同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三九四話 「受賞は逃したけれど──“夢精作家”という肩書が残った」

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──その夜。
テレビのニュース速報が、俺の運命を告げた。

【速報:第●回直木賞は、三谷由紀「硝子の国」に決定】

「……あー……ダメだったか……」

静かな、敗北感。
だけど、不思議と悔しくなかった。

むしろ……ホッとしている自分がいた。

(あれで受賞してたら、今ごろ“夢精で文学賞受賞”って言われてるよな……)

いや、もう言われてる気もする。

◆ ◆ ◆

数日後、書店。

『修学旅行は恋と夢精でできている。』
は、まさかのコーナー展開。

しかも──

【青春純文学フェア】
棚の隣には、なぜか以下の本が並んでいた。

『尿意と自由』(泌尿エッセイ)

『生理とともに歩いた日々』(女性作家による随筆)

『思春期の秘密ノート』(男子中学生の記録)

「偏ってるううううう!!
なんで“濡れる系”ばっかりで固められてるんだよぉぉぉ!!!」

背後から声がする。

「だってその方が……“映える”でしょ?」

振り返ると、編集担当・久遠美月が満面の笑みで立っていた。

「弘弥、よかったじゃない。受賞は逃したけど、“爪痕”は残せた」

「それが“夢精”で残す爪痕でよかったのかは甚だ疑問です!!」

「あなた、もう逃げられないわね……“夢精”から」

「呪いかな!? 俺、なんか召喚した!? 性的な神か何か!?」

「……でもね」

彼女は真面目な顔で、そっと言った。

「あなた、本気で書いた“青春”が、誰かに届いたんだよ。
それって、賞よりもずっと……価値のあることだと思わない?」

「……美月さん……」

「で、次回作の打ち合わせなんだけど、
“夢精その後”をテーマに、短編集とか考えててね♡」

「やめてえええええええ!!!!!」

◆ ◆ ◆

その夜。
俺の部屋で――ヒロインたちが、なぜかエンドクレジットのように並んでいた。

「弘弥くん、やっぱりカッコよかったよ」
──すみれ(真顔)

「ねぇ、“次の夢精”はわたしが担当していい?」
──ルナ(にやにや)

「観察対象が文壇入り。記録が一冊にまとまる未来が楽しみ」
──ひより(メモ帳ぱたん)

「お兄ちゃんは……もう立派な“大人の作家さん”だね」
──あゆむ(うっすら笑み)

「じゃあ、次は……“わたしとの恋”を書いてくれる?」
──ことね(上目づかい)

俺は頭を抱えながら、ボソリと呟いた。

「……なんで、こうなったんだ……」

だけどどこか、心の中にあったのは。

ほんの少しの、誇らしさ。

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