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『夢精監視プロジェクト発足!──“夜の青春”を科学する』
【第五七一話】 『観察対象・真壁弘弥──夢精頻度、異常につき』
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「……出てる。やっぱり、出てます」
その朝、食卓でヨーグルトをスプーンでかき混ぜながら、
一ノ瀬ひよりは、開いたノートを覗き込み、ポツリと呟いた。
「……出てるって何が?」
弘弥は目をこすりながら問い返す。
昨夜も遅くまで執筆し、ようやく寝たと思ったら夢精していた──そんな気がしていた。
ひよりは答えた。淡々と、しかし確信に満ちて。
「お兄さんの、夢精です」
「……ッ!!?」
弘弥は盛大に味噌汁を噴いた。
「ちょ、ちょちょちょ待て!? なんでお前がそれ知ってんの!? 誰にも言ってないぞ!?」
「においと、洗濯量と、時間と、夜中の寝返り音のパターンから、
わたし、ずっと記録してましたから」
ひよりが差し出したのは、分厚い記録ノート。
タイトルにはこう記されていた──
『思春期観測ログ Ver.5.07──真壁弘弥編(夜間排出特化)』
「お前どこまでやってんだぁぁぁあああ!!!」
その声を聞いて、奥の部屋からルナと碧純が顔を出す。
「なに? 兄、また出たの?」
「は? ……夢精!?」
「またって、なんでそんなこと知って──うわあああぁぁあ!!」
弘弥はクッションで顔を覆った。
「平均高校男子の夢精回数は、月2~3回。しかし弘弥くんは──」
ひよりはノートをめくり、ページを指さした。
「──この半年で17回。しかも6日連続を3回も達成しています」
「……記録更新やん……」
ルナが引いてる。
「兄、それって病気じゃないよね? えっ、なに? エロい夢見てんの? どんなの見てんの? 誰と!?」
碧純がぐいっと身を乗り出す。
「……これは……学術的にも非常に貴重な観察対象」
ひよりは小さく頷いた。
「で、でもさ」
すみれが気まずそうに口を開いた。
「その……“誰かが一緒に寝れば抑制できる”とか……あるんじゃない?」
その提案に、空気が凍った。
「えっ、つまり……?」
「弘弥くんと、添い寝して──防ぐ?」
「はい!」
碧純が即座に挙手する。
「私が! 一番近いし! 兄のことよく知ってるし!」
「じゃあ私もー! 興味あるー! てか逆にさ、私の夢で出てたら勝ちじゃない!?」
ルナが笑う。
「研究目的なら……やむを得ません」
すみれが頬を赤らめつつ静かに肯定。
「お兄さまが快眠するなら、わたくしもお手伝いしますわ」
ミレーヌが優雅に微笑む。
「はい、では“添い寝当番制”を導入します」
ひよりがボードにスケジュールを書き始める。
月曜:碧純
火曜:すみれ
水曜:ルナ
木曜:ひより
金曜:ミレーヌ
土曜:交代戦
日曜:ランダムガチャ
「なんで週7!?」
弘弥が頭を抱える。
「兄、ここで拒否したら“誰の夢でも興奮する最低野郎”って認定されるからね?」
碧純が低い声で圧をかける。
「これは、青春だ……青春の、夜の観察だ……」
ひよりがノートに新たな章タイトルを書き込む。
『夢精監視プロジェクト──Phase.0』
弘弥の思春期は、ここから新たなフェーズへと突入していく──。
【つづく】
その朝、食卓でヨーグルトをスプーンでかき混ぜながら、
一ノ瀬ひよりは、開いたノートを覗き込み、ポツリと呟いた。
「……出てるって何が?」
弘弥は目をこすりながら問い返す。
昨夜も遅くまで執筆し、ようやく寝たと思ったら夢精していた──そんな気がしていた。
ひよりは答えた。淡々と、しかし確信に満ちて。
「お兄さんの、夢精です」
「……ッ!!?」
弘弥は盛大に味噌汁を噴いた。
「ちょ、ちょちょちょ待て!? なんでお前がそれ知ってんの!? 誰にも言ってないぞ!?」
「においと、洗濯量と、時間と、夜中の寝返り音のパターンから、
わたし、ずっと記録してましたから」
ひよりが差し出したのは、分厚い記録ノート。
タイトルにはこう記されていた──
『思春期観測ログ Ver.5.07──真壁弘弥編(夜間排出特化)』
「お前どこまでやってんだぁぁぁあああ!!!」
その声を聞いて、奥の部屋からルナと碧純が顔を出す。
「なに? 兄、また出たの?」
「は? ……夢精!?」
「またって、なんでそんなこと知って──うわあああぁぁあ!!」
弘弥はクッションで顔を覆った。
「平均高校男子の夢精回数は、月2~3回。しかし弘弥くんは──」
ひよりはノートをめくり、ページを指さした。
「──この半年で17回。しかも6日連続を3回も達成しています」
「……記録更新やん……」
ルナが引いてる。
「兄、それって病気じゃないよね? えっ、なに? エロい夢見てんの? どんなの見てんの? 誰と!?」
碧純がぐいっと身を乗り出す。
「……これは……学術的にも非常に貴重な観察対象」
ひよりは小さく頷いた。
「で、でもさ」
すみれが気まずそうに口を開いた。
「その……“誰かが一緒に寝れば抑制できる”とか……あるんじゃない?」
その提案に、空気が凍った。
「えっ、つまり……?」
「弘弥くんと、添い寝して──防ぐ?」
「はい!」
碧純が即座に挙手する。
「私が! 一番近いし! 兄のことよく知ってるし!」
「じゃあ私もー! 興味あるー! てか逆にさ、私の夢で出てたら勝ちじゃない!?」
ルナが笑う。
「研究目的なら……やむを得ません」
すみれが頬を赤らめつつ静かに肯定。
「お兄さまが快眠するなら、わたくしもお手伝いしますわ」
ミレーヌが優雅に微笑む。
「はい、では“添い寝当番制”を導入します」
ひよりがボードにスケジュールを書き始める。
月曜:碧純
火曜:すみれ
水曜:ルナ
木曜:ひより
金曜:ミレーヌ
土曜:交代戦
日曜:ランダムガチャ
「なんで週7!?」
弘弥が頭を抱える。
「兄、ここで拒否したら“誰の夢でも興奮する最低野郎”って認定されるからね?」
碧純が低い声で圧をかける。
「これは、青春だ……青春の、夜の観察だ……」
ひよりがノートに新たな章タイトルを書き込む。
『夢精監視プロジェクト──Phase.0』
弘弥の思春期は、ここから新たなフェーズへと突入していく──。
【つづく】
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