487 / 630
第四八〇話『ツンデレ、爆発す』
しおりを挟む
作戦決行から数日後。
放課後の教室に、俺たちはまた集合していた。
ミレーヌを囲んで、入浴啓蒙作戦の最終段階──実際に入浴するかどうかの決断を、彼女に迫る場面だった。
すみれ、ルナ、ひより、ことね、碧純、そして俺。
みんな、静かにミレーヌの答えを待っていた。
だが。
「わたくしが、臭いなど……ありえませんっ!!」
ミレーヌが、怒りで頬を膨らませながら叫んだ。
その金銀混じりの髪が、憤慨のあまりぶわっと広がる。
教室に、沈黙が落ちた。
さすがに、全員が絶句する。
「だ、だって……ちょっと、こう、ね?」
ルナが遠回しに言葉を選ぶが、
「確かに、入浴には健康効果があるのは事実だけど……」
すみれも微妙なフォローを入れる。
しかし、ミレーヌの怒りは収まらない。
「わたくしは、誇り高きエルミナ王国の令嬢です!
そんな、そんな、不浄なものを纏っているはずがありませんわ!」
「いやいや、いやいやいや……」
俺たちは目を逸らすしかなかった。
香ってるのは事実だからだ。
だが、それを真っ向から言うことは、できなかった。
なぜなら、ミレーヌの瞳があまりにも純粋だったから。
そして、次の瞬間。
「それに、あなたなんか、別に! 好きじゃないですからねっ!」
ミレーヌが、顔を真っ赤にして叫んだ。
ビシィッと指を突きつけてくる。
「だ、だいたい、わたくしが日本に来たのも! 弘弥様がここにいるって知ってたからじゃありませんっ!
たまたま! ええ、たまたまですともっ!」
矢継ぎ早に繰り出されるツンデレ爆撃。
「あなたの作品が、たまたま、エルミナ王国で流行っていただけで、
わたくしが個人的に読破して、感動して、人生変えられて、夢にまで見て、日本語まで猛勉強したとか、
そんなこと、絶対にありませんからねっ!!」
もはや自己矛盾の嵐だった。
俺たちは、言葉を失った。
ミレーヌは、息を切らしながら仁王立ちしている。
顔は真っ赤、耳まで染まっている。
全身全霊で、プライドと恋心を同時に守ろうとしている姿。
その必死さに、俺はふと、微笑みたくなった。
(……可愛いな)
そんなことを思ってしまったのだ。
俺は、ゆっくりとミレーヌに向かって歩み寄った。
彼女の放つ香りが、濃厚に俺を包み込む。
だが、俺は耐えた。
慣れたわけじゃない。
でも、それ以上に、目の前の少女の気持ちに応えたかった。
だから、俺は、まっすぐにミレーヌを見つめて言った。
「……それでも、嫌いじゃないよ」
ミレーヌの動きが、止まった。
金色の睫毛が震え、エメラルドグリーンの瞳が見開かれる。
「わたくしは……」
何かを言おうとして、ミレーヌはうつむいた。
頬はさらに紅潮し、手のひらをぎゅっと握りしめる。
そして、小さな声で呟いた。
「……ありがとう、ございます……」
その声は、か細く震えていた。
教室には、優しい沈黙が落ちた。
俺も、ヒロインズも、誰も言葉を発しなかった。
ただ、静かに──
ミレーヌが、一歩、俺のほうへ近づいてきた。
放課後の教室に、俺たちはまた集合していた。
ミレーヌを囲んで、入浴啓蒙作戦の最終段階──実際に入浴するかどうかの決断を、彼女に迫る場面だった。
すみれ、ルナ、ひより、ことね、碧純、そして俺。
みんな、静かにミレーヌの答えを待っていた。
だが。
「わたくしが、臭いなど……ありえませんっ!!」
ミレーヌが、怒りで頬を膨らませながら叫んだ。
その金銀混じりの髪が、憤慨のあまりぶわっと広がる。
教室に、沈黙が落ちた。
さすがに、全員が絶句する。
「だ、だって……ちょっと、こう、ね?」
ルナが遠回しに言葉を選ぶが、
「確かに、入浴には健康効果があるのは事実だけど……」
すみれも微妙なフォローを入れる。
しかし、ミレーヌの怒りは収まらない。
「わたくしは、誇り高きエルミナ王国の令嬢です!
そんな、そんな、不浄なものを纏っているはずがありませんわ!」
「いやいや、いやいやいや……」
俺たちは目を逸らすしかなかった。
香ってるのは事実だからだ。
だが、それを真っ向から言うことは、できなかった。
なぜなら、ミレーヌの瞳があまりにも純粋だったから。
そして、次の瞬間。
「それに、あなたなんか、別に! 好きじゃないですからねっ!」
ミレーヌが、顔を真っ赤にして叫んだ。
ビシィッと指を突きつけてくる。
「だ、だいたい、わたくしが日本に来たのも! 弘弥様がここにいるって知ってたからじゃありませんっ!
たまたま! ええ、たまたまですともっ!」
矢継ぎ早に繰り出されるツンデレ爆撃。
「あなたの作品が、たまたま、エルミナ王国で流行っていただけで、
わたくしが個人的に読破して、感動して、人生変えられて、夢にまで見て、日本語まで猛勉強したとか、
そんなこと、絶対にありませんからねっ!!」
もはや自己矛盾の嵐だった。
俺たちは、言葉を失った。
ミレーヌは、息を切らしながら仁王立ちしている。
顔は真っ赤、耳まで染まっている。
全身全霊で、プライドと恋心を同時に守ろうとしている姿。
その必死さに、俺はふと、微笑みたくなった。
(……可愛いな)
そんなことを思ってしまったのだ。
俺は、ゆっくりとミレーヌに向かって歩み寄った。
彼女の放つ香りが、濃厚に俺を包み込む。
だが、俺は耐えた。
慣れたわけじゃない。
でも、それ以上に、目の前の少女の気持ちに応えたかった。
だから、俺は、まっすぐにミレーヌを見つめて言った。
「……それでも、嫌いじゃないよ」
ミレーヌの動きが、止まった。
金色の睫毛が震え、エメラルドグリーンの瞳が見開かれる。
「わたくしは……」
何かを言おうとして、ミレーヌはうつむいた。
頬はさらに紅潮し、手のひらをぎゅっと握りしめる。
そして、小さな声で呟いた。
「……ありがとう、ございます……」
その声は、か細く震えていた。
教室には、優しい沈黙が落ちた。
俺も、ヒロインズも、誰も言葉を発しなかった。
ただ、静かに──
ミレーヌが、一歩、俺のほうへ近づいてきた。
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる