同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第三九九話 「夢精封印!? ヒロインたちの“夢ブロック作戦”」

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 ──その夜、俺の部屋には空気の重い“対話会”が始まっていた。

 ちゃぶ台を囲むは、あゆむ、すみれ、ことね、そして他ヒロインたち。

 テーマはただ一つ。

「夢精、やめませんか?」

「………………」

「ちょ、ちょっと待って!? なんでそんな雰囲気で“夢精”の話してんの!?」

 ◆ ◆ ◆

「正直、ずっと言いたかったんだけど……」

 と、あゆむが目を伏せたまま言う。

「夢精でレベルアップって……そろそろ、苦しくない?」

「えっ」

「なんかもう、毎回出すたびにレベル上がって、魔王倒して、でもまた出さないと弱くなる……
 これって、“お話”としてどうなのかなって」

「そ、それは……システム的な意味で……」

「……弘弥くん、“その物語”に、心が乗ってないの、最近ちょっとわかるよ」

 と、今度はすみれ。

「前みたいに楽しそうじゃない。書いてて苦しそうで……私、それが見てて辛い」

「いや、それは……うっ……」

 言葉に詰まる俺の前で、ことねが静かに口を開く。

「弘弥くん。作品って、誰かの“妄想”を形にしたものだよね?」

「…………」

「でも今の弘弥くん、“自分”のじゃない妄想で書いてる」

「周りが“夢精で書け”って言ってるから、書いてるだけじゃない?」

 その言葉に、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。

「わたし……弘弥くんが書いた、最初のラノベが好きだったんだ」

「バカみたいなハーレムで、ラッキースケベで、青春で、
 ちょっとだけ切なくて……それが、弘弥くんの物語だった」

 ◆ ◆ ◆

 俺は、返す言葉が見つからなかった。

 ……たしかに、最近の俺は、“読者が期待してるから”“話題になるから”ってだけで書いていた。

 好きだったはずの物語を、
 “書かされてる”ように感じていた。

 でも。

 あの頃は違った。

 思春期の妄想を、青春のもどかしさを、恋する心を――
 全部、バカ正直に書いてた。

「俺が書きたいのは……夢精じゃなくて、
 **“本気の物語”**だったはずだ……」

 ポツリとこぼしたその言葉に、全員の視線が集まる。

 ◆ ◆ ◆

「じゃあさ」

 と、ルナがニヤリと笑った。

「弘弥の夢精、止めてみようよ」

「えっ」

「“夢精禁止生活”。しばらくこっちでコントロールして、暴走したら“お仕置き”♡」

「え、なんでそんな罰ゲームみたいな空気になってんの!?」

「“夢精がなければ世界が救えない”って設定、崩壊するけどいいの?」

「うん。崩壊させて、新しい物語を創ろうよ」

 ◆ ◆ ◆

 こうして、ヒロインたちは一致団結した。

 “夢精ブロック作戦”発動。

 あらゆるエロい妄想・エロ本・深夜アニメ・抱き枕などを排除。

「や、やめろォォォ!! それは人権の侵害だ!!」

「弘弥くんが“本気”を見せるまで、我慢してね♡」

(地獄の予感しかしない……!!)

 でも、どこかで俺は気づいていた。

 ――また、書きたいって思える日が来るかもしれない。

 夢精じゃない、“俺の物語”を。

 ──次回、夢精から“愛と創作の意味”を取り戻す物語、始動。
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