同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第四七九話『お風呂入ろう大作戦──入浴文化の伝道師』

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 放課後。
 人気のない校舎裏に、ヒロインたちが集結していた。

 俺、真壁弘弥。
 そして、碧純、すみれ、ルナ、ひより、ことね。

 目の前に置かれたホワイトボードには、大きな文字が記されていた。

 『ミレーヌ風呂啓蒙作戦』

「……本当にやるんだな」

 俺が小声で呟くと、碧純が拳を握った。

「当たり前でしょ! このままだと、弘弥のお兄、鼻壊れるって!」

「うん、正直無理」
 ルナも苦笑しながら頷く。

「科学的に見ても、入浴は極めて有効な手段よ」
 すみれがタブレットを掲げる。

「温泉成分の分析結果、持ってきた」
 ひよりは分厚いファイルを広げた。

「……入浴とは、魂の禊」
 ことねは、なぜか祈祷書みたいなものを開いていた。

 全員、気合い十分だった。

「で、具体的にどうやるんだ?」

 俺が尋ねると、すみれが前に出た。

「まずは、理論武装からよ」

 パワーポイントで作ったらしいスライドを開き、すみれがプレゼンを開始する。

「入浴には、以下の効果があるとされています──」

 一、皮膚の清潔保持。
 一、血行促進による免疫力向上。
 一、リラクゼーション効果によるストレス軽減。
 一、睡眠の質向上。

「これを踏まえた上で、ミレーヌに“日本の正しい風呂文化”を教育するわ」

 完璧な理論展開だった。

「よーし! 次は実践だな!」

 ルナが元気よく手を挙げる。

 どこから持ってきたのか、カゴいっぱいの入浴グッズを取り出した。

「じゃーん! エッチなバブルバスとか、香り付きの入浴剤とか、
 あと“バストアップマッサージローション”とか~!」

 「……何持ってきてんだよ」
 俺は思わずツッコミを入れた。

 すみれが呆れ顔で言う。

「ルナ、それは逆効果よ。誤解されるからやめて」

「えー、だってせっかくなら楽しんでほしいじゃん~」

 ルナは不満そうだったが、ひよりが冷静にカットインした。

「温泉成分リスト、効能一覧表、文化的背景資料。これを元にプレゼンを行う」

 分厚い資料を手渡され、俺は頭を抱えた。

(……理論詰めすぎて逆に引かれないか?)

 そんな不安を抱えつつ、さらにカオスが加速する。

「……湯浴み儀式、開始する」

 ことねが、どこからか神棚セットみたいなものを取り出し、湯のみを掲げていた。

「なにやってんだよ!?」

「温泉とは、魂と肉体を結ぶ神聖なる通路……」

 誰も止められなかった。

 こうして、俺たちはミレーヌの入浴意識改革のため、
 本格的な大作戦を開始するのだった。

 翌日──

 ミレーヌを囲んで、俺たちは作戦を実行に移した。

「ミレーヌ、ちょっといいかな」

 俺の呼びかけに、ミレーヌは嬉しそうに振り向いた。

「はい、弘弥様♡」

 ぐわっと香りが襲いかかる。

(うっ……だが、耐えろ俺……!)

 俺は深呼吸し、作り笑いを浮かべながら切り出した。

「日本ではね、毎日お風呂に入る文化があってさ」

「……ふ、お風呂……?」

 ミレーヌはきょとんと首を傾げた。

「そう。リラックスできるし、身体にもいいんだ」

 すみれがスマートに補足する。

「科学的にも、免疫力向上、血行促進、心身のリフレッシュなど、
 様々な効果が立証されているのよ」

「わたくしも、リフレッシュ……できるのでしょうか?」

 ミレーヌが瞳を輝かせる。

「もちろんだよ!」

 俺が力強く頷くと、ルナが横からニヤリと笑う。

「それにさ~、弘弥と一緒に入ったら、もっとリフレッシュできるかもね?」

「えっ、えええええええっ!?!?!?」

 ミレーヌの顔が真っ赤になった。

「そ、そんな……! は、恥ずかしゅうございますぅぅぅ!!」

 バタバタと後ずさるミレーヌ。

「ルナ、余計なこと言うな!」
 俺が叫ぶと、すみれとひよりが急いでフォローに回る。

「ルナは冗談よ。まずは一人で、ゆっくり入るところから始めようね」

「効能一覧を参考に、リラックスプランを提案する」

「……禊もまた、魂の再生……」
 ことねが訳のわからない呪文を唱えたが、今は突っ込む余裕がなかった。

 ミレーヌは、頬を赤らめながらも、こくんと頷いた。

「わ、わかりました……! わたくし、挑戦してみます!」

 その言葉に、俺たちは全員、ガッツポーズを取った。

(よし……これで、世界は救われる……!)
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