その後、みつきは枕のコーナーへ。

 俺は必死に会計へ。

 

 だが、出口で再び声をかけられる。

 

「ふふ、これで“毎晩一緒に寝る子たち”にも安心ね♡」

 

「なぜ全部お見通しなんだこの人は……!!」

 

「だって、ひろやくん。顔に“毎晩、添い寝されてます”って書いてあるもの」

 

 ──笑いながら去っていく“元初恋のお姉ちゃん”。

 その背中を見送りながら、俺は確信した。

 

 新しいベッドを買っても、平穏は来ない。

 

 むしろ、
「キングサイズになったから全員いけるね♡」
 とか言い出す未来しか見えない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...