同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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【第五四六話】 『笑って、食べて、また青春しよう』

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「いただきますっ!」

 碧純の元気な声を皮切りに、
 みんなが手を合わせた。

 炊きたてのご飯。
 それぞれが素手で握った、いびつで、でも愛情たっぷりのおにぎりたち。
 ダイニングテーブルいっぱいに広がる、白い三角たち。

 弘弥は、
 その光景を眺めながら、思った。

(──これが、俺たちの青春だ。)

 ◆

 ぱくり。

 最初に手に取ったのは、碧純の梅干しおにぎり。
 握りしめられた形の中に、彼女の想いがぎゅっと詰まっているのが分かった。

「うまい。」

 一言呟くと、
 碧純が嬉しそうににへらっと笑った。

 次に、ルナの鮭おにぎり。
 塩気がガツンと効いていて、食べるだけで元気が出る。

「兄、食え食え~!もっと食え~!」
 ルナが笑いながら、追加でおにぎりを握ろうとする。

 すみれのおかかおにぎり。
 静かに、でも確かな優しさが滲んでいた。

 ひよりの、具なし超シンプルおにぎり。
 不思議と癖になる噛み応え。

 ミレーヌの、ちょっと小ぶりで可愛らしい明太子入りおにぎり。
 ちょっと辛くて、あと引く味。

 どれもこれも、
 温もりに満ちていた。

 ◆

「兄、将来の夢とかある?」

 ふいに、碧純が尋ねた。

「夢……か。」

 弘弥は、
 おにぎりを手のひらに載せたまま、考えた。

「……これからも、青春を書き続けたい。」

「たとえ馬鹿にされても、」

「たとえ笑われても、」

「俺は──」

「この、今を、生きてるってことを、」

「ちゃんと、言葉にして、残していきたい。」

 素直な、心からの想いだった。

 ◆

「兄らしいなー!」

 ルナが豪快に笑った。

「いいじゃん。青春製造機になろうぜ!」
「無限青春編突入だね。」
 ひよりがボソッとつぶやく。

「……素敵です。」
 すみれが微笑んだ。

「わたくしたちも……その青春に、関わり続けたいですの!」
 ミレーヌも頷いた。

「もちろん、私たち、ずっと一緒にいるからね。」
 碧純が、決意を込めた声で言った。

 ◆

「……ありがとう。」

 弘弥は、
 心の底からそう思った。

 そして──

 ふと、顔を上げた。

 夜の窓の向こう。
 遠く高い空。

 あの金色の髪を持つ少女が、
 今もどこかで空を見上げているかもしれないと思った。

(エレノア。)

(お前とも──きっとまた、会えるよな。)

(未来に──)

(もう一度、乾杯するために。)

 静かに、
 その約束を、心の中に刻んだ。

 ◆

「兄! 早く早く! 次はデザートタイムだよ!」
 碧純が呼んでいる。

「ほら、兄、もう一個握ったから!」

 ルナも、また新しいおにぎりを手にしている。

「……青春、食べすぎ注意。」
 ひよりがクールに突っ込みを入れる。

 笑い声が、
 部屋中に広がる。

 弘弥は、
 その中に、身を委ねた。

 笑って、
 食べて、
 また、青春しよう。

 何度だって、
 何度だって。

 この、かけがえのない時間を──

 この手で、
 この心で、
 ちゃんと握りしめるために。
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