同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『夢精監視プロジェクト発足!──“夜の青春”を科学する』

【第五七八話】 『夢精ゼロ達成!──でも現実での理性は限界寸前』

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「今夜こそ──絶対に夢精しない」

 弘弥は宣言した。

 今宵は“最終夜”。
 添い寝観測プロジェクト、Phase1のラストナイト。
 これまでの6夜で6連続夢精を記録した青年は、ついに「勝利宣言」を口にした。

 

「やっぱ最後は……全員で寝よっか!」
 ルナがウキウキで布団を敷き詰める。

 

「川の字どころじゃないじゃん。もう大河ドラマみたいな配置だよこれ」
 弘弥は半笑いだったが、目は死んでいた。

 

「私たち、今夜は攻めません。あくまで観測対象に優しく寄り添うだけです」
 ひよりが“マイ体温計”と“寝言録音装置”を並べながら言った。

 

 ──だが。

「“攻めない”って言葉がもう攻撃的なんだよ!!!」

 

 この晩、弘弥は五方囲み布団地獄の中心にいた。

 右腕:ルナ
 左腕:碧純
 腹の上:ミレーヌ
 足元:ひより
 首筋:すみれの息がかかる

 という、完全包囲布陣。

 

(だめだ……思考がまとまらない……理性が……理性が……)

 

「兄、大丈夫?」
「なんか震えてない?」
「お兄さま、もし寝苦しかったらわたくしの胸を……」
「脈拍上昇、汗腺開放。これは、青春だ……」

 

 もはや誰が何を言ってるかも分からない。

 そして──

 

「うぅ……っ!!」

 

 弘弥は布団をぎゅっと握りしめ、震えながらもこう呟いた。

「だめだ……絶対に……絶対に今日は出さないっ……!!」

 

 そして──朝が来た。

 

 ◆

 

 朝。カーテンの隙間から光が差し込む。

「……ん、もう朝か……」
「お兄……?」

「……って、え!? なにこの状況!!」

 

 布団の中央。
 弘弥は、完全に白目をむいて倒れていた。

 

「鼻血っ!? てか、失神してる!?!?」

 

「脈は!? ひより、観測データは!?」

「……大丈夫。睡眠中、夢精反応は一切ありませんでした」

「ほんと!? やったじゃん!」

「兄……夢精、してない……すごい……!」

「すごい、じゃねぇよ!! この状態で!? 代わりに何を失ったの!?」

 

 弘弥の手は握りしめられていた。

 手の中には、一言だけが書かれたメモ用紙。

 

「夢精には……負けなかった……でも……青春には……勝てなかった……」

 

「ポエム書いてる余裕はあったんだな!」

 

 ◆

 

 弘弥が意識を取り戻したのは、その日の午後。

 リビングのソファに寝かされ、頭には冷たいタオル、口には栄養ゼリー。

 

「……やり切ったんだね……兄」
 碧純がしみじみと言った。

 

「でも……言い換えれば、もう夢じゃ満足できない体になったってことだよね?」
 ルナが、にやりと笑う。

 

「では次の段階へ進みましょう」
 すみれが新しいスケジュール表を出してきた。

 

【青春誘惑プロジェクト・Phase2】
 ──“現実接触型観察計画”──

 

「夢でダメなら、現実で落とすしかないよね」

「次は“触れて”“見せて”“感じさせて”」

「合法的にね♥」

 

「や、やめろおおおおおおおおおお!!!」

 

 こうして。

 添い寝・夢精編は幕を閉じ──
【現実誘惑バトル編】が、ついに始まる。

 

 弘弥の理性と青春は──
 次なるステージで、さらなる試練を迎えるのだった。

 

【つづく】

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