同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『現実誘惑バトル編』

【第五八二話】 『膝枕選手権──誰が一番安心する?』

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「はい、勉強の休憩タイム~!」

 ルナが教科書を勢いよく閉じ、両腕をぐいっと伸ばした。

 

「どうせ休むなら、人間の癒やしの極みを導入しない?」

 

「……癒やしの極み?」
 弘弥はイヤな予感を覚えた。

 

「膝枕だよ! き・ざ・ま・く・ら!」

 

 バンッ、と彼女は自分の太ももを叩いた。

 しなやかで、丸みがあって、制服のスカートの下でやや生地が張っているようにすら見えるそれは──

 人類の堕落を誘う角度で、彼の目の前に差し出された。

 

「や、やめとこうよ!? 校内だし! ていうか家でもそんなこと──」

 

「は? これ、“青春的合法距離”でしょ? この前ひよりちゃんが言ってたよ、“膝枕=接触ポイントとしては最も落ち着きやすい”って」

「……え、それ統計的に言ったわけじゃないんだけど……」
 ひよりがボソッと否定したが、すでにルナはポジションを取っていた。

 

「いーから、はい横になって。どうせ弘弥、眠いっしょ?」

 

(眠いか眠くないかじゃない……これは、試練だ……)

 

「……っ!」

 ためらいながらも、弘弥はルナの太ももに頭を預ける。

 

 そこは──

 柔らかさと弾力、そしてほんのりした熱が入り混じる肉の楽園だった。

 

「……どお? 気持ちいいでしょ?」

「き……気持ちいいというか……なんというか……理性が……死にそう……」

 

「ふふーん、これが“ギャルの包容力”ってやつ♥」

 

 ◆

 

「では、次はわたくしが」
 すみれが静かに立ち上がった。

 

「私はこういうのは得意じゃないけれど、弘弥くんが疲れてるなら、ぜひ」

 

 彼女はゆっくりと腰を下ろし、制服のスカートを整え、端然と膝を組む。

 そして──本を開いた。

 

「どうぞ。読書しながらで構わないわ」

 

「えっ……あ、はい……」

 

 再び頭を預ける弘弥。

 先ほどのルナとはまったく違う。
 静かで、落ち着いていて、柔らかいのにしっかりしている。
 時折、ページをめくる音が耳元を通る。

 

(……あれ……落ち着く……)

(これ、もしかして普通に眠れるやつ……?)

 

「……弘弥くん、寝ちゃってもいいのよ?」

「っ!? い、今のは催眠的なやつですか!?」

 

 ◆

 

「兄ぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 そこに、碧純が乱入してくる。

「なんでルナやすみれさんには素直に甘えてるのに、私には拒否するの!? 理不尽すぎる!」

 

「べ、別にそういうわけじゃ……」

 

「よーし、じゃあ今度は私の番ね! “家族特権”ってやつ!」

 

 弘弥は、軽く強引に碧純の膝に倒された。

 

「ふふ……やっぱ兄の頭って重たいなあ……でも、この重さが、懐かしい……」

 

(うう……これはこれで、やばい……落ち着くけど、それ以上に“心が”やばい……)

 

「兄、昔はこうして私の膝で昼寝してたんだよ。だから今日も──いっぱい寝ていいよ」

 

 そう言って、碧純はそっと弘弥の髪に手を添えた。
 ナデナデ。ナデナデ。ナデ──

 

「理性が……っ、理性が溶ける……」

 

 ◆

 

「次、私は記録だけだから、代わりにミレーヌさんが来るって」

「えっ、記録!? またなんか記録してんの!?」

 

 ひよりがノートを取りながら頷き、ミレーヌが優雅に登場。

 

「わたくしの国では、膝枕は“未来の妻候補”が行う儀式的接触ですの」

 

「それ絶対ちがう!」

 

「ほら、横になってくださいまし……この“王室膝”の柔らかさを、今こそ体感を──」

 

 そして、弘弥は再び膝に沈む。

 

(なにこの日……休憩のはずが、戦争だよ……青春戦争だよ……)

 

 ◆

 

 最終的に、弘弥は5人のヒロインたちの膝で順番に“休憩”し、
 顔面温度は39度まで上昇。
 最終的に“膝枕酔い”という意味不明の状態でダウンした。

 

「もう……誰の膝がどれだったか……わかんねぇ……」

 

「でも、兄の表情……すっごく幸せそうだった」
 碧純が、そっと微笑んだ。

 

「青春って、たぶん、太ももに宿るのかもしれない……」
 弘弥は夢うつつの中、そんな迷言を残したという。

 

【つづく】
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