同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

第二九六話 「汗を流して、心もほどける──筑波山温泉宿泊回」

「汗を流して、心もほどける──筑波山温泉宿泊回」

　筑波山を無事に下山した俺たちは、
　ふもとの温泉街にある宿へ向かっていた。

「登ったあとは、やっぱり温泉だよね～～～っ！」

　ルナが嬉しそうにスキップしながら叫ぶ。

「お兄、温泉ってことは……つまり、混浴とか？」

「あるわけないだろ！！」

「……だが、貸切風呂は予約してある」

「やっぱり用意してたのね！！」

　◆　◆　◆

　宿は、和風で落ち着いた雰囲気の二階建て。
　畳敷きの玄関に足を踏み入れると、
　木の香りと旅館ならではの涼やかな空気に包まれた。

「わあ……すごく綺麗……」

「観察対象のテンション、再上昇中」

　部屋に通されると、窓の外には筑波山がすぐそこに。

　俺たちは荷物を置いて、まずは温泉へ向かうことに。

　◆　◆　◆

「──じゃ、男子はあっち、女子はこっちね」

「え～、弘弥くんと一緒に入りたかったのに～」

「わたくし、混浴文化には理解ありますのよ？」

「そういう問題じゃないから！！」

　男湯には俺一人。

　露天風呂に浸かりながら、
　登山で使った足をじんわりとほぐす。

「はぁ～～～っ……生き返る……」

　風が吹くたび、
　汗と埃と疲れがすうっと抜けていく。

　──と、そのとき。

「お邪魔しま～す♪」

　扉の向こうから聞き覚えのある声。

「ま、まさかっ！？ ルナ！？ 男湯だぞ！？」

「え、だって貸切風呂、時間きたって聞いて──え、あれ、間違えた？」

「どー考えても間違ってる！！」

　その後、きっちり引き離されたあと──

　俺たちは予約していた貸切家族風呂へ。

　といっても、ちゃんとタオルを巻いて、
　“半分だけ足湯感覚”で全員入浴。

「登山の後にこうして一緒に温泉って……最高」

「お兄の顔、ぽーっとしてるよ？」

「照れてるの？」

「データ収集中。温泉の幸福度、測定中」

「……こういうの、家族旅行みたいだね」
　すみれがふっと呟いた。

　確かに、そうかもしれない。

　“ハーレム”というより、“一つの家族”。
　そんな感覚すら芽生えてくるような、優しい夜だった。