同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三九五話 「夢精作家、ついに“引く手数多”状態へ」

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──朝、目覚めてすぐのスマホ通知。
画面をスクロールするたびに、俺はどんどん青ざめていった。

「……うわっ、また一件……今度は、ホラー作家から……」

夢精文学という異名で、直木賞にノミネートされたあの日から――
真壁弘弥の名は、ちょっとおかしな意味で“業界のバズワード”になっていた。

◆ ◆ ◆

出版社Aからのメール:

「『夢精しないと死ぬ学園ホラー』という新企画、いかがでしょう!?」

出版社Bからの企画書:

「“恋”と“射精”と“料理”の三重奏で“味覚と愛の本質”を描くラノベ。
タイトル案『精スパイス・ラブディッシュ』!!」

出版社Cからの問い合わせ:

「性教育教材を“思春期の視点から文学的に”監修してもらえませんか?」

「いやいやいや!!
俺、元々は萌えラブコメ作家だったはずだろおおおおおお!!!」

◆ ◆ ◆

そして、その日。
編集担当の久遠美月が、出版社の打ち合わせ室に俺を呼び出して言った。

「弘弥、今のあんたは正直言って、“どこにでも行ける”状態なの」

「それ、全然嬉しくないです……!」

「でもね、逆に言えば“逃げ場がない”ってことでもあるのよ」

「なんかドラクエで“世界のどこでも行けるけど全て敵が強すぎる”みたいな感じですよね、それ」

美月は肩をすくめ、バッグから一枚の資料を取り出した。

「……だから、これ」

「?」

「異世界転生勇者モノ。
ただし、“夢精でレベルアップ”する設定。タイトル案は──」

『夢精するたびレベルアップ!?
異世界セミナリオ勇者伝説』

「……………」

沈黙。五秒。

「どうしたの?」

「これ……これ、アニメ化前提で動いてますよね!?」

「動いてるわよ。小学館・KADOKAWA・一迅社が共同出資予定よ」

「なんでこんなときだけ業界一致団結すんの!?!?」

◆ ◆ ◆

「だって弘弥、
もう“夢精”ってワードだけで人呼べるから。
“夢精=ブランド”ってやつよ」

「やだぁあああああ!!!そんなブランド名認めたくなぁぁああい!!!」

「でもやるでしょ? “逃げない”って決めたんでしょ?」

編集美月の目は、どこまでも静かで、真剣だった。

俺は――観念して、椅子にもたれかかる。

「……わかりました。
だったら……書いてやりますよ。全力で、“夢精とファンタジーの融合”を……!」

「よし、それでこそ我が“夢精文豪”!」

「夢精文豪って呼ばないでぇぇぇえええええ!!!!!」

◆ ◆ ◆

その夜、帰宅するとリビングにいたヒロインたちが言った。

「弘弥くん、また“夢精小説”書くんだって?」

「でも今度は異世界!? 超気になる!」

「レベルアップのたびに、どんなスキルがつくんですか?」

「夢精って、そんなに万能な成長要素だったの……?」

「ねぇ、わたし“転生先の夢精管理官ヒロイン”役に立候補していい?」

「うわあああああ!!!!!」

──こうして、“伝説の夢精異世界ファンタジー”が幕を開ける。

次回、異世界転生第一話の執筆開始&初期設定地獄会議へ続く!
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