同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四七五話『やっぱり一人風呂は無理だった──でも、ちょっと幸せ』

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 湯庵つくばの貸切風呂。

 広々とした檜風呂に、たっぷりと湯気が満ちていた。
 夜の帳が下りた外には静かに虫の声が響き、内湯の窓からはほのかな月明かりが差し込んでいる。

 俺は、久々にひとりだった。

 いや、正確に言えば、館内にはヒロインたちもいるし、リクライニングエリアでわちゃわちゃしているのも知っている。
 でも、この瞬間だけは、誰にも邪魔されず、湯に身を沈めることができた。

 静かだった。
 心地よかった。

 湯に浸かりながら、俺はぽつりと呟いた。

「……騒がしかったけど、寂しくないな」

 思い返せば、今日一日、休まる暇なんてなかった。
 岩盤浴でも、水風呂でも、混浴でも、休憩スペースでも──
 常に誰かがいて、常に誰かが俺を見ていた。

 だけど、それが嫌だったかと問われれば──答えは、違う。

 むしろ、心のどこかで嬉しかった。
 賑やかで、温かくて、うざったいくらいに構ってくる存在がいることが。

 独りきりの静寂も悪くない。
 でも、それ以上に──

 俺には、あいつらが必要なんだと思った。

 そんなことをぼんやり考えていた、その時だった。

 ガラッ!!

 突然、貸切風呂の扉が勢いよく開かれる。

「殿下ー! シャンプー忘れてますー!」

「あとタオルも追加で持ってきましたー!」

 ルナと碧純が、湯気の中に飛び込んでくる。

「って、わあっ!? こ、ここ貸切風呂だぞ!?」

 俺が慌てて立ち上がると、碧純は顔を真っ赤にしながらシャンプーボトルを突き出してきた。

「し、仕方ないでしょ! シャンプーないと困るでしょ! バカ!」

「殿下、全裸のご様子、拝見いたしましたっ」

 ルナが敬礼して笑い、すぐに撤退していく。

 何もかも、台無しだ。

 でも、不思議と腹は立たなかった。

 湯気の向こうで笑い声が弾けている。
 俺は湯に浸かり直しながら、ぽつりと呟いた。

「……やっぱり俺、もう一人には戻れないかもしれない」

 月明かりの中、檜風呂の湯が静かに揺れる。

 そして──
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