同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四六二話『パンツ派の反撃──“包む文化”の反証』

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 その日、リビングは静かだった。

 異常なまでに、静かだった。

 しかし、全員が知っていた。
 戦争は終わっていない。

 そしてついに、パンツ派の反撃が始まる。

「私は……履く」

 静かに、毅然と、そう口を開いたのは、碧純だった。

「下着は“恥”を隠すためのものじゃない。心を包む布なの」

 すみれが頷く。
「誰かに見せるものじゃない。けれど、誰かのために整えておく“気持ち”よ」

「……それな。だから私はちゃんと、今日から“勝負パンツ”に戻す」

 と、ルナが口を挟む。

「え、勝負ってなに!? 話の流れが一気に変な方向に!?」

「ちなみに今日の私のは、いま話題の“しっかりホールドする新素材”だよ~。通気性も良くて、蒸れない! しかも柄がかわいい!」

「ここから“ブランドパンツ紹介タイム”始まってる!? 感動回のはずだったのでは!?」

 ひよりも便乗してきた。

「私の推しは“ガーゼ素材”です。医療用の着心地から着想された究極の優しさ。統計的にも“恋人に履いてほしい下着素材第1位”なんですよ?」

「またそのガチ統計引っ張ってくるんじゃない!」

 ことねがじっと睨む。
「……履くことが、心を包む? 甘い。真の精神解放はノーパンにこそある」

「やかましいわ!! ここは包む文化の回だから黙ってて!!」

 そんな混沌の中で、俺は、そっと呟いた。

「……俺は、履いててほしい……」

 リビングの空気が、一瞬で凍る。

 ヒロイン全員の視線が俺に突き刺さる。

「え、なんで?」「どうして?」「理由による」「語って」

「いや、単純に……落ち着かないっていうか、あの、見えそうで見えないのが一番こう……その……」

 しどろもどろになった俺の言葉を、ひよりが冷静に補足する。

「要するに、“安心感と妄想の境界”で脳が混乱して疲弊するということですね」

「言葉のチョイスどうした!?」

 すみれが、やんわりと笑う。

「……でも、弘弥くんがそう言うなら、私は履く。毎日、ちゃんと」

「……私も、最初から履くつもりだったし。みんなに流されてただけだし!」と碧純。

「じゃあさ、お兄ちゃん」

 ルナが、悪魔の笑顔で言った。

「“好きな柄”って、なに?」

 その場の空気が、一瞬で地雷原になる。

「花柄? レース? 無地? アニメキャラ? 動物? カラフル? フリル? 縞パン?」

「質問の密度が高いぃぃぃぃ!!」

「さあ、答えて。正直に。誰が一番、お兄ちゃんの“理想のパンツ”に近いの?」

「お願い、命だけは……命だけはぁ……」

 パンツ文化の守護者になろうとした俺は、
 この日、パンツ地獄の審判者として断罪された。
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