同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四二九話 「童貞、それは未踏の“物語領域”──ヒロインたちの焦り」

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 ──これは、もはや宣戦布告だった。

『童貞を卒業するまでに君と世界を変えたい』

 新連載のタイトルが発表された翌日。

 俺の部屋には、妙に視線が刺さる空気が漂っていた。

 リビング。
 ヒロイン全員集合。全員、沈黙。

 空気が、重い。

「……その、“卒業”って、やっぱ……その……」

 すみれが、優しく微笑みながら核心を突く。

「弘弥くん……“そのつもり”なの?」

「えっ? つもりって、え、な、なにを?」

「誰とするか、もう……決めてるの?」

「はわわわわわわわわっ!?!?」

 ◆ ◆ ◆

「むしろ、よく今まで童貞で保ってたよね、弘弥」

 碧純が腕を組んで、小さくため息をついた。

「一緒に住んでて、あんなことやこんなことあって、
 ……保ってたって奇跡じゃない?」

「ま、まぁそれは“誠実さ”ってことで……!」

「それとも、弘弥のターン、これからなの?」

「ターンって言うな!!」

「じゃあさ~~~~~」

 ルナが、どんっと俺の隣に座り、
 無駄に柔らかい腕をぐいぐい押し付けてくる。

「“夜這い”っていう古き良き伝統文化、採用しない?」

「採用されてたまるかああああああ!!!」

「ねーねー、弘弥って、どんな服のときが一番ムラっと来るの?」

「すっごく参考資料になるからさ☆」

「だから資料にするなってぇぇぇぇ!!」

「うふふ」

 あゆむが、ティーカップを優雅に持ちながら微笑む。

「弘弥お兄ちゃんの童貞……私がいただきますね♡」

「怖い!!!!あゆむ、怖い!!! その笑顔が一番怖い!!」

「ふふ、心配しなくても大丈夫。……弘弥お兄ちゃんは、昔からわたしのものだから」

(重ッッッ!!)

「配信的には……最悪だと思うけど」

 ことねが、ポニーテールを指でくるくるしながら呟いた。

「でも……恋としては、すっごく“正解”だと思うよ」

「なんか今、全方向から俺の“卒業証書”が狙われてる気がするんだけど……!?」

「卒業式、明日でいい?」

「ダメですッ!!」

 ◆ ◆ ◆

 その夜、俺は自室で震えながら日記をつけていた。

【本日の日記】
 ヒロインたちが全員、俺の童貞を狙っている。
 誰にも渡したくないとかそういう話じゃなく、
 これはもう、“命”の問題なのでは……?

 そのとき、ドアの外から聞こえた。

「ねぇ……弘弥くん。ちょっと話せる……?」

「うわああああああ!!また来たああああ!!」

(俺はこの先、“本当に”卒業するのか!?)

(それとも、死守するのか!?)

 いや、そもそも俺って……
 “恋”って、ちゃんとわかってるのか?
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