同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第二九五話 「下山、そして余韻──汗と笑いの帰り道」

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「そろそろ……下り始めるか」

女体山頂でしばらく余韻に浸った俺たちは、
名残惜しさを残しつつも、リュックを背負い直した。

「登りはきつかったけど……帰りは楽かな?」

「いや、それはフラグ。下りも普通にキツいから」

「確かに。膝に来るんだよね……ぴきって」

「観察対象たち、筋肉疲労度上昇中」

「つまり、気を抜いたら滑って転ぶってことね!」
ルナが満面の笑顔で言う。

◆ ◆ ◆

下山ルートは、つつじヶ丘方面の「おたつ石コース」へ。

奇岩地帯を避けて、比較的楽とされる道だが……。

「ひゃっ!? すべったぁぁ!!」
ルナが予言通りに尻もちをつく。

「だ、大丈夫!? ルナ!」

「だ、大丈夫……お尻打っただけ……」

慎重に、足元を確認しながら進む。
疲労が重なった分、笑いも少し控えめだ。
でも、そこには不思議な連帯感があった。

登ってきたときにはなかった、一体感。

「……なんか、遠足の最後って感じだね」

「うん……帰るまでが登山、って言うし」

「帰ったらお風呂だね」

「ぜったいアイス食べる……」

「それより早く脱ぎたい……この汗びっしょりの服……」

「ひろや、帰ったら着替え、選んでね」

「なぜ俺が!?」

◆ ◆ ◆

無事に下山を終え、
ふもとの休憩所で缶ジュースを買って一息。

自販機の前で、りあが静かに言った。

「ねえ……また、来たい」

みんなが、ふっと笑う。

「次は秋の紅葉とか?」
「冬登山はちょっとキツくない?」
「雪が積もったらスキーとか?」

「山小屋泊とか……しちゃう?」

「ひろやくん、それってつまり──お泊まりイベント?」

「いや、それはさすがに展開早すぎ──」

「“観察対象、動揺中”……記録」

◆ ◆ ◆

帰りの車内では、みんな疲れて眠っていた。

助手席の俺も、目を閉じる。

だけど、胸の奥には何かじんわりとした熱が残っていた。

達成感。
思い出。
それと──もう少しだけ続いてほしい、今という時間。

「……次は、どこ行こうか」

誰にも聞かせない独り言。

だけどきっと、次の笑い声はもう、すぐそこにある。
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