同居のヒロイン達に夢精がバレる俺は、正妻戦争の中心にいるらしい件

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『現実誘惑バトル編』

【第五八六話】 『現実も、夢も、青春の味がする』

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朝──。

カーテン越しに差し込む春の陽光が、弘弥のまぶたを照らしていた。

 

暖かい。柔らかい。静かな時間。

だが──なぜか、両腕にぬくもりを感じていた。

 

(……え、えっ?)

 

ゆっくりと目を開ける。
視界の右には碧純がぴったりと頬を寄せ、左にはルナが彼の胸に手を当てて寝息を立てている。

 

そして足元には、丸くなって寝ているすみれ。

ひよりが机の上でノートを握りしめたまま微睡んでおり、
ミレーヌは枕元に王族風の毛布を巻いて、うっすら口元に笑みを浮かべていた。

 

「…………全員いるじゃねえか!!」

 

そう。
彼は昨夜、**「誰にも触れない」**と宣言したにもかかわらず──

結局、みんなに囲まれて眠っていた。

 

だが、不思議と後悔はなかった。
むしろ、今朝のほうが、心が落ち着いていた。

 

(ああ……ぬくもりって、すごいな)

(何も言葉を交わしてなくても……ただ近くにいるだけで、こんなに安心する)

 

弘弥は、胸の奥でぽつりと呟くように思った。

 

(……夢も、現実も、どっちも同じ味がする)

(甘くて、苦くて、ちょっと恥ずかしくて……それでも、全部、愛しい)

 

思えば、夢精だって、添い寝だって、抱き枕だって、納豆だって──

あらゆる“バカみたいな青春の瞬間”が、確かに弘弥の中に刻まれている。

 

「……もう、誰が好きとか、選べないよ」

「青春ってさ、全部混ざってて……一つの味じゃ表現できない」

「でも、そんな青春が──俺は、好きだ」

 

誰にも聞かれなかったその言葉に、なぜかすみれがピクリと反応した。

 

「……なら、全部味見しちゃえばいいのよ」

すみれが目を開け、淡く微笑む。

 

「でも最後は、“一番好きな味”を選ばなきゃね?」

 

「ふふ、私がその“甘さ”を極めてみせますわ」
ミレーヌが髪をかきあげる。

 

「……苦味担当でも、勝てるから」
ひよりがノートを閉じた。

 

「兄が選ばないなら……選ばせてやる!」
碧純が拳を握る。

 

「やっぱ恋ってさぁ、勝ち抜いてなんぼでしょ♥」
ルナがウィンク。

 

「弘弥くんが困ってる顔、……でもちょっと、嬉しそうだなって思って」
すみれがそっと布団を整える。

 

そう。
弘弥の“青春”は、まだどこにも終わりを告げていない。

 

――むしろ、これからだ。

 

「弘弥」

声が重なった。

 

「ぜーったい、私が一番にするからね!」

 

笑顔で、口を揃えて、宣戦布告。

ヒロインたちの目には、新たな決意が燃えていた。

 

そして弘弥は──その中心で、微笑んだ。

 

「……うん。負ける気がしないよ」

 

【つづく】

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