同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四三〇話 「夜の部屋割りバトル──“同衾指名権”争奪戦」

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 ──それは、突然の一報だった。

「え!? 合宿!?」

「そう、温泉旅館で! 二泊三日の執筆合宿よ!」

 編集者・久遠美月が、例によってロリ顔に似合わぬ凄みと共に告げてきた。

「しかも、編集部全面協力による“高級温泉旅館・貸切プラン”」

「なにそのプロ作家専用のご褒美空間……っていうか、俺、まだ高校生なんですが」

「あなたは“夢精で文壇揺らした男”でしょ? 社会的にはもう成人枠よ」

「なんだその訳わからん立場……!」

「ちなみに、旅館側のご厚意で──部屋割りは自由」

「それが一番怖ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 ◆ ◆ ◆

【当日:温泉旅館「白鷺の宿」】

「……まじで、全館貸切かよ」

 敷地に足を踏み入れた瞬間、目の前に広がるのは瓦屋根と障子の光が幻想的に溶け合う、純和風の上級旅館。

 けれどその優雅な雰囲気にそぐわぬ、地雷の気配が……既に充満していた。

 すでに到着していたヒロインたちの姿。

 すみれ:完璧な浴衣姿で、窓際に佇み一冊の本を開いている(おそらく中身は“恋愛心理戦”)。

 ルナ:旅館の廊下を全力スライディングで疾走中。「ヒャッホーー! 襖って滑るんだね~☆」

 碧純:俺のスーツケースを勝手に開き、「……Tシャツがダサいから、私が選んだの入れておいた」とドヤ顔。

 あゆむ:「夜はふたりきりですね♡」と、自作の札を首から提げてスタンバイ。

 ことね:すでにスマホを三脚に固定し、「配信準備完了です」とカメラ目線。

「……これ、合宿じゃなくて、公開処刑の予感しかしないんだけど?」

 ◆ ◆ ◆

「ではでは!!」

 ことねがスマホに向かって満面の笑顔で叫ぶ。

「いよいよ始まります! 名付けて──
 “童貞の運命を決める! くじ引き部屋割り大戦202X”!!」

 \\#弘弥の隣は誰だ//
 \\#くじはガチ抽選生配信//

「いやタグおかしいから!?“童貞の隣”って概念がもうおかしいから!」

 だがすでに、視聴者数は4万人突破。

 俺の童貞が、ついに世界のエンタメに昇格した瞬間である。

 くじ箱が回り、ヒロインたちが緊張した面持ちで一枚ずつ紙を引いていく。

「はいっ!! ルナでーす☆ 当たったぁぁぁああ!!!」

「おぉぉぉぉおおおお!!!!」

「つまり今日、弘弥と──同室確定ってことだよね!?」

 ルナ、突然テンションMAXで飛びついてくる。

「うわあああああああ!!!」

 柔らかい。柔らかすぎて、記憶が飛びそう。

「安心して? 添い寝だけで済むとは、思ってないから♡」

「思っててぇぇぇぇぇ!!! 全力で思っててぇぇぇぇ!!!」

 そのとき、久遠美月がスッ……と一歩前に出た。

「ちなみに、弘弥の部屋には──」

「……っ!?」

「防音・暗視カメラ付き見守りシステムが搭載されています」

「なっ……!? なんでそんな軍事レベルの設備が!?」

「過去に“放送事故未遂”が数回発生したからね。未然防止だよ、未然」

 ルナ:「え~~監視されてるの!? ちょっと恥ずかしい~♡」

 碧純:「むしろ合法ギリギリの攻め方でってことでしょうか」

 あゆむ:「弘弥お兄ちゃんの尊厳は、守られてるようで一切守られてない……ふふふふふ……」

 ◆ ◆ ◆

 夜。旅館の和室。

 畳に敷かれた二枚の布団。隣り合っている、というより**“隣接している”**という言葉が正しい距離感。

 ルナはすでに浴衣を脱ぎ、キャミとショーパン姿で枕に頬を乗せていた。

「ねぇ、弘弥……起きてる?」

「…………ね、寝てる寝てる寝てる寝てる!!」

「じゃあ……寝てる弘弥に、ちょっとだけ──」

「だめええええええ!!!カメラが!編集者が!俺の人生が!!」
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