同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四二七話 「それでも僕は、書き続ける──“夜の先にある未来”」

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 ロサンゼルス最後の夜。
 煌びやかな街の灯りが、遠くの山の稜線まで照らしていた。

 喧騒のハリウッドから少し離れた、高層ホテルのテラス。

 そこにひとり、スウェット姿でノートを開いている男がいた。

 真壁弘弥、17歳。
 夢精作家。青春の語り部。そして──

「……俺は、やっぱり物語が好きなんだな」

 目の前に広がる夜景は、どこか遠くて、近い。

 さっきまで笑っていたヒロインたちはもう部屋で寝ている。
 だが、まだこの手はペンを置けなかった。

「世界に届いたなら──」

 ぽつりと、言葉が零れる。

「次は、自分自身に届く物語を書きたい」

 夢精で笑われても、青春がバカにされても。
 それでも、俺の“初めて”は、誰かを想って起きたことだった。

 誰かに好きだって言いたくて。
 優しくて、あたたかくて、切なくて。
 だから、夜に泣いた。

 それが、俺の原点だ。

 ゆっくりと、ノートの最初のページに、ペンを走らせる。

 そのタイトルは──

『夜の静寂に、愛の音がした。』

「──弘弥、まだ起きてるの?」

 ふいに、テラスの扉がそっと開く音がした。

 振り返ると、パジャマ姿のヒロインたちが順番に現れる。

 すみれ、碧純、ルナ、ことね、あゆむ。
 全員が毛布を持って、眠たそうに笑っていた。

「最後の夜だからって、ひとりにならないの」

「さ、さっき寝たと思ってたのに……」

「ん~ん、弘弥の部屋が静かすぎて、逆に気配でわかっちゃった」

「あと、なにか書いてるときの“空気”……わかるんだよ」

「弘弥くん、また“新しい夜”を書き始めたでしょ?」

 彼女たちは俺の隣にすとんと座る。

 毛布を分け合いながら、誰からともなく目を閉じた。

「じゃあ、そろそろ寝ようか」

「うん……夢の続きを、また見に行こうね」

 その声に、俺は頷く。

「……ああ。今度は、ちゃんと愛の物語として」

 月の光が差し込むテラスで、
 静かに、静かに、ページがめくられていく。

 それは、世界がまだ知らない──
 でも、きっと誰もが願っている夜の物語。

 “夢精”の先にある、“恋”のはじまり。
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