同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三九二話 「“思春期の性と愛”が文学賞で話題に!?」

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 ──数日後。

 朝起きてスマホを見ると、タイムラインがざわついていた。

【高校生作家・真壁弘弥氏、「修学旅行は恋と夢精でできている。」で直木賞候補に!】
【“思春期の夢精”を文学に昇華した異才、文学界の異端児か天才か】
【「夜の痕跡に青春を見た」──選考委員絶賛】
【令和の文学、新たな扉が開かれる】

「………………は?」

 目をこすった。
 けど、現実は変わらなかった。

(ちょっと待って……直木賞!?)

 ◆ ◆ ◆

 学校に登校した瞬間、空気が変わった。

「あれ……あの人じゃね?」

「夢精の……」

「夢精の人!!」

「もっと呼び方あったでしょ!?!?!?」

 顔は知られていないはずなのに、
 なぜか“空気”でバレていくのが、ネット社会の怖さだ。

「先生もニュース見ましたよ。文学……すごいですね」

「なんか、保健体育に活かせそう」

「“夜の自己表現”がどうとか、作文に書いていいですか?」

 やめてえええええええ!!!

 ◆ ◆ ◆

 昼休み。

 ヒロインたちに囲まれて、ようやく落ち着くかと思いきや──

「……え、夢精で直木賞ってマジ?」

「つまり、弘弥くんの青春=私たちとのラブコメ=夢精=文学?」

「恋愛表現=夜の事故=青春の真理……ってこと……?」

「いや、私たち、全員モデルってことじゃない!? 全員“夢精の原動力”になってたってこと!?」

「ある意味、“官能小説のヒロイン”じゃん!?」

「ちょっと待って、弘弥くん、私はどの回担当だったの?」

「え、それ決めるの!? “第◯夜の夢精担当”とか!? やめて!!お願いやめて!!」

 ◆ ◆ ◆

 放課後。

 担任で風紀委員顧問でもある、黒沢先生に呼び出される。

「……真壁くん」

「は、はい……?」

「あなた、立派に“表現”しましたね。
 思春期の揺らぎと、心と体の連動を、ここまで真正面から描けるなんて……」

「せ、先生……?」

 黒沢先生は目を逸らし、顔を真っ赤にしながら言った。

「文学に“性”はつきものよ。恥ずかしいことじゃない。
 私も……中学生のとき、初めて芥川を読んで、変な夢を見たこと……あるもの……」

「えっ!? ……えっ!?」

「わ、私は保健室で深呼吸してくるわね……」

 足早に去っていく先生の背中が、どこか背徳的に見えた。

 ◆ ◆ ◆

 帰宅後。

 俺は自室でニュースを見つめながら、深くため息をついた。

 “夢精”という言葉が、こんなにも正々堂々と世に出るとは思わなかった。

(でも……俺は、俺なりに“本気”で書いたんだよな)

 “性”も、“愛”も、“旅”も、“誰かとの距離”も。

 全部混ざって、あの小説ができた。

 それを“文学”って呼ばれるなら、
 ……ちょっとくらい誇ってもいいのかもしれない。

 そのとき、玄関のチャイムが鳴った。

 ──そして、次の事件が始まる。
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