同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『現実誘惑バトル編』

【第五七九話】 『理性を溶かせ!日常スキンシップ作戦、始動』

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「夢精観測プロジェクトは──一時凍結とします」

 そう宣言したのは、ひよりだった。

 寝間着姿でホワイトボードの前に立つその手には、**“青春睡眠記録・最終章”**と題されたバインダーが握られていた。

 

「統計的に、もう夜だけでは“有意な差”は出ない」

「次のステージへ進むべきです」

 

「つまり──」
「現実スキンシップで、青春値を測る!」

 

 一同「おおおおお!!」

 

 ……なんでそんなに盛り上がってんだ。

 弘弥はひとり、テーブルの下で足を震わせていた。

 

「だってさー、もうさー、夢の中だけじゃさー、限界あるじゃん?」
 ルナがスナック菓子をぽりぽりやりながら言う。

「夢精ってさ、たぶん“前菜”だよ」

「これからが本編──ってやつ?」

 

「いえ、“夢精は導入部”。青春のメインはあくまで現実」
 ひよりが静かに補足した。

「今回からのテーマは“合法的かつ日常的なスキンシップ”。直接接触で、心と体の反応を可視化します」

 

「言い方が犯罪めいてんのよおおおお!!」

 弘弥は叫ぶ。

 

 すみれが、淡く笑った。

「大丈夫よ、弘弥くん。無理はしないわ」

「“偶然触れた指先”──そのくらいから始めていくの。少しずつ、丁寧に」

 

(やべぇ……優しい言葉が一番怖い……)

 

「ちなみに」
 碧純が“新しい紙”を持ち出してくる。

「これは“現実接触ポイント表”です。わたしたち、これから“さりげなく合法に触れる方法”を開発していきます!」

 

 現実スキンシップ・ポイント早見表(試案)
 頭ぽんぽん:5pt

 ネクタイ直し:7pt

 腕タッチ(偶然):10pt

 寝落ち肩寄せ:12pt

 “あーん”:15pt

 耳元で囁く:18pt

 ハグ:20pt(※要許可)

 パンツ見せ:即失格

 

「だから、“いやらしくない”“さりげない”“日常っぽい”が重要なんだって」
 ルナが指を立てる。

「狙いすぎたらアウトだから! あくまで自然! 清楚!」

 

「兄が警戒しない“無意識領域”を狙うのですわ」
 ミレーヌも食い気味に入ってくる。

「たとえば、朝の“制服チェック”。ネクタイの曲がりを直しつつ、自然に距離を詰め──」
「それ、“ガチで脳がやられるやつ”じゃないですか!?」
 弘弥は叫ぶ。

 

「私は、弘弥くんの顔にご飯粒がついてたら、取るくらいから始めますね」
 すみれが無邪気に言う。

「それは合法中の合法! 高得点確定!!」

「いったい誰が採点するんだよおおお!!」

 

「ひよりちゃんだよ」

「えっ!? お前が採点するの!?」

 

 ひよりは静かに頷くと、手元のタブレットを掲げた。

「今日から、**“リアル青春観測アプリ”**を開発しました」

「すでに“触れた部位・時間・温度・心拍”の記録が可能です」

 

「そのアプリ、誰向けなんだよ!? なんの分野なんだよ!!?」

 

「ということで──」
 ルナが立ち上がる。

「今から! “現実スキンシップ選手権”開幕!!」

「勝った人が“弘弥のリアル青春パートナー(仮)”だ!!」

 

「誰もそんな称号欲してないよぉぉぉぉ!!!」

 

 ──こうして、
 “合法・日常・さりげなく”をテーマにした、青春誘惑地雷原生活が幕を開けた。

 

 制服チェック、
 手渡しでの“あーん”、
 すれ違い様の腰タッチ、
 後ろから呼び止めての袖つかみ。

 

「これ、平穏な日常じゃねぇ……!!」
 弘弥の心の声は、すでに限界寸前だった。

 

【つづく】
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