同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第二九七話 「そして、お約束の夢精──夏の夜、布団の中で」

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 温泉のあとは、みんなで浴衣に着替えて部屋に戻った。

 すっかり夜も更け、
 晩ご飯とちょっとした花札勝負のあと──
「川の字で寝よう」と提案したのはルナだった。

「せっかく旅行なんだし、みんなで寝たほうが絶対楽しいでしょ♡」

「えっ……ちょ、待って、それはさすがに……」

「観察対象、動揺中。記録開始」

「ひろや、変な夢見たら許さないからねっ」

「お兄、寝相悪いから、変なとこ触らないでよ?」

「弘弥様、わたくし、寝る前に髪をとかしていただけます?」

「……じゃあ私は、となりで寝る係」

 結局、みんなで横並びに布団を敷いて寝ることになった。

 俺を中心にして、左右にずらりと美少女たちが並んでいる──
 まさに「ハーレム川の字」状態だった。

 ◆ ◆ ◆

 そして深夜。

 夢の中。

 誰かが耳元で囁いている──

「弘弥……好き……」

 柔らかい指先が、頬を撫でる。
 肌の温度。
 誰かのぬくもり。

 夢の中で、誰かの唇が近づいてきて──

 ──そこで、目が覚めた。

「………………」

 静かな部屋。
 窓の外で、風鈴が鳴っている。
 どこか遠くで虫の音も聞こえた。

 そして。

「あ……」

 布団の中で、ありえないほどの“濡れ”と“粘り気”を感じた。

「……やった……また……」

 まるで現実と夢の境が曖昧なまま、
 何かを手に入れたような、失ったような気持ちになる。

(こんな状況で、やらかす俺の脳と体……一回冷却してほしい)

 寝返りを打つと、すぐ隣で碧純が寝息を立てている。
 反対側ではすみれ。
 その向こうにルナ、ひより、りあ、イザベラ。

 全員が、主人公の周囲に寄るように眠っていた。

(こ……この状況で……やらかしたのか、俺……)

(よりによって旅行先……しかも布団が……終わった)

 俺は静かに布団をずらし、濡れた箇所を確認し、
 そっと畳んで端に寄せた。
 しかし──

「んぅ……お兄……なに、してんの……」

 碧純がむにゃむにゃと寝言を言いながら俺の手を握ってきた。

「ひろや……動くと、起きちゃうよ……?」
 すみれも寝言交じりに囁いた。

「やばいやばいやばいやばい!!」

 この地獄の朝が、数時間後に訪れることを、
 俺は心底震えながら確信した。

 ──朝が怖い。
 逃げ出したい。
 でも逃げられない。

「……第二の地獄、明け方に来る……」

 そう呟いて、俺は濡れた布団から目を背けた。
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